70万人以上が「いいね!」をするFacebookページがある。世界各地の楽園や秘境、奇景の美しい写真が堪能できる「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」だ。このページの管理人・詩歩さんが人生のターニングポイントを迎えたのは大学時代。一つはサークル活動で、もう一つが卒業旅行での出来事だった。
進路志望にも影響を与えた環境サークルでの出会いと学び
子どものころから、実は旅よりも環境問題に関心があったという詩歩さん。早稲田大学に進学すると、公認サークル「環境ロドリゲス」に入会した。
「さまざまな大学から100人近くの学生が集まる大所帯で、私は環境ビジネスプロジェクト『em factory』に属していました。フリーペーパーを作ったり、イベントを開催したり、企業から協賛金を集めたりと、社会と深く関わる活動はとても新鮮な経験でした」。
そうした中で、詩歩さんの環境問題への視点や、将来に対する考えが少しずつ変わっていく。
「em factoryのイベントを通じて、広告代理店の方と知り合う機会がありました。それまでは、メーカーなどに就職して、環境問題を扱う部署を希望しようと考えていましたが、広告やコンサルティングといった領域でなら、たくさんの企業を横断して環境問題に関わることができる。その方が、社会的に大きなことができるのではないか、と思い直して、企業選びの軸をシフトしたんです」。
希望どおり、詩歩さんはインターネット広告会社に入社。しかし、新入社員研修に現れた彼女は全身包帯姿だった…。
死にかけたから生まれた、「死ぬまでに行きたい!」というコンセプト
「話は大学時代の卒業旅行にさかのぼります。旅先のオーストラリアで、乗っていた車が走行中に横転。車の天井が割れるほどの大事故でした。比喩ではなく、本当に死にかけてしまったんです」。
そしてドクターヘリで運ばれ、緊急手術・緊急帰国。これが新入社員研修の日までのいきさつだが、実はこの話には続きがある。研修で出された課題がFacebookページの作成で、そのとき生まれたのが「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」だったのだ。
「人間はいつ死んでしまうか分からない。じゃあ、後悔のない人生はどんなものだろう、とごく自然な流れで考えました。私の答えは、世界各地の行きたい場所を全部リストアップして、端からクリアしていくこと。だからこそ、キレイな写真を並べるだけのFacebookページではなく、『死ぬまでに行きたい!』というコンセプトが大切でした」。
こうしてスタートした“絶景の旅”は、研修期間中だけで2万人の「いいね!」を獲得。今では70万人以上のファンを集めるコンテンツに成長した。さらに同タイトルで書籍化もされ、シリーズ累計発行部数は52万部を超えた。詩歩さんは2年勤めた会社を辞め、独立。情報発信以外にも、旅行代理店と絶景を巡るツアーを企画するなど、休む暇もないほど忙しく、充実した日々を過ごしている。「もう私一人の活動ではなくなっています。今は、ファンの皆さんが何を求めているのかを察知しながら、どうすればより絶景を楽しめる生活になるのか、それを形にしていくことが私のやるべきことなのかな、と感じています」。
–そんな詩歩さんが今、学生に贈りたいメッセージとは?
「学生のうちに、寝る間も惜しんで自分の好きなことに没頭してほしいですね。私自身、毎日忙しく学生時代を過ごしていたつもりでしたが、今思えば社会人の忙しさの比ではありませんでした。死ぬ前に後悔しないよう、1秒も無駄にせず、まず動いてみませんか?」