早めに情報を集めて、自分にとって大事な軸を見定める
取材にご協力頂いた方:
ニトリホールディングス 金 ガラム (Kim Garam)さん
2013年人間科学部卒業
学業にアルバイト、どちらも全力で取り組む多忙な日々
アニメや漫画など日本のサブカルチャーが好きで、韓国の高校では日本語学科に所属し、日本語や日本の文化を学んでいました。日本に住んでいる親戚がおり、長期休みの度に遊びに行っていたこともあって、せっかく学んだ日本語をもっと活かせたらと、早稲田大学に入学。自分が興味を持てることを探そうと、文系・理系の垣根を超えて勉強できる人間科学部を選び、とにかく幅広く授業を受けていました。当時、人間科学部は他の学部に比べ留学生の数が少ないイメージでしたが、その分結びつきが強く、特に韓国から来ている学生はあまりいなかったので、その頃の友人とは今でも連絡を取り合うほど親しくしています。
韓国にいた頃から日本語の単語や文法には自信があったのですが、元々内向的な性格なので、最初のうちは自分の考えていることをうまく伝えられず、モヤモヤしたことも少なくありませんでした。さらに、親戚の家に住まわせてもらっていたものの、学費や生活費は自分で稼ぐ必要があったので、奨学金をもらいながら、アルバイトをして過ごす忙しい日々を送っていました。最初は日本語の勉強のためコンビニで働き、自信がついてくると歯科助手や翻訳の仕事などをしました。日本語の練習になってよい経験だったのですが、やはり奨学金をもらい続けるための勉強と両立することが難しく、今振り返るとかなりがむしゃらに頑張っていたなと思います。
業界で絞るのではなく、理想の働き方やキャリアを求めてエントリー
韓国では4年生の中盤ごろから就職活動を始めるのが一般的なので、日本ではかなり早くから始まることに驚きました。また、周りの留学生に日本で就職する人が思ったより少なく、気づいた時にはすっかり遅れをとっていました。焦って3年生の冬から企業説明会や大学のキャリアセンターなどで情報収集を始めましたが、性格上、「多くの情報に触れてから自分の興味関心を見つけたい」という気持ちがあり、かなり時間がