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演劇文化を育てるトップランナー -演劇集団キャラメルボックス代表 成井 豊

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なるい・ゆたか 1961年生まれ。1984年、早稲田大学第一文学部卒業。1985年に演劇集団キャラメルボックスを旗揚げ。1987年には高校教師の職を辞し、脚本・演出家として劇団の活動に専念。近年は東野圭吾や柳美里といった人気作家の小説を舞台化するほか、ドラマ脚本や小説執筆などでも幅広く活躍している。

演劇集団キャラメルボックスといえば、1985年の立ち上げ以来、延べ270万人の観客を動員してきた日本随一の人気劇団である。しかし、その始まりは“高校教師の息抜きサークル”だった──。

代表の成井豊さんは、高校1年生の秋に大隈講堂で見た演劇サークル、てあとろ50’の公演に刺激を受け、早稲田で演劇を志す。入学は1980年。“第3次小劇場ブーム”といわれ、東京大学の野田秀樹率いる夢の遊民社が人気を集めるなど、学生演劇が非常に盛んなころだった。

「81年には早稲田の鴻上尚史さんが第三舞台を、83年には日本大学芸術学部の三谷幸喜さんが東京サンシャインボーイズを立ち上げ、演劇ブームは過熱していきました。学内にも約30の劇団がありましたが、僕はてあとろ50’に参加。82年から作・演出を始め、役者もやりながら2年間で4本の芝居を作りました」。

小劇場ブームから離れ、校内暴力で荒れる高校へ

大学時代は演劇漬けの日々。「学業はいつもギリギリの状態」だったそうだが、劇団の方は順調に観客動員数を伸ばしていった。ゆくゆくはプロに…そんな思いも一度は頭をよぎったが、成井さんはここで演劇から離れてしまう。卒業後に進んだのは、高校教師という道だった。

「実は大学3年生のときに父の経営する会社が倒産し、芝居をやっている場合ではなくなってしまったんです。しばらくは夜逃げ先の家から通学していました(笑)。もっとも、演劇をやめたのは見切りをつけるという意味もあった。自分の才能に全く自信が持てなかったんです。こうなったら良い先生を目指そう。そんな気持ちで教職に就いたのですが…」。

ここで再び試練が訪れる。成井さんが赴任したのは、暴力の嵐が吹き荒れる教育困難校だった。80年代は校内暴力が社会問題となっていた時代。「仕事のほとんどが生徒指導で、時には殴られそうになることもあった」という中でフラストレーションを募らせていった成井さんは、教員2年目の85年に大学時代の後輩に声を掛け、週に1度の息抜きとして演劇を再開。こうして社会人サークル「キャラメルボックス」が結成された。

早稲田で学んだことが、演劇を作る上での財産に

20151208_1355_P5_先輩に乾杯_サブカット_ヒトミ「芝居を作るためには、いろんなことを知り、さまざまな人と出会うことが大切です。早稲田はそれにうってつけの環境だった。演劇中心の学生生活でしたが、日本を代表する文化人類学者である西江雅之先生の授業や、当時第一線で活躍していた詩人の鈴木志郎康先生の授業などは夢中で受講しました。また、サークルには各地方出身の先輩・後輩がいて、縦にも横にも幅広い人間関係を築けた。これらは僕の財産ですね」。

早稲田の演劇といえば、2015年に早稲田小劇場どらま館がリニューアルオープンを迎える。キャラメルボックスも、ここで稽古を積んだ劇団の一つだ。

「80年代の演劇界は劇団同士の交流が皆無だったけど、今はそういうものが当たり前になっている。どらま館に現役の演劇人が集い、学生と交流できるような拠点になったらいいと思います。高校生を招いてイベントやワークショップをやれば、受験生も増えるのでは。僕もそうやって早稲田を志した一人なので」。

演劇界では今、キャラメルボックスの舞台を見て育った若手世代が台頭中だ。かつては「女性や学生ばかりに人気のある劇団」という冷やかしも少なくなかったそうだが、文化は次世代へと確実に継承されている。

「昔は小説家になることが夢だったんだけど、演劇を頑張っていたら、小説を書く機会にも恵まれた。人生は長い。焦らず、目の前のことに全力で取り組んでいれば、夢はいつかかなうと思います」。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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