Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

脱・からっぽ大学生(清水瞳)

清水 瞳

早稲田大学商学部4年

ICC学生スタッフリーダー在職期間
2010年12月〜2012年8月

 

脱・からっぽ大学生

1)はじめに

いつかは書くのだろうとぼんやり思っていたSSL(学生スタッフリーダー)レポートを、SSLを卒業するにあたって今、実際に自分が書いているのはとても不思議な気持ちです。

実はこのSSLレポートを、私もICCに入ったばかりのころに読んでいます。新入りのころ読んだ先輩方のレポート群の中に加えて頂き、更にそれをどなたかに見られるのかと思うと、気恥ずかしい事この上ないのですが、大学生活の中で間違いなく最も濃密だった一年半を、私がSSLとしてどのように過ごし、何を考えていたのかを書いてみたいと思います。

 

2)SSLになって

SSLになったきっかけはいくつかあります。偶然見つけたポスターを頼りにICCのイベントに参加するようになり、その後サポーターとしてもICCに関わるようになった私は、オフィスの中で生き生きと働いていたSSLに興味を持つようになりました。また、当時国際交流サークルに入っていたこともあり、「国際交流」と名のつくものにも多少免疫が出来ていました(ちなみに高校までは、「外国」といえば「ザック・エフロンかぁ・・・アメリカいいな!」位しか思いつかないレベルです)。

そして何より、ICCが設立当初にミュージカル上演企画を行っていたことを知り、私は中高の部活動でミュージカルをやっていたので、自分もSSLになってミュージカル上演を企画したい!と意気込んでいたのです。

そのような経緯からSSLに応募したのですが、始めから大きな壁に行き当たってしまいます。

まず、業務内容の広範さに呆然としました。SSLはイベントの司会や新入生向けのプレゼンテーション、イベントの当日運営などといった華々しい仕事もさせていただいたりしますが、実際の業務の大半はイベントの仕込みと事務作業です。そしてこの事務作業が曲者でした。コピー取り一つとってみても、裏紙コピー、ホチキス止め印刷、写真印刷・・・用途に合わせてバリエーションがあります。たかがコピーでさえ戸惑ったのですから、その他の膨大な事務作業に関しては言わずもがなです。たくさんの失敗を重ねながら、とにかく先輩の後ろをついて回りました。

しかし一番苦しかったのは、事務作業にもなんとか慣れてきたころ「自分は視野が狭く、何にも興味がないからっぽな人間なんだ・・・」と思ってしまったことです。ICCは「学内の異文化交流および異文化理解を促進する大学機関」です。全ての企画はこの骨子に沿った形で実施されていますし、SSLはそれぞれの問題意識や想いをイベントに乗せようと業務に励みます。SSLの中には、帰国子女や海外留学を経験した学生が多くいますし、もちろん早稲田に留学している外国人学生もいます。彼らは海外での経験を通して、個々の中に何らかの自分の問題意識や想いを抱えています。またそういった経験のないSSLもアンテナを広く張って、何かしらを深く考えている人が多く、ただ「楽しいイベントがやりたい!ミュージカルとか!!」といった感覚だった私は非常にショックを受けました。

他のSSLが例えば世界の貧困問題や人種差別といった問題も真摯に考え、企画に起こしていくのを横目に、私は正直に言えば劣等感を感じていたのだと思います。どんなに頑張って考えてみても、そういったトピックに対して結局はそんなに深い興味を持てずに、ただ「それは解決すべき問題だねー」と言うばかりで何かをする訳でもなく、いつしか「他人事」として忘れてしまう自分を恥ずかしいと思いました。

SSLとして、いわゆる“世界で起こる問題”に自分の問題意識や想いがないことに後ろめたさを感じながら、かといってオフィスワークも満足にこなせない自分が、“学生スタッフリーダー”として、時には他の学生の前に立つ状況が続いたこの時期は、少し厳しい時期だったように感じています。

 

3)交流キャンプ

SSLになって数ヶ月は「なぜ自分が世界で起こる問題を、自分の事として考えられないのか。自分は視界が狭く、何にも興味がないのか」と考え、悩んでいた訳ですが、その内に、海外にそんなに行ったこともなく、外国人の友人ができたのもつい最近な私が、知らない国の知らない人のことにそもそも熱くなれるはずがない、くよくよ悩んでいても仕方がないと思うようになりました。

しかし、「知らない国の知らない人」には反応が悪い自分でも、「友達」のこととなれば日本海外関係なく、熱くなります。結局、私のように異文化を「他人事」と考える人間も、その異文化を持つ人は「友人」であり、何か「友人」が困っているのであれば、その原因を真摯に考えるようになると思いました。つまるところ「異文化交流」は「世界のどこかで起こった他人事」を如何に、「そこで、私の友人に起こったこと」に相対化できるかに他ならないのだと、そう思うことにしたのです。

