筆者の本属の付属校では、高校3年生に卒業論文の提出を義務付けている。高校生は自身で様々なテーマを設定し研究に取り組んでいる。例えば地域を流れる河川に生息する生物の水質浄化能力について調べたものや、遊園地の絶叫マシンの恐怖度についてスマートフォンの加速度アプリを用いて分析をしたものなど多様である。本格的な論文も多く、過去には学術論文誌に掲載されたものもある。
付属校の役割の一つに「学問で人を育てる」というものがあると筆者は考えている。先人の知恵に触れ、素朴に感動し、未来への希望を見出す経験が必要なのだ。学問・研究を通じて社会とつながり、これまでの自身の学習や経験の成果をみる。この経験が大学の学びにつながっていくのである。
高校生に「学習と研究の違いは何か?」と問われれば、筆者は「あなた(高校生)が学習や経験を生かして能動的に社会とつながるのが研究だ」と答えることにしている。学習だけなら、能動的に社会とつながらなくてもできる。「あなたの卒論は、社会の誰に読んでほしいのか?」とも高校生に問いかける。そして、社会とつながるのであれば、発信者自身が自信を持っている必要がある。だからこそ、高校生には「研究はできるだけ楽しんでほしい」と語りかけている。実際には、楽しむ余裕のない生徒も多く見ているが…。ただ、将来思い返して、少しは楽しかったと感じられるようであってほしい。
今、その卒業論文の提出直前で高校生たちは最後の仕上げに取り掛かっている。自信をもって研究をやり切ってほしいものだ。
(MM)
第985回