企業がエントリーシートから知りたいこととは?
エントリーシート(以下、ES)で学生時代に力を入れて頑張ったことをどう書いたらいいか、迷ってしまう方が多くいます。また、書いたものを見ると、頑張ったこと自体の事実関係を中心に書く人が多いようです。「私は○○に取り組んで、△△ということがありました。そして××という結果となりました」という流れのESです。しかし、企業が頑張ったことを書かせる目的は、あなたが頑張ったという『事実』を説明してほしいからなのでしょうか。
ESを書く時期よりも前に、学生生活を送る過程で知っておいた方がいいことがあります。というのも、就活を意識してから何か頑張ろうと思っても、どうしたらいいか分からない人もいるでしょう。そのように思ってしまうのは、行動と経験の数量が不足しているからかもしれません。それでは、行動と経験を増やすにはどうしたらよいのか。PDCAサイクルの回転数を増やすことが一つのヒントとなります。
ゼミ、サークル、アルバイト…どんな場所でも役に立つPDCAサイクルの考え方
PDCAサイクルとは、もともと、工業製品の製造工程の不具合、品質改善に取り組んでいた米国の物理学者、ウォルター・シューハート博士が提唱した考え方をベースに形成されました。Plan→Do→Check→Act→Plan→Do…と繰り返していくことで、業務改善・改革を推進するために考えられたものです。
仕事に限らず、何かに取り組む場合、「企画を立て(Plan)、実行し(Do)、その結果を検証して(Check)、やり方や考え方を修正して進化させる(Act)」という過程(プロセス)を意識して行うことが重要です。一度それが回れば、次のステップとして企画を練り直し、実行し、検証して、進化させるというプロセスをどんどん繰り返すことで改善が図れるようになります。また、優れた成果を残す人はPDCAサイクルの回転数が速いという特徴があります。
サークルやアルバイト、ゼミの活動でもこのPDCAサイクルを意識して取り組んでいけば、ESや面接でも、自分が取り組んだことを企業の採用担当者(面接官)に分かりやすく伝えることができるようになります。企業がESを通して知りたいことは、あなたが課題をどのようなプロセスを経て乗り越えるのか、という課題解決力なのです。
(参考図書:『結果を出すための【思考と技術】PDCAプロフェッショナル』稲田将人著/東洋経済新報社)
企業の採用担当経験者に聞く PDCAサイクルを学生生活で応用する方法
キャリアアドバイザー(キャリアセンター相談員)
内村 敏郎(うちむら・としろう)
企業では目的・目標を明確にし、その達成を目指して通常3年から5年にわたる長期的な戦略を策定していきます。それをさらに1年の短期プランに落とし込み、3~6カ月の周期でチェックしながら活動を進めます。激しく移り変わるグローバルな環境の中で、企業はどのような戦い方をして、長期的に、また継続的に業績を上げるかを考える必要があります。そのために、自分の強みと弱みを分析し、何をもっと強化する必要があるかを考えていくのです。それが企業の経営戦略になります。
しかしながら、その戦略はあくまでも予測や分析に基づくもので、刻々と変化していく環境の中で、うまく作動するかどうかは分かりません。そのため、戦略は絶えず現実に照らして見直す必要があります。つまり、PDCAを回すことによって、策定した戦略がうまく動いているかどうかを確認し、うまく動いていない場合は、何が原因なのかを分析しながら、より現実に沿ったものに変更していく作業が必要なのです。これが、企業におけるPDCAサイクルです。
PDCAを回し続けるために、企業の関連部門では、取り巻く環境に関する情報収集や、顧客や競争相手、マーケットなどの動きを継続的に分析することが不可欠です。世の中の景気は今どうなっているのか、どちらに向かっているのか、今後どうなりそうかといったことを予測していきます。その予測から、マーケットや顧客はどう変わり、競争相手はどのように動いていくのかといった分析を定期的に行いながら、必要に応じて戦略の変更を実施するのです。
ここまで見ると、企業でのPDCAサイクルは、サークル活動や就職活動においても学生の皆さんが実施できる、戦略的アプローチだと分かると思います。目的や目標を明確にし、自己理解を深めながら、どうやれば自分の強みを生かせるか、何を重点的に強化すればいいのかという、学生生活にも応用できるものであり、日々の行動指針となるものなのです。忘れてはいけないのは、PDCAを回し続けることです。そうすることで、自分の成長につながり、目的や目標の達成に近づいていけるのです。
(参考図書:『ビジネスモデルを劣化させない戦略思考の鍛え方』冨山和彦・岸本光永編著/日経ビジネス人文庫)
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