Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

サークル・部活動をもっと居心地よく! 多様性を尊重するための工夫とは?

早稲田キャンパス 10号館 GSセンター分室にて。写真左から渡辺さん、もちさん、はるさん

学生の自主的な活動がベースとなっているサークル活動や部活動。学生生活に欠かせないこれらの活動で、ジェンダー・セクシュアリティの観点から、モヤモヤを感じていたり、そもそも活動への参加が難しかったりする人がいることを考えたことはありますか?

今回、『早稲田ウィークリー』の早大生読者モニターに「サークルや部活動などでの活動におけるジェンダー・セクシュアリティの多様性の包摂」について、アンケートを実施。回答を踏まえて、ジェンダー・セクシュアリティの多様性の観点から「現在どのような問題があるのか」「今後どのようにしていくべきなのか」について、早稲田ウィークリーレポーターがジェンダー・セクシュアリティセンター(以下、GSセンター)を訪問! 学生スタッフ2人にインタビューしました。

多様性の包摂について今すぐ実践できることは?

GSセンター学生スタッフと考えよう

早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
教育学部 3年 渡辺 詩乃(わたなべ・しの)

渡辺

これまでジェンダー関係の授業をたくさん履修してきたので、GSセンターの存在は知っていましたが、少し敷居が高いと感じていて一度もイベントには参加したことはありませんでした。GSセンターは「多様なジェンダー・セクシュアリティを包摂するサークル/部活動を考える会」などのイベントを行っていますが、そこに参加する人たちはどのような動機で参加しているのか気になっています。大学として、多様性に関心を持たない層にアプローチしていく必要があると思うので、その点についても聞いてみます!

GSセンター学生スタッフ
文化構想学部 2年 もち
文学部 1年 はる

(※1)GSセンターの学生スタッフは学スタ(学生スタッフ)ネームを使用しています。

写真左:早稲田大学はダイバーシティ推進宣言を制定していることから、安心して大学生活を送れると思い入学を決めたという、もちさん
写真右:はるさんは、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ放送)を見たことで、ジェンダー・セクシュアリティに関する知識を増やしたいと思ったそう

サークルや部活動で、困る人やモヤモヤを感じる人も

渡辺:そもそも「サークルや部活動におけるジェンダー・セクシュアリティの多様性の包摂」とは、どのような意味ですか?

もち:シスジェンダー(※2)・ヘテロセクシュアル(※3)・ヘテロロマンティック(※4)・アロセクシュアル(※5)・アロロマンティック(※6)以外の存在を前提とした活動の環境、という意味です。例えば、出生時に割り当てられた性別と異なるジェンダーの在り方の人もいれば、自分と同じ性別などの人に魅力を感じる人もいるし、他者に対して恋愛感情を抱かない人や他者に対して性的感情を抱かない人もいます

(※2)出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している人。
(※3)主に女性か男性の性自認を持ち、自身とは異なる性自認の人に性的な魅力を感じる人。
(※4)主に女性か男性の性自認を持ち、自身とは異なる性自認の人に恋愛的な魅力を感じる人。
(※5)他者に性的な魅力を感じる人。
(※6)他者に恋愛的な魅力を感じる人。

渡辺:なるほど。ではその観点から、実際に改善すべき点にはどのようなものがありますか?

もち:アンケートでは「サークル内で恋愛話をするのが苦手」といった回答がありましたが、私も初対面で「彼氏いるの?」と聞かれることがあって、それには改善すべき点があると思っています。一つ目は私が恋愛をすると決めつけていること、二つ目は私を外見から女性であると一方的に定義していること、三つ目は異性愛者だというステレオタイプを押し付けていること。そして、「そもそも恋愛の話をしていいかどうかを相手に確認した方がいいな」と思うので、四つもあるんです。

また、ダンスなどのパフォーマンス系や体育会系のサークル・部活動に入りたいと思って体験会に行った新入生が、他の人に着替えを見られるのが苦手な場合、着替え場所が女性用・男性用の二つしか設けられていないと困る、という問題もありますね。現状その人は、着替えの必要がない服を着て行くか、サークルや部活動に入ることを諦めるしかありません。

はる:アンケートの回答を見ると、「女性だから食事量が少ない」「男性だから重い物を運ばないといけない」といった決め付けもあるようです。私は“レディーファースト”というのが苦手で…。重い物を持っていると、「女の子は持たなくていいよ」と男性が持ってくれるんです。親切でしてくださっているともちろん分かってはいますが、か弱くはないので自分で持てるし、何より女性というだけで「重いものを運ぶ」という誰かの役に立てる役割を自分が担えないことにモヤモヤします。

恋愛話、どうすべき?

