Waseda Weekly早稲田ウィークリー

キャリアコンパス

脱サラ→世界一周→国際的ダンサー 中込孝規 29歳

周りの人の協力を仰げば、やりたいことは何でもできる

ダンサー・「世界とつながるダンス教室」代表 中込 孝規(なかごめ・たかのり)

171023_037世界一周をしながら、各国で1万人を超える子どもたちにダンスを教えた人物がいる。「世界とつながるダンス教室」代表、中込孝規さんだ。旅を終えた今も、日本とアフリカの子どもたちをダンスでつなぐ活動の他、33歳までの若きリーダーたちで構成される世界経済フォーラム(ダボス会議)の下部組織「グローバルシェイパーズ」のメンバーに選ばれるなど、国際的な活躍を続けている。

そんな中込さんだが、早稲田大学商学部卒業後は一般企業に就職し、ダンスとは無縁の生活を過ごしていた。安定した職に就きながら、一念発起して退職し、世界一周の旅を始めるに至った経緯、そしてその旅で手にしたものとは?

信頼できる仲間に出会えたのがダンスであり、大学時代でした

青空の下、みんなでダンス!(本人提供)

「ダンスを始めたきっかけですか? 高校生のころ、2歳上の兄がダンスをやっているのを見て、『女の子にモテそうだな』と(笑)。動機は不純だったんですけど、それまでサッカー部、柔道部と、何を始めても続かなかった自分が、なぜかダンスにはハマってしまったんです」

早稲田高校在学時にダンスの魅力に目覚めた中込さんは、早稲田大学商学部進学後、公認サークル「Waseda University Breakerz(W.U.B)」(以下、ワセブレ)に所属し、まさにダンス漬けの日々を過ごした。

「『ワセブレはダンスのうまい人たちばかり』という噂を聞いて、高校生のころから入りたくてしょうがなかったんです。実際に入ってみると、本当にダンスが好きで向上心のある人たちばかり。自分はもともと対人恐怖症で、なかなか人と打ち解けられない悩みがあったんですが、この人たちにならだまされてもいいから仲良くなりたい! と思えたんです。僕にとって初めて信頼できる仲間に出会えたのがダンスであり、大学時代でした」

171023_065ワセブレでのさまざまな経験の中で特に忘れられない出来事、と語ってくれたのは、東京ディズニーシーのゲストダンサーとしてステージに立ったこと。そして、2学年上の先輩たちとチームを組んで出場したオールジャパン学生ダンス選手権での優勝経験だった。

「実は僕、ダンスが楽しい一方で、つらく感じるときもあったんです。それは、認められなきゃとか、上手だと思われたいとか、そういうことを気にし過ぎていたから。ついつい、周りと比較しちゃうタイプだったんです。でも、尊敬する先輩たちと組ませてもらったことで、『まずは楽しもう!』という姿勢を学ぶことができました」

そして、その先輩の紹介で始めたのが、キッズダンス教室でダンスを教えることだった。

「僕がそれまで積み上げてきたものを教えると、みんなすぐにうまくなる。それで素直に喜んでくれるんですね。とにかく楽しくて、なんて幸せなことなんだろう、と。それは、人生で初めて芽生えた新しい感覚というか、理屈ではなく純粋にわくわくできて、心が震える経験でした」

ダンスに明け暮れた大学時代を過ごした中込さん。だが、卒業後はダンスとは一切関係がない教育系企業の(株)ベネッセコーポレーションに就職し、小学生向け事業に4年間従事した。それは、“いつか起業してみたい”という漠然とした夢があったからだった。

「商学部に進学したときから起業に興味があって、社員が自分で事業を立ち上げる機会がある会社がいいなと考え、縁があったのがベネッセでした。でも、入ってみたら全く仕事ができなくて…。それまでの自分は、自信はないけれどプライドだけが高いという人間だったのですが、もう、バキッて鼻を折られちゃったというか、自分一人じゃ何もできませんでした。でもそのおかげで、困ったときは周りの人に助けてもらえばいいんだ、ということを学ぶことができたのは大きかったですね」

何かしたいと思い立ったら、いつでもどんどんチャレンジしてほしい

現地の小学校へのアポイントメント取りは、青年海外協力隊などが協力してくれた(本人提供)

毎日、忙しく仕事に没頭していた中込さん。その生活を変えるきっかけは、学生時代にダンスを教えていた子どもたちからのラブコールだった。

「実は社会人になってからも、『またダンスを教えてほしい』とずっと言われていたのですが、仕事で忙しいからという理由でお断りしていました。でも、本当は他に理由があって、自分に自信がなかったんです。子どもたちを集めてダンスを教えるなんてできるのか? そもそも子どもたちが集まるのか? 場所はどうすれば? と、できない言い訳ばかりを探していました」

