アン
文学部
ICC学生スタッフリーダー
2021年11月~2024年1月在籍

(photo by author)
ICCに入ったきっかけ
絶対に少年漫画通りに大学生活を送ろうと誓った私は、まさか『四畳半神話大系(小説)』のような1年半を過ごしました。最初の1年はコロナの関係でずっと中国に滞在してオンラインで授業を受けて、そして2年生の春にようやく大学に入ることができたが、日本人の友人ほぼゼロ、語学力低下、情熱と野望を全部忘れたニートになってしまいました。
悟ったのは7月のこと。
友人にICCラウンジまで連れてもらい、そこで働いている学生スタッフたちの姿を見てショックを受けました。ICCのイベントに参加したことが学生スタッフになったきっかけという方もいますが、正直なところ、私は学生スタッフになる前に、ICCのイベントに一つも参加せず、ただ単に「残り2年の大学生活でとりあえず何かをやりたい、達成したい」という曖昧な感覚で、ICCの仕事に心が動きました。
空間と時間の枠を超えた「異文化交流」体験
芸術、歴史と文化にそもそも関心があるため、それらの魅力をより多くの人に伝えたくて、2年間で担当したイベントはほとんどそれらのテーマに関わっています。
中国天津の学生たちと話そう ICC オンライン交流イベント with 河北工業大学
芸術作品を通じて異文化交流をしよう ICC二日間アートツアー with 東京国立近代美術館
村上春樹ライブラリーで異文化交流!ICC Book Night
早稲田歴史探検隊員募集! ICC Field Trip/Japanese Culture Event
ある国や地域の文化を食べ物、講演、テーマ交流などの様々な形で体験するカントリーフェスタなどはICCで従来人気の高いイベントで、毎学期恒例に開催されていましたが、歴史に関するイベントは実際それほど多くなかったことに気付きました。 最後のイベントとして、ぜひ早稲田界隈の歴史と魅力を皆さんに伝えたく、古来より伝わる歴史遺産が数々残されている早稲田周辺を探訪する「歴史探検隊」を企画しました。
しかし、このテーマはあまりに抽象的で、如何に普通の授業と区別付けて開催していくかが難しいところでした。そこで、参加者がチームになって一緒にミッションをクリアするというゲームの形を考え出しました。ただし、ミッションを考えること自体も大変でした。古跡を尋ねるだけではなく、そのものはなぜその地域にあるのか、そのものは一体「何」なのか、すなわち歴史的遺跡の背後に隠された信仰、政治、地理、風俗を理解することこそこのイベントの神髄で、ぜひ参加者に実感させたいと考えていました。それを解決するために、2ヶ月かけて早稲田周辺の遺構をすべて探訪、テーマごとに3コース6のルートをデザインしました。

「早稲田歴史探検隊」当日の風景(ICC Photo)
当日は探検隊っぽい雰囲気を作り出して参加者により良い体験を提供できるように、江戸時代末期の朱引を網羅した復元古地図を一部切り取ったり、古い便覧を真似してガイドブックを作ったりと、様々な工夫をしました。その結果、好評を多くいただき、更には「ほかのルートも歩いてみたい!」という希望でイベントの後ICCラウンジまで小冊子を取りに来た参加者もいました。
異文化は決して空間上の離れた地域にだけ存在するのでなく、同じ日本の場合、中世と近代、そして現在に生きている人々の考えも大きく異なる為、異文化は時間上にも存在するのではないでしょうか。そのような意味でも、歴史に関するイベントを開催できてよかったなと今でも感じています。
「もの」から「人」へ
2年間、個人イベントの選定、準備と開催とともに進めていたのは、私の「異文化交流」に対する理解です。本、芸術作品、遺跡、音楽、食べ物などのオブジェとして具象的に存在する、五感ですく確認できるものはもちろん異文化の一表現ですが、振る舞い、話し方、考えというような抽象的で捉え難く、人と実際に話さないと実感できないことも異文化の重要な一部分だと思います。
また、異文化は離れた空間、時間上に存在すると言いましたが、実際、同じ地域で生まれ育った人であっても、個人的な体験やこれまでの経験によって物事に対する考え方が異なってくる、というのがICCでの経験を通じて理解できたことです。私が担当したブックナイトやアートツアーのイベントは「もの」を媒介にして、人それぞれの考え方を引き出した好例です。もちろん、例えば一つの作品に相反する意見が出た時もありますが、それは個人の経験によることで、それこそ異文化は「個」と「個」の間にあると実感することができました。

Book Night の様子(ICC photo)

Art Talk の様子(ICC photo)
最後に
抽象的な概念ばっかり書いてしまいましたが、「人」という言葉を書いた際、実は私の頭に浮かび上がっていたのはここまでずっと支えてくれていたフルタイムスタッフの職員と同じ学生スタッフたちでした。多様な背景や個性を持つ優秀で素敵な学生スタッフの仲間たち、どんな困難なことがあっても傍で支援してくれる職員の皆さん。ICCのラウンジは広くないですが、まさにICCでの皆様との交流を通じて、私の世界が広がりました。

集合写真(photo by author)