今に始まった話では無いが、大学入学後に一定の割合の学生が、自分の専攻する学問との間にミスマッチを起こすという。附属校の教員としては頭の痛い話である。かくいう私も学生時代はその一人であった。高校時代は素粒子論に憧れて物理学科へと進学したものの、講義の中で証明なしで用いられる数学の方に気を取られることが多かった。
大学で学ぶ数学とはどういったものなのかが気になり始め、数学科と物理学科のシラバスを読み比べると、集合と位相に関する科目があり、まずはこれを勉強してみようと思った。一人でやるには荷が重かったので、数学科の先生へこの本を読みたいと申し出たところ、先生のご好意でゼミ形式で本を読む機会を得ることができた。このゼミで議論の厳密さ、抽象化された理論の美しさを学ぶことができ、数学科へ転科しようと決めたのであった。
人生の中で何かを選択する場面は多いが、その中でも十分な情報や経験を持って選択できる状況というのは少ないのではないかと思う。どんな選択をしたとしても、その選択に束縛される必要はなく、まずは色んな環境に身を置いてみる。その中でこれはというものが見つかれば、その対象に力を注ぐ。ピンとくる分野が中々見つからなくてもドンと構えて色んな経験をすれば良い。当然ミスマッチが起こらないように高校生へ向けて適切な情報を発信していくことは大事である。並行してミスマッチが起こってしまった場合でも、対処可能な能力を身につけて進学すれば、送り出す側としても安心である。
(O.Y)
第999回