Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

人文系学生にとっての「王道」

8月の初め、路面の焼ける音が聞こえそうな猛暑の中、オープン・キャンパス(高校生向け大学説明会)には沢山(たくさん)の来場者が見えた。会場で相談係に加わった私も、高校生の真摯(しんし)な眼差(まなざ)しに身の引き締まる思いがした。

その際、高校生や彼らの保護者たちと話すと、話題はしばしば大学教育の目的に及んだ。「〇〇関係の仕事に就きたいので、〇〇の勉強をしたいのです」という生徒さんが多い。勿論(もちろん)それはそれで一つの考え方だけれども、大学、少なくとも“文学”や“文化”をテーマとする学部で勉強の対象を選択する考え方としては「王道」とは言えないでしょう、というのが私の答えだ。

仕事の内容は、仕事に就いてから先輩に習う他ない。文化を専攻する人文系の学生にとって大事なことは、さまざまな状況なり事柄なりを、大きくて長い文化の歴史や、哲学や倫理的な思惟(しい)の流れの中に位置づけるための「視野」(あるいはその「視野」に臨むための態度)を手に入れることではないのか。仕事“X”に多様な文脈を見い出し、その仕事の将来の文化的・倫理哲学的脱出口を探すための視野を導く感覚を磨くこと。できれば、それを周囲の人と共有し、共に生き延びるための作法を身につけること。そういう態度・作法は、就職する前に、大学で沢山の勉強を積む中で醸される、多分に茫洋(ぼうよう)とした、直感的で形の無いもののはずだ。そう説明して、「形の無いものを学ぶのも大学の学びなのです」と申し上げると、高校生も保護者も、案外満足そうである。

(YM)

第976回

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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