ある定食屋さんでのこと。席に案内されて注文を済ませると、店員さんが湯のみに入ったお茶を運んできてくれた。「熱いのでお気をつけください」と一言添えられていたので、そのつもりで気を付けていただくと、そのお茶は大変ぬるかった。
定員さんにとって、客に対する「熱いので…」というメッセージは、店のマニュアルにある決められたセリフであったのか。人と人のつながりを、形から入ったとても無機的な行動に私は寂しい思いを抱いた。
学年末試験直前のある日、その学院生は徹夜で勉強をして、寮の朝食を取らずに自転車で登校し、授業に参加していた。案の定、授業の中盤に低血糖状態となり、椅子からずり落ちるように床へ倒れた。すぐに容体を確認し、水分補給をする必要があると判断し、近くに座っていた学院生へスポーツドリンクを購入してくるように指示をした。
幸いにも倒れた学院生には意識があり、しばらく横になることで回復する見通しが立った。ちょうどその頃、ドリンクの購入へ走っていた学院生が戻ってきたので、それを受け取り、飲ませるために私はペットボトルの蓋(ふた)を開けようとした。ところが、その蓋はすでに軽く開けられていたのであった。ドリンクを購入に走った学院生の、仲間を思う気持ちに、私は本当に心が熱くなった。
「心から入る」
心から入るとは、心を込めると、自然にそれが行動に表れるということである。人としてどうあるべきか。日々試行錯誤している学院生と学生のみんなへ。心を込めた、潤った人間関係の中で成長していってもらいたい。
(T.T.)
第973回