私とLGBT当事者との最初の出会いは、30年前に遡る。
留学先の大学寮でルームメートとして紹介されたNY出身のAliceがレズビアンであると気付くのに、それほどの時間を要さなかった。部屋には地元の彼女とのツーショット写真が飾られ、帰省の度に嬉しそうに話をしてくれた。
超保守主義が台頭した80年代。米国にあっても同性愛者に対する世間の風当たりは相当強かったはずである。にもかかわらず、人望も厚くカレッジのリーダー的な存在だったAliceを(少なくとも表面上は)差別する人はおらず、「LGBTを一つの個性として受け入れる空気」があった。
日本でもようやくLGBTムーブメントが本格化し始めている。ただ、「LGBTを一つの個性として受け入れる空気」を感じるにはほど遠いのが現状である。国境であれ、ジェンダーであれ、障がいの有無であれ、グラデーションになっているところに便宜上の境界線を引くことで、弾きだされてしまう人が必ずいる。
あらゆる人がマイノリティにもマジョリティにもなり得る―そう意識するだけで、誰もが少しずつ生きやすくなるのだと思う。
大学職員 尾内一美