10数年前にグアテマラを一人で旅していたときに、見ず知らずの欧米の白人系男性6,7名の間に東洋人女性が一人だけ、という状況におかれたことがあります。差別されたわけでも何か言われたわけでもありませんが、互いに一切会話がないという気まずい雰囲気のなかで、マイノリティであることはこんな感じかもしれないと、非常に居心地が悪かったことを憶えています。あまりにもささやかで、しかも数時間だけのことでしたが、私のなかでは強烈な体験でした。このような体験をされた方は、多いのではないでしょうか。
早稲田大学では国籍、エスニシティ、ジェンダー等々、多様な人びとが集い、ともにキャンパスライフを送っています。他の人たちと何かが異なっているという理由で、もし誰かが「自分が受け入れられていない」「居場所がいない」と感じているならば、とても残念なことです。幸い早稲田には、他人を思いやり、無意識下に封じ込められたさまざまなことに気付き、それを自分自身の問題としてよりよい環境をつくるために行動する多くの学生さんたちがいます。一人ひとりが違うことを当たり前のこととして受け止め、互いに尊重し、コミュニケーションをとっていくことは、早稲田大学を構成する私たちにとってさほど難しくないようにも思います。
畑 惠子(早稲田大学理事・社会科学総合学術院教員)