
1982年生まれ。2004年、早稲田大学理工学部卒業。2006年、フロリダ州立大学公共経営・政策大学院にて修士号取得。帰国後、環境コンサルティン グ会社、NPO法人を経て、現在は自身が立ち上げた、社会問題解決に向けた若者の協働プラットホーム「United Youth」を拠点に多岐にわたる活動を展開する。
「将来の夢は、排出ガスの出ない車を造って担任の先生に贈ることでした(笑)」。
社会問題の解決を目指す若者が集うプラットホーム「United Youth」の代表、福島 宏希さんは、照れながら小学校4年生時代の逸話を語ってくれた。10歳には珍しいエコ視点にあふれる夢だが、彼にとって環境問題は大きな関心事だった。
「きっかけは社会科で習った『環八雲(かんぱちくも)』。汚染された空気が上昇気流に乗って環状8号線上空に発生するのですが、それが5km離れた自宅からも確認できた。幼少期からぜんそくに悩まされていたので、これは人ごとではないと感じたんです」。
コンビニの環境改善を目指し
消費者の意識改革に尽力
高校卒業後、福島さんは早稲田大学理工学部環境資源工学科に進学。入学初日に学生環境NPO「環境ロドリゲス」に入会した。環境ロドリゲスでは、各自が関心に応じて環境問題の解決に取り組む。福島さんは「コンビニの環境改善を考える学生の会」を発足。コンビニエンスストアの負の部分に向き合おうとした。
多量の電力消費、食品添加物の乱用、食品や使い捨て容器の大量廃棄。コンビニエンスストア各社の環境報告書を確認すると、多様な問題点が見えてくる。その解決策をまとめ、コンビニエンスストア大手7社に提案した。ところが…。
「各社とも消費者への過剰配慮が足かせになって、本格的な環境活動に取り組めていませんでした。また、あるフランチャイズ店経営者のご家族からは『ごみの排出量を減らしたくても家庭ごみの持ち込みが多く、売り上げを削ってごみ処理費を捻出している』と悲痛な声も…。この問題を解決するには、消費者の意識改革が必要だと思い知らされました」。
この後、福島さんたちは『消費者のためのコンビニ環境学入門』という冊子を1年かけて制作。印刷した2,000部をほぼ全て配り、啓発活動に尽力した。
社会問題の解決に向けて
多様な若者が協働できる場を創造
大学卒業後、福島さんはフロリダ州立大学公共経営・政策大学院に留学。行政やNPOの管理職に必要なマネジメント技術を学ぶ環境に身を置き、環境政策と親和性の高い交通政策について学んだ。
日本に帰国し、社会人となった2007年。このころから思考に幅が出始める。
「社会問題には複合的な要因があり、その解決には分野を超えた協力が必要です。そこで、多様な若者が協働できるプラットホームをつくろうと考えました」。
こうして始めたのが北海道洞爺湖(とうやこ)サミットに向けたプロジェクト『Japan Youth G8(JYG8)』。環境、資源開発、医療などさまざまな分野で活動する若者と手を組み、各国のユースとの国際会議、政府関係者との議論、南北問題の解決を目指すキャンペーンなどを開催した。
サミット終了から3年、福島さんはJYG8の理念を引き継ぐ形で「United Youth」を設立。4年目を迎えた現在、団体の飛躍に向けて奔走中だ。
「最も力を入れているのは『若者議会』です。これは、全国の若者で討論し、そこでまとまった意見を政治の現場や、そのテーマに最も関係する人・団体に提言する取り組み。若者の声が政策決定の現場に届く環境づくりを目指しています」。
若者が社会のことを深く考え、積極的な発信や行動に出ることが当たり前の世の中にしたい。福島さんの目下の目標だ。そのためには環境整備に加え、若者自身の姿勢の変化も必要と考える。早大生にも望むことは同じだ。
「一人一人が身近なことを少しでも良くしようとすることの積み重ねが社会を作っていく。まずは、関心のあることについて深く考え、それをぜひ人に話してほしい。その姿勢が世の中を変える第一歩になると思います」。