ICCが異文化理解を促進するためには、そういった相対化プロセスを踏む機会が少ない自分のような学生が、一歩踏み出して外の世界を知るきっかけ作りも必要だと考えるようになりました。そこで出した答えの一つが、泊まりがけで出かける交流キャンプ企画です。少し安直に感じられるかもしれませんが、しかしこれはなかなか良い案であると思っています。友人を作るには、ある程度の時間を共有し、同じ体験をすることがとても有効なのは言うまでもありませんし、実際に担当で入ったどのキャンプ企画でも、プログラムを通して自然とその後も続く友人関係ができているように思います。

特に印象に残っているのは、2011年秋に行った「ノーボーダー・アスレチック・キャンプ」です。これは初めて自分が担当したキャンプ企画で、以前ICCで行われていた「無国籍キャンプ」という企画での「国籍や学年などのバックグラウンドを全て伏せる」というノーボーダー・ルールを引き継ぎ、そのルールの下で、アスレチックパークを併設したキャンプ場に宿泊するプログラムでした。天候不良でメインのアスレチックができないなどのアクシデントに見舞われたりもしましたが、バックグラウンドを伏せているからこそ、年齢や学年などを気にせずフラットな状態で、短期間に親しくなることができました。プログラム終了後、素性を明かし合った後も同じような形で友人関係が続いているのを本当にうれしく感じています。

 

4)日本観光杯

キャンプ企画やその他の多様な業務に関わる中で、自分が知らなかった世界をたくさん覗かせていただく機会を持つようになりました。書籍やインターネットでは決して得られない異文化の温度や質感のようなものを私は友人たちから学び、ICCに入った頃に感じていた後ろめたさは感じなくなっていました。もちろん友人たちを通して、異文化への関心を深めることができたのはとても嬉しかったですが、むしろ次第に、私は母国である日本にも興味を持つようになりました。国際交流を通して知った、「留学生の考える日本」が自分の母国のイメージからかけ離れていること、かといって日本はどんな国ですか?と聞かれても全く分からないこと・・・確かな形での「日本」を知ることは難しそうですし、そもそもないのかもしれません。それでも今まで当たり前すぎて意識することすらなかった日本という国が、一体自分にとってどんな国で、私の友人たちにはどんな「異文化」として映るのか興味が出てきたのです。

そこでICCで取り組む最後の企画としてクリエイティブ・グループ・コンペ「日本観光杯」を担当させていただきました。日本人学生、外国人学生が混合で任意に構成された1チーム4名、計12チームが日本のインバウンド・ツーリズムをテーマにプレゼンテーションを競い合うコンペ形式のプロジェクトです。株式会社電通ソーシャル・ソリューション局の社員の方にご審査いただき、コンペ本選当日は訪日観光についての基調講演をいただきました。初めて担当した中期プロジェクトでしたが、参加学生が真剣に課題に取り組むのをスタッフとしてサポートしながら、私自身も訪日観光を通して、日本について考えることができました。

また、企業の第一線で御活躍しておられる電通の方々にご協力いただき、打ち合わせなどで本社にも行かせていただいたりしたことは、一学生として非常にわくわくする体験でしたし、勉強をさせていただくことができました。

 

5)終わりに

少し冗長になってしまいましたが、私のICCでの活動は上記の通りです。勤務するという形ではありましたが、それ以上に学ぶ機会が多かったSSL生活であったと深く深く感じています。

ICCは私に事務作業のイロハを叩き込んでくれました。コピー取りは完璧・・・たまにうっかり間違えたりしますが、wordとExcelも入った頃より遥かに使えるようになったはずです。Power pointだって人並みに使えます(恐らく)。

そしてたくさんの友人をつくるきっかけをくれました。その友人たちは、私が知らなかった様々な文化、考え方、見たことも聞いたこともないことを教えてくれました。私の世界はここにいた1年半で文字通り広がったように思います。

私は、明後日から上海に留学します。ICCで活動する前は、全く選択肢に入っていなかった時間の使い方です。この先私が関わることができる世界をどこまで広げられるのかは分かりませんが、精一杯がんばってこようと思います。辛くて逃げ出したくなったときは、ICCで見つけた自分の想いをもう一回思い出してみます。それでもだめだったら蟹を食べます。

私は、自分の視界を広げてくれたICCが大好きです。ここで働けたことは、本当に幸運で幸せだったと思います。本当にありがとうございました。

 

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