Waseda Weekly早稲田ウィークリー

キャリアコンパス

流されず、縛られず 私らしく生きていきたい

株式会社SAMURAI マネージャー 佐藤 悦子(さとう・えつこ)

ユニクロのグローバルブランド戦略や国立新美術館のロゴデザインをはじめ、企業、商品のデザインから広告キャンペーンまで幅広く手がけてきたことで知られるアートディレクター・佐藤可士和氏。『佐藤可士和』の名を世間に周知させるばかりでなく一つのブランドとして確立させたその人こそ、今回の先輩、株式会社『SAMURAI』のマネージャーを務める佐藤悦子さんだ。多くの価値観を受け入れながらも自分らしさを忘れず時代の最先端を走り続けてきた佐藤さん、その強くしなやかな生き方に迫った。

開かれた世界、早稲田大学へ

カトリック系の女子校、いわゆるお嬢様学校で思春期を過ごした佐藤さん。中高一貫教育という環境の中、気心の知れた友達に囲まれて楽しい日々を送ってきたが、大学進学を意識し始める時期になると、もっと開かれた世界に飛び立ちたいと思うようになる。

高校卒業後、選んだ進学先は早稲田大学。そこには、今まで知り合ったことのないたくさんの人との出会いがあった。「入学してすぐ、クラスのオリエンテーションがあったのですが、そこになぜか学ラン姿の男の子が。聞くと彼は早実の元応援団団長。他にもすごく個性的で、出身地も年齢もさまざまな人たちが集まっていて、『やはり早稲田! これぞ私が求めていた世界!』 と、感動してしまいました」。

専攻は教育心理。クラスの仲間たちと交替でマウスの世話をし、ストレス実験などに挑んだ。また、高校まで茶道部だったこともあり、体育会系のサークルで真剣に何かに打ち込みたいとの思いからゴルフサークルに所属。学業とスポーツを通して、たくさんの仲間たちと共に笑い、時には涙しながら、新鮮な感動であふれる4年間を駆け抜けた。強烈な個性が集まり、それでいて互いを受け入れられる早稲田の大らかな雰囲気が今でも大好きだと、佐藤さんは話す。

苦悩と挫折の果てに


大学を卒業し、大手広告代理店の営業職として社会人生活が始まった。担った仕事は、クライアント企業の広告戦略全般を取り仕切るという営業職。入社間もない佐藤さんは、会議やコンペに参加しても何を発言したらいいか分からず、事の成り行きを見ていることしかできなかった。自分の不甲斐なさを先輩に謝っていると、こんな言葉が返ってきた。「大丈夫。君はいてくれるだけでいいんだから」。落ち込む後輩を励ましてくれようとしたはずのその言葉は、佐藤さんをゾッとさせた。「そこにいて場を和ませることだけが、若かった私の役割だったんですね。数年先には自分の居場所がなくなるんだと思うと怖くてたまらなくなりました」。このままではいけないと危機感を抱きながらも、当時の佐藤さんには現状を変える力はなかった。

焦りもがく中で佐藤さんはあることに気付く。雑誌に関わる企画となるとダメな自分にも次々と新しいアイデアが浮かんでくるのだ。「ようやく『見えた!』と、手応えを感じました。思えば、私は昔から雑誌が好きだったんです。あらゆる仕事において、“好き”という気持ちほど強みになるものはないと痛感しましたね」。

二人の人生、二人の『SAMURAI』

仕事に喜びを感じ始めていた佐藤さんだったが、会社の先輩であった可士和さんとの結婚を機に退職を決意。結婚したものの二人とも毎晩遅くまで仕事に追われ、一緒に過ごす時間が十分に取れないという事態を避けたかったからだ。「確かに仕事は楽しく、周囲の方も引き止めてくださいましたが、私には仕事よりこれから始まる二人の生活の基礎を作ることの方が大切でした」。

自分にとって最も大切なものを選んだ決断だった。しかし、佐藤さんの退職を知った元上司が、ある化粧品会社のPRマネージャーに誘ってくれた。夫の後押しもあり、新たな人生を歩み始めた佐藤さんがこのPR職で培ってきた経験は、後に可士和さんが立ち上げる会社『SAMURAI』が大きな飛躍を遂げる原動力となる。

写真左:東京都立川市にある「ふじようちえん」。佐藤可士和さんは2007年に竣工した新園舎のクリエイティブディレクターを務めた。園児の遊び場になっているドーナツ状の屋根が印象的
写真右:佐藤可士和さんが手掛けた「ユニクロ」のロゴ。2006年、ニューヨーク旗艦店オープンの際に作られたもので、現在では、各種広告や新店舗、リニューアル店舗にて使用されている

早稲田で築いた揺らぐことのない“自分”

現在、佐藤さんは『SAMURAI』のマネージャーとして、可士和さんのスケジュール調整からプロジェクトのマネジメントまでこなしている。最後に早稲田の後輩たちに向けこんなエールを送ってくれた。「価値観の多様化が叫ばれる時代ですが、早稲田にはずっと前から多種多様な価値観があふれていました。多くの人の考え方に触れてきたことで、私もまた“自分”の基礎を築くことができました。自分の軸がしっかりしていれば、社会に出た後、流されず、自分にとって大切なものを見失わずに進むことができるのではないでしょうか」。

【プロフィール】
1969年生まれ。1992年、早稲田大学教育学部卒業。大手広告代理店に入社、営業職に就く。先輩であった佐藤可士和氏との結婚を機に退職。化粧品ブランドのPR職に転職した後、2001年、佐藤可士和氏が率いるクリエイティブスタジオ『SAMURAI』のマネージャーに就任。現在に至るまで、見る人の心をつかむビジュアルを数多く生み出すアートディレクションの可能性を提案し続けている。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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