金井一陽
早稲田大学商学部3年
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2010年6月~2011年12月
自分を知ること
意外にも、SSLとして働いた1年半は、ひたすら自分自身との対話だった。
ICCはSSL個人のバックグラウンドや興味・関心、つまり「その人」自身が最も活きる、活かされる環境だと思う。一緒に働くSSLのメンバーは皆個性豊かで、言語や文化、バックグラウンドや価値観もさまざま。その多様性こそがICCの一つの大きな特徴である。私がSSLに応募したのは、そこでいきいきと働く先輩SSLたちの姿に魅力を感じ、この人たちと一緒に働きたい!と思ったことがきっかけだった。
ところがいざICCで働き始めてみると、それぞれが「持ち味」みたいなものをもち、それを活かして積極的にICCにコミットする優秀な先輩SSLたちにただただ圧倒されてしまった。その中で、あまりにも平凡で、これといった「味」を持たない自分が埋もれていくような気さえもした。
それは次第に、「私はSSLとして何ができるだろう」という自分への問いかけへとつながっていった。せっかく貴重な機会をいただいたのだから、何らかの形でICCに貢献がしたかった。いや貢献しなくては、私がここにいる意味がない。いつしかそう思うようになってから私に必要だと気づいたのは、何よりもまず自分を知ることだった。それは知ったつもりでいた自分にもう一度向き合うことや、時に未熟な自分の一面を素直に受け入れることであり、なかなかすんなりとできることではなかった。しかし今振り返って思うのは、実はそのヒントは、SSLとして仕事をする中にたくさん散らばっていた、ということ。
「SSLってどんな仕事をしているの?」とよく聞かれるけれど、オフィスでのカウンター対応、メール・電話対応から、ポスターの発送作業、ミーティングでのファシリテーション、イベントの企画・運営、司会、プレゼンテーションまで、一言では言い表せない。一見この幅広いタスクをすべてこなすことはかなりチャレンジングなように思えたが、実はその過程で、自分は何が得意か・得意でないかを徐々に学んでいくことができた。私の場合は、ポスター制作や掲示物の作成など、デザイン系のタスクには時間を忘れるほど積極的に取り組めるのに対して、イベントの広報文やブログの執筆などの文章作成には、とてつもないほど長い時間がかかっていた。後者は常に課題だったけれども、どうやら私には論理的なことよりも、感覚的なことの方が向いているらしい、という自分の一面を再確認することになった。
また、SSL業務の中核をなす「イベント企画」においては、価値観や背景、文化などあらゆる自分の要素についてもう一度原点に戻り考えをめぐらせてみることが、イベントのアイデアに深みを持たせてくれた。例えば、私は当初自分のことを「留学経験のない、日本で生まれ育った典型的なLS(ローカル・スチューデント)」だと考えていた。ICCの海外経験豊富なスタッフに囲まれるときには、たまにそれがコンプレックスのようにも感じたが、一時イベント企画に行き詰ったときに、これについてもっと踏み込んで考えたことで、発想転換ができた。私と似たようなバックグラウンドの学生って、早稲田にはたくさんいるんじゃないか? むしろそちらがマジョリティではないか? こんな私こそが、日本にいながらにして、国際交流がしたい、語学を身につけたい、そう思う学生たちに共感しないで、誰が共感するんだろう!と。以来、この気づきは私の企画したイベントのほとんどに反映され、自分なりのSSLとしての役割に意味をもたせてくれた。コンプレックスが一つのアイデンティティになりうることも実感した。
結局SSLになるまで私は、「わざわざ」自分と向き合うことを避けていたのかもしれない。ICCでSSLとして働きながら、いろんな角度から自分を見つめる機会に恵まれ、そうして見えたあらゆる自分の側面が、考えようによっては個性となり、そこに強みを見出すことができるのだと気づくことができた。それは徐々に、自分への自信にもつながっていった。「私はSSLとしてICCに何が貢献できるか」という問いを念頭に置きながら働くことがまわりまわってモチベーションになると考えると、SSLとして働くなかで得られる充実感や感じるやりがいも一層大きくなった。
ここまで書いてきたことは、誰もが経験するようなありきたりのことだと思うけれど、私はあえてこれを強調したいと思う。ICCで学べるのはリーダーシップや異文化コミュニケーション、ビジネスマナー、語学だけではない。「意外にも」自分をあらためて見つめなおすチャンスがある、というのもSSLとして働く魅力の一つではないだろうか。思いもしないところで才能を発揮したり、意外な弱点を発見したり。それは思い描いていた自己像を再確認することや、気付かなかった自分の一面を見つけることにもつながり、新しい自分への一歩を踏み出すきっかけになる―ICCは、そんな可能性を秘めた場所だと思う。
この他にもICCで得られた数え切れないほど多くのことは、SSLを卒業した今ICCから距離を置けば置くほど、より実感を伴って感じられる…それがちょっと寂しくもあり、嬉しくもある、そんな気持ちで書き始めたこのレポートが、普段あまりシェアする機会のない一SSLのありのままの心のうちをお伝えすることができていればと思う。
最後に、これまでお世話になったフルタイムスタッフの方々とSSLのみなさん、そしてICCのイベントで関わったすべてのみなさんに感謝の気持ちを伝えるとともに、これからもICCが早大生の可能性を無限大に引き出すような、そして早稲田の多文化共生キャンパスの実現を牽引するような存在であり続けてほしいと心から願っている。
これから一年間のイタリア留学に旅立つが、留学先でもICCで積んだ経験を活かしてさらに成長し、還元できる何かを携えて戻ってこられたらと思う。