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SPECIAL INTERVIEW 山北栄二郎さん

特集:総合知、世界へのまなざし

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Mon 10 Nov 25

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枠の外へと一歩踏み出し、開けてくる地平

山北栄二郎さん 株式会社JTB代表取締役 社長執行役員

旅行をはじめ、国境を超えたビジネスを展開するJTBグループ。同社は現在、「交流創造事業」を掲げ、ビジネスソリューションや教育、地域創生など、幅広いサービスを提供している。代表取締役を務める山北栄二郎さんは、第一文学部の卒業生だ。

「アフリカ大陸を旅立って以来、大移動を重ね進化してきた人類は、『ホモ・モビリタス』とも形容されます。移動そして交流は、人間の根源的な欲求なのでしょう。紛争や気候変動が深刻化する21世紀、交流は課題解決にも寄与します。美しい自然や文化遺産に感動した人は、それを破壊しようとは思わないはずです。人の心、社会、自然を豊かにする交流を創造するのが、JTBの使命です」

「交流」という言葉は、山北さんの人生観とも一致する。異文化理解や国際交流に関心を抱いていた山北さんは、大学時代に英文学を専攻。サークルは「英語部」に所属し、ディベートやスピーチに明け暮れた。

「基礎的な発音からオーラルコミュニケーションの技術、ディベートで必要な論理的思考を、徹底的に叩き込む日々でした。国際部で学ぶ外国人留学生と、よく交流していたのも覚えています。原点にあったのは、『異なる文化圏の人々と、意思疎通ができるようになりたい』という気持ちです。海外で経験を積むべく、就職活動では商社などを受けていたのですが、自分が目指していたのは、モノではなくヒトの交流。採用面接で、そんな思いを叶えられると直感したのが、JTBでした」

※旧国際部。2004年国際教養学部開設に伴い改廃。

山北さんが入社したのは1987年。円高により海外旅行ブームに火が付いた時期と重なり、1年目から世界中を飛び回った。

「社会人になるまで海外経験はなく、パスポートも持っていない状態。全てが刺激的でした。駐在の夢は40代になり叶えたのですが、最初の赴任地だったハンガリーは、社会主義国時代の影響が残り、西側諸国とは価値観が大きく異なる国。サービスに対する考えの違いから、定期券一つ購入するのに一苦労の状態で、現地スタッフが心を開いてくれるのにも半年以上かかりました」

これまで60以上の国・地域を訪れた経験は、企業のトップになった今、存分に生かされているという。

「多様な考えを受け入れなければ、新たなアイデアを生み出せず、組織は必ず行き詰まります。それは個人も同様で、文化的な教養、歴史的視点に立った時代の感覚、数値や論理に基づく思考力が、いざ問題を解決する際に役立ったりするものです。ですから大学で学んだ文学やアートも、私の糧になっています。学生の皆さんに大切にしてほしいのは、枠の外へと一歩踏み出すことです。属性や立場にとらわれず、好奇心のままに、いろいろな体験をしてください」

PROFILE

1963年福岡県生まれ。1987年第一文学部卒業後、日本交通公社に入社。本社経営企画室などを経て、旅行事業本部グローバル戦略担当部長、JTB欧州代表、常務執行役員などを歴任。ツムラーレ・コーポレーション社長、トラベルプラザ・ヨーロッパ社長、クオニイ・トラベル・インベストメント会長など経営のトップを務め、海外戦略推進に携わる。2020年6月より株式会社JTB代表取締役 社長執行役員。