渡辺:私も同じ状況だとモヤモヤするタイプです。あと、飲み会で「恋愛しない人はおかしい」という発言を聞いて、その決め付けにショックを受けたことがありました。あのとき自分はどう対応すれば良かったんだろうって、今でも思います。

はる:特に初対面では話題に困って、「時間割見せて」「サークルは何をしているの?」など会話のテンプレートに沿って恋愛話も展開されがちですよね。恋愛話をすること自体は悪くないと思いますが、居心地の悪さを感じたことがある人って、実はたくさんいるのではないでしょうか。ただ、相手との関係性や状況から指摘するのは難しいですよね。私も、サークルの新歓期にはそういった場面で指摘する勇気を出せませんでした。

もち:私だったら「え、なんで? 恋愛する人がいるなら、しない人もいるんじゃない?」って、その人に聞くかも。そうやって、何気ない会話から周りの人の固定観念を少しずつ崩していくことが大事なのかなって思っています。

渡辺:そんなときに「良くないよ」と指摘するのではなく、もちさんのように「なんで?」と質問するのは、相手に気付きを与えるという意味で良いかもしれないですね。そうした「ジェンダー・セクシュアリティの多様性の包摂」に関してできることって、他にもありますか?

もち:アンケートを見ると、サークル活動などのジェンダー・セクシュアリティについての問題は「特にない」「そこまで考えたことがない」という回答が多かったのですが、問題に気付いていない人が多いままでは環境は改善されにくいと思います。特に、サークルや部活動では上下関係があるので、何か困っている人がいても周りに伝えるのが難しい場面もありますよね。そのためにもまずは、恋愛話が苦手な人がいるとか、男女二元的なステレオタイプを押し付けられるのが苦痛な人がいるとか、さまざまな問題があることを知ってほしいです。

2024年10月に実施した『早稲田ウィークリー読者モニターアンケート』では、「どちらとも思わない」の回答が最も多かった

はる:実は、私も大学に入るまではジェンダー・セクシュアリティについて深く考えたことがなくて、少しずつ学んでいく中で、「私の言動が気付かないうちに誰かを傷付けていたのかも」と、とても怖くなりました。でも、知らなかったことはどうすることもできない、大事なのはそれに気付いたときにどう変わるかだと思うんです。この記事を読んだ皆さんにも、「これからどうするか」ということを考えてもらえたらうれしいですね。

少しの言い換えを心掛けるだけで、グッと変わる!

もち「“彼氏”いるの?」を“恋人”や“パートナー”に言い換えることも、すぐにできる第1ステップですねあと、性的な話が苦手な人もいるので、話しても大丈夫かを相手に聞き、話すときは周囲に他の人がいないか確認することが「性的同意」の観点からも大事です。

はる:私はまだまだ未熟でふさわしい行動ができないことも多いのですが、「LGBTQ+の当事者がいたらこうしよう」「恋愛話が嫌な人がいたらやめよう」というような誰かの存在の仮定で行動することは、自分の行動の非を許す逃げ道を作ってしまうことになるので、その人たちがいる前提で行動しようと心掛けていますそうすることで、全員にとって心地良い環境につながるのかな、とも思います。

また、「こうしたらダメ」とはよく言われますが、良い例を示してくれる機会は少ないですよね。なので、ジェンダー・セクシュアリティの多様性を認めるドラマなどのテレビ番組を見て、どう行動をしたら良いのか考えたり、参考にしたりするところから始めるのもいい方法ですね!

もち:環境が整っていないから活動できないとか、息苦しさを感じたままやるしかないのは、とても悲しいことですよね。私は、「早稲田大学踊ってみたサークル」(登録サークル)の副幹事長として、サークルを運営する立場でした。練習の場では“誰でもトイレ”がある施設を予約する、合宿では希望者には個室・個別風呂を用意するなど、大部屋や大浴場を使いたくない、着替えを他人に見られたくない人の存在を前提として、サークルの運営側が選択肢を用意しておくことも大事だと思い、実践していました。

読者モニターの声にも「“誰でもトイレ”が見つからない」とありますね。例えば、公民館にはジェンダー分けされていないトイレが設置されていることが多いので、場所を探す際に確認してみることをお勧めします!

GSセンターの活用方法 図書貸し出し、個別相談、イベントまで!

渡辺:GSセンターでは、さまざまなサポートを行っていますよね。これからどういった活動をしていきたいですか?

