Waseda Weekly早稲田ウィークリー

キャリアコンパス

世の中の穴(=問題)を楽しく埋める-株式会社ベイビー・プラネット代表取締役・放送作家 たむらようこ

社会問題をエンタメに昇華し、押しも押されもせぬ番組に

たむら・ようこ 1970年生まれ。1992年早稲田大学第二文学部卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社にADとして入社し、2年後、放送作家に転身。 2001年に30歳でテレビ番組制作会社「ベイビー・プラネット」を設立。『サザエさん』(フジテレビ系)、『めざましテレビ』(同)、『世界の日本人妻 は見た!』(TBS系)など多数の人気番組を担当。

たむら・ようこ 1970年生まれ。1992年早稲田大学第二文学部卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社にADとして入社し、2年後、放送作家に転身。 2001年に30歳でテレビ番組制作会社「ベイビー・プラネット」を設立。『サザエさん』(フジテレビ系)、『めざましテレビ』(同)、『世界の日本人妻 は見た!』(TBS系)など多数の人気番組を担当。

国民的アニメ『サザエさん』や朝の情報番組『めざましテレビ』の脚本、構成を手掛ける放送作家のたむらようこさん。業界の第一線で活躍する一方、女性社員 ばかりの番組制作会社「ベイビー・プラネット」の代表として、勤務時間が不規則になりがちな放送業界において、女性が働きやすい環境づくりに邁進する。

「私のモットーは『世の中にある穴(=問題)を楽しい形で埋めていく』。番組制作も会社経営も同じスタンスで取り組んでいます」。

例えば、バラエティ番組でSMAPの香取慎吾さんが扮した「慎吾ママ」はたむらさんの代表作だが、当時のたむらさんには、「主婦業はやって当然」の風潮が あるように思えてならなかったという。そこで、その問題点にスポットを当て、主婦業の苦労や醍醐味(だいごみ)をエンターテインメントに昇華。結果とし て、女性を中心に大きな人気を博し、慎吾ママの決め台詞「おっはー」は2000年の新語・流行語大賞にも選ばれた。

「田舎の女子高生たちも『おっはー』と声を掛け合っているのを見て、自分の思いが本当に多くの人たちに寄り添っていたのだと実感しました」。

早稲田で触れた表現の神髄 感性を磨く人生が幕を開ける

「大学4年次、内定していたIT会社に定期連絡を入れようとしたところ、連絡先を間違え、番組制作会社に電話をかけてしまったんです(笑)」。

不思議な縁でテレビに関わるようになり、20年以上のキャリアを重ねてきた。浮き沈みの激しい業界で生き残れた理由は自覚している。

「一般女性の感性を理解できること、そして自分の感性を信じられることの二つでしょう」。

これまでたむらさんは感性を磨くための人生を歩んできた。早稲田の文学部を目指した経緯もそこにある。「高校時代、部活中にかつてないほど美しい夕日を見 たのですが、その光景を言葉で表現できなかった。そこでひらめいたんです。文学色の強い早稲田なら、この光景を的確に表してくれる先生がいるのでは、 と」。

そんなたむらさんの期待を超える衝撃が、大学では待ち受けていた。荒川洋治教授(現在、愛知淑徳大学教授)の詩の講座でのこと。教授は教壇にハンカチを置き、『皆さん、これをどう表しますか?』と尋ねると、『私なら、“悲しみが3cm”』とだけ言い残し教室を後にした。

「それまで私は“比喩は具体的な表現を伴うもの”と考えていた。だからこそ、ハンカチが持つドラマ性をこんなに短い言葉で表せるのか、と教授の感性に衝撃を受けたんです」。

新たな挑戦の原動力は「自信と違和感」

独自の感性を持っていたのは学友も。周囲には作家、詩人、音楽家を志望する学生がずらり。「人に頼まれて動くのではなく、自らが必要と感じることに独自性を発揮しながら取り組む人が多かった」という環境で過ごしたことが、たむらさんの仕事の取り組み方にも影響を与える。

「テレビ業界は完全な男性社会で、仕事を始めた当初は、私が新番組の企画を提案しても相手にされない日々が続きました。それにどうしても納得がいかず、自 分の企画と彼らが支持する企画を一般の方に見てもらいました。結果は私の企画の支持率の方が高かった。そのとき業界内の意見を当たり前に受け入れるのでは なく、自分の“普通の感覚”を信じようと強く実感しましたね」。

新番組が始まる際、その枠を狙う放送作家たちから数百と企画が集まる中、たむらさんは普通の感覚を武器に限られた席を勝ち取り続けた。

この頃から「仕事も家庭も大切にしたい」という女性のニーズにも注目し、2001年、子連れで出勤できる番組制作会社「ベイビー・プラネット」を設立。世 の中の穴を埋める第一歩を踏み出した。この理念を押し広げ、現在ではフリーランスの女性を対象とした児童待機施設付きのシェアオフィスの運営も計画する。 新しい挑戦への原動力は常に自分の感覚への自信と世の中への違和感だ。

「これから社会に出る皆さんにも自身に芽生える多様な価値観と違和感を大切にしてほしい。新たな取り組みを生み出せるのは、今ある環境に穴を感じられる人だけですから」。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる