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「ア?」「え?」ってどんな意味? NHK Eテレ『テレビで中国語』出演 ― 中国出身 段文凝

「日本と中国の懸け橋になりたい」
そのためなら、どんなチャレンジもいとわない。

タレント
段 文凝(だん・ぶんぎょう)


NHK Eテレ『テレビで中国語』に出演するほか、女優業や司会業、本の執筆など、多方面で活躍する段文凝さん。中国・天津市出身の段さんが来日したのは2009年。2年間の語学勉強を経て、2011年から3年間を早稲田大学大学院政治学研究科で過ごした。来日して7年の段さんが振り返る、早稲田と日本の忘れられないエピソードとは?

語学学校では学べない、大切で貴重な経験

メディアでも、私生活でも、明るく快活な姿が印象的な段さん。ところが、小さな頃は人とコミュニケーションを取ることがとても苦手だったという。

「今の私を知る人に『もともと私は内気だったんですよ』と言っても、99%の人が信じてくれないんです(笑)。でも、本当に内気な子どもで、そんな自分を変えたいな、とずっと思っていました」。

自分とは真逆の人間を目指せば、この性格も変わるのでは? そんな思いから、人前で言葉を紡ぐアナウンサーを目指すようになった段さん。天津師範大学ではアナウンサーコースを専攻し、実際に中国のテレビ局・天津電視台でアナウンス業に就いた。

ただ、段さんにはアナウンサー以外にチャレンジしたいことがもう一つあった。それが日本への留学だった。

「父親が日本で働いていた時期があり、小さい頃から日本のことを聞かされて育ちました。だから、以前から興味があったんです。それに、私は生まれてから大学を卒業するまで、ずーっと天津育ち。一度、外の世界を見てみたいという思いが日増しに強くなって、留学を決意しました」。

2009年に来日し、まずは語学学校へ通い始めた段さん。教科書で日本語を勉強する以外にも生の日本語に触れたい、と積極的にアルバイトにも挑戦。だからこその失敗談も多かったという。

「中国語だと、何か分からないことや聞き取れなかったことがあるときに、『何ですか?』の意味で『ア?』『え?』と言うことがあります。ただただ、『分からなかったのでもう1回お願いします』と確認しているだけなのですが、日本の方からすると、失礼な態度に感じるということをその時は知らなくて…。アルバイト先で先輩社員に『ア?』『エ?』と聞き返して、すごく怒られたことがありました。でも、語学学校では学べない、とても大切で貴重な経験でした」。

早稲田大学に入学したばかりの頃の段さん

2年間の語学勉強を経て、2011年春に早稲田大学大学院政治学研究科に見事合格。中国でのアナウンサー経験を生かし、さらに報道のスキルを伸ばすべく、ジャーナリズムコースを専攻した。

そして同じ時期に、段さんはもうひとつの「合格」をしていた。それが、今も続くNHK Eテレ『テレビで中国語』のオーディション。学生とタレント、二足のわらじ生活がスタート…という、まさにそのタイミングで遭遇したのが、2011年3月11日の東日本大震災だった。

自分の目で見て、耳で聞いて、感じることが大事

「震災が起きたあの日は、ちょうど早稲田で入学手続きをしていました。その手続きが終わって、キャンパス内をのんびりと歩いていたときに、信じられない大きな揺れに襲われたんです。当時はスマートフォンも持っていなくて、情報の入手手段がほとんどなかったので、後から少しずつ状況が分かっていく怖さと驚きもありましたね」。


中国にいる家族や友人からは当然のように「帰ってこい」と言われたという段さん。だが、帰国はせず、春からの学生生活とタレント生活をそのままスタートさせた。そこには2つの理由があった。

来日して初めての渋谷にて

「来日して2年。たくさんの日本人に優しくしていただいて、助けてもらいました。そんな日本が大変なときに、自分だけいなくなるのは違うんじゃないかな、と思ったのが一つの理由です。そしてもう一つは、ジャーナリストを目指そう、勉強しようという人間が、現場から逃げちゃダメだ、と。ここにちゃんと残って、自分の目で見て、耳で聞いて、感じることが大事だと思ったんです」。

実際、大学院での印象深い体験は、東日本大震災の被災現場に足を運んだことだという。

「ゼミのメンバーで被災地を取材し、記事としてまとめました。その記事が『Spork!』(早稲田大学ジャーナリズムスクールWebマガジン)に掲載されたのは貴重な経験でした」。

大学院卒業後も帰国せず、日本でのタレント活動を本格化。CM・映画出演やコラム執筆など、ジャンルを限定することなく、さまざまなことにチャレンジし続けている。その背景にあるのが、「日本と中国の懸け橋になりたい」という明確な目標だ。

 

ゼミのメンバーと被災地を訪問、自分の目で見て、耳で聞いて、感じることを実践

「懸け橋につながることだったら、何でもやってみたいんです。中国語を教えること、女優、司会、本を書くこと…何が中国と日本の仲を取り持つことになるのか分かりません。目標は一つ。そのための手段はたくさん持っていた方がいいのかな、と思って毎日を過ごしています」。

自ら積極的に体験・経験することで、日本についてより深く理解しようとしてきた7年間。そんな段さんだからこそ、学生にも「自分の目と耳で体験してほしい」と語る。

「中国ってどんなところ?と質問されることが多いのですが、中国はとても広くて、一口には答えられません。地域によって人も習慣も全く異なります。でも、インターネットなどの情報をうのみにして、断片的な話でも一くくりにして信じてしまっていることってないですか? だからこそ、実際に行ってみてほしいんです。自分で見聞きすることで初めて気付くことってたくさんあるはず。一度行ってみれば、きっと、中国を好きになっちゃうと思いますよ」。

そしてもう一つ、段さんが訴えたいのが「思い立ったらすぐに行動を!」ということだった。

「私の日本での大学生活はたったの3年だけ。あっという間に終わってしまいました。本当はサークル活動にも憧れがあったんですが、大学院生だったこともあり、その当時は入会する勇気がありませんでした(笑)。遊びでも、仕事でも、恋愛でも、何でもいいと思うんです。何かをしたいならば、今動かないと、間に合わないですよ」。

日本と中国の懸け橋のためにさまざまなシーンで活躍

【プロフィール】

段 文凝(だん・ぶんぎょう)
中国・天津市出身。2014年、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。また、NHK Eテレ『テレビで中国語』に出演するほか、テレビ、ラジオ出演多数。主な著書に共著『中国語で読む 我的ニッポン再発見!』(研究社)、『日本が好き!』(PHP研究所)、『「菜根譚」が教えてくれた 一度きりの人生をまっとうするコツ100』(マガジンハウス)など。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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