はる:私はエンターテインメントに興味があるので、ドラマなどに絡めて、より多くの人がジェンダー・セクシュアリティについて考えるきっかけを作りたいです。また、戸山キャンパス学生会館(30号館)GSセンター本館にはたくさんの本があり、図書リストでどんな本が置かれているのか確認できます! 貸し出しもしているので気になるものがあれば、ぜひ気軽に来てほしいですね。

GSセンター本館には、ジェンダー・セクシュアリティに関する本はもちろん、漫画やDVDも充実している

もち:性感染症や避妊、性と生殖に関する健康と権利についてもっと相談しやすい環境を作りたくて、2024年4月には「早稲田大学でセクシュアルウェルネスを応援する」コンドームを制作して配布しました。あっという間になくなってしまったんですけど。今後も、こうしたプロジェクトを続けていきたいです。

写真左:「GSセンターが『性』に関連する精神的、社会的なウェルネスについて話せる場所である」と示しているコンドームの裏面
写真右:学生会館で300個を配ったところ、すぐになくなったそう

2024年10月に、「多様なジェンダー・セクシュアリティを包摂するサークル/部活動を考える会」を開催し、ジェンダー・セクシュアリティに興味がある人はもちろん、これから勉強したいと考えている人も参加してくれました。イベントでは、現在の課題やその課題に対して個人や幹部としてどのようなアクションを起こせるのかを検討し、それぞれのサークルの取り組みをお互いに紹介することで、今後に生かせる機会になりました。これから「アライサークルプロジェクト」として、ガイドブックを発行するなど複数のアプローチで、ジェンダー・セクシュアリティに興味がない人にも考えてもらう機会を作っていきたいと考えています!

GSセンター本館の様子。静かに読書をしたり休憩したりできるクワイエットスペース(左)と、学生スタッフや利用者と交流ができるコミュニティースペース(右)に分かれている

取材・文:吉田 けい
撮影:小野 奈那子

渡辺

GSセンターでは、サークルや部活動のダイバーシティ推進の端緒となるようなイベントを開催していて、多様性に関心がない人へのアプローチも考えられていることを知りました。LGBTQ+の当事者かもしれないという前提で目の前の相手と会話し、個人的にできるアクションから私も始めてみようと思います。GSセンターの学生スタッフや職員の方はとても話しやすく温かい雰囲気です。面白い本や漫画も借りられるそうなので、これからはフラッと立ち寄ってみます!

個別相談について

GSセンターでは、ジェンダーやセクシュアリティに関する疑問や違和感、心配事、現在や将来的なウェルネスなどの相談に、守秘義務を厳守し、専門の職員が対応しています。「サークルや部活動でこういう事態が起きた」「そのとき自分はどうすれば良かったのか」「これからどうすることで、この場をもっと改善できるのか」などについて話せます。詳細は、こちらから確認してください。

GSセンター 専門職員 向坂 あかね

「こんなレベルで相談しに行っても良いのかな」「ここで窓口は合っているのかな」と思ったら、GSセンターに一度来てみてください。もし他の相談先がより適している場合は、一度来てもらえさえすれば紹介することもできます。 個別相談では、誰にも見られずに受付ができる選択肢も用意しています。早稲田大学の学部・大学院・芸術学校・附属機関の学生と附属校の生徒は、個別相談を利用できます。

GSセンター

GSセンターは2拠点で運営しています。
【本館】戸山キャンパス 学生会館(30号館)1階103
【分室】早稲田キャンパス 10号館 213教室
【開室時間】曜日によって異なるため、Webサイトを確認してください。
【E-mail】[email protected]
【Webサイト】https://www.waseda.jp/inst/gscenter/
【X(旧Twitter)】@gs_waseda
【Instagram】@gscenter.waseda

「WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS 2024」開催中!

2024年11月25日(月)から12月6日(金)までの2週間、GSセンター主催の「WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS 2024」を開催します。GSセンターでは、アライ(Ally)とは「自らの特権を自覚した上で、その特権を進んでリソースとしてLGBTQ+とその関連コミュニティーの公正に向けた運動に活用し、これらの活動を支援する人」と認識しています。

本イベントは、早稲田大学に関わりのある一人一人のLGBTQ+の人が自身の力を認識できる場作りと、アライの存在の可視化を通して、性の在り方にかかわらず、誰もが過ごしやすい早稲田大学にすることを目的としています。イベントでは、キャンパス内のパレードから講義まで、さまざまなタイプの企画を実施予定。申し込みや詳細は、GSセンターのWebサイトを確認してください。

【パレードについて】
2024年は、「WASEDA QUEER PARADES OF REMEMBRANCE 追悼」をテーマに、以下の日時でパレードを行います。毎年100人以上が参加する人気のイベントです。当日の飛び入り参加も大歓迎!

所沢キャンパス 11月25日(月)12:35~12:50(集合場所:100号館守衛室前)
戸山キャンパス 11月27日(水)12:35~12:50(集合場所:33号館前)
西早稲田キャンパス 12月2日(月)12:35~12:50(集合場所:53号館前広場)
早稲田キャンパス 12月4日(水)12:35~12:50(集合場所:11号館と14号館の間)

【次回フォーカス予告】12月2日(月)公開「教育制度」

▼ALLY WEEKSの各企画詳細はこちら

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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