だが、あるとき参加した教育関係の交流会で、「いつか子どもたちにダンスを教えたい」と口にしたことで、事態は大きく変わることになった。

「『なんでやらないの? やらない理由ないじゃん。場所なら公民館でもいいし、とにかく一回やってみなよ』と、周りにいた人たちに背中を押されたんです。確かに、困ったら親御さんにも手伝ってもらえばなんとかなるかもと、20人ほど集めてダンス教室を開いたんです。そこで、誰よりも自分自身がとにかく感動しちゃって…。大学時代に経験した、あの幸せな時間がまた戻ってきたんです」

周りの人の協力を仰げば、やりたいことは何でもできる。やりたいことを先延ばしにするのは、もうやめよう。そう確信した中込さんは、もう立ち止まらなかった。

「実は昔からやりたいことを紙に書いて壁に貼る習慣があって、学生時代から貼っていたのが『世界一周をする』『起業する』の二つ。いつかできたらいいなと思っていたけれど、今できることなんだ! 世界一周して起業したらいいんだ! と思えたんです。そして、自分が一番幸せな時間と感じる、子どもたちにダンスを教えながら世界をまわれば最高に楽しいはず、と思い立って仕事を辞め、世界一周を始めました」

フィリピンから始まり、1年半に及んだ世界一周の過程では、縁が縁を呼び、さまざまな場所でダンスのワークショップを開催。東南アジア、アフリカなどで計1万人以上にダンスを教えたという中込さん。ときにアジア人差別に遭遇することもあったが、それ以上に、温かく接してくれる人たちとの出会いが大きな財産になったと振り返る。だからこそ、世界一周を終えた今、新たに取り組もうとしているのが、ダンスを使った世界との交流だ。

「僕がダンスを通して世界中の人と仲良くなれたように、世界中の子どもたち同士がダンスを通じて仲良くなって、違いを認め合ったり世界が広がったりすればいいなと、インターネット中継でダンス交流をするワークショップを始めています。将来的には世界中の子どもたちが実際に会って、ダンスを通して仲良くなれる“場”がつくれたらいいなと思っています」

Skypeを使い、日本と世界の子どもたちがダンス交流する活動を行っている(本人提供)

その“ダンス交流の場”の手始めとして今春、「世界とつながるダンス教室」を神奈川県平塚市で開校。下は2歳から上は67歳まで、世代を超えてダンスを教えている。全国の学校や学童保育クラブ、ダンススクールなどでも、出張授業や交流ワークショップを実施中だ。

「ダンスを始めるタイミングは人それぞれ。年齢に関係なく踊りたいと思ったときがベストなタイミングなんだと思います。だから、学生の皆さんも何かしたいと思い立ったら、いつでもどんどんチャレンジしてほしいですね。チャレンジすることで世界が広がっていくし、自分の本当の可能性を広げることができると思います」

もし、やりたいこと、好きなことが見つからない、という人にもできることはあると言う。

「僕もずっと、自分には何ができるのか分かりませんでした。そんなときは、やりたいことがある人を応援してみてはどうでしょう。応援すると、その場の空気にいい意味で飲み込まれるというか、自分の中の常識が変わったり、気持ちのブロックも外れて、本当にやりたいことに気付くことができるんです。だから、どんどん周りの人を応援して、助けて、自分も周りの人に助けてもらいましょう。早稲田って面白い人たちがたくさんいて、いくらでもチャンスをつかめる環境だと思います。僕自身がそうですが、大学時代の出会いはその後もずっと続いていきます。まずはその出会いを大切にしてほしいですね」

取材・文=オグマナオト
撮影=石垣星児

【プロフィール】

中込 孝規(なかごめ・たかのり)

1988年生まれ。早稲田大学商学部卒業。ストリートダンス(POPPIN)歴14年。大学在学中にオールジャパン学生ダンス選手権大会で優勝。教育系企業(株)ベネッセコーポレーションに4年間勤務した後、退職。1年半で18カ国57都市を回り、1万人以上の子どもたちにダンスを教えた。ラオス・ルアンパバーン国際映画祭、ジンバブエ・ハラレ国際映画祭など国際的なイベントにもダンサーとして出演。現在、日本とアフリカの子どもたちをインターネット中継でつないだダンス交流会を世界各地で開催中。全国の学校でも出張授業や、交流ワークショップを実施している。 また、子どもたちの世界・可能性が楽しく広がる「世界とつながるダンス教室」を神奈川県平塚市に開校した。NHK「人生デザイン U-29」「Eダンスアカデミー」出演や読売新聞連載など、メディアからも幅広く注目を集めている。http://gome-takanori.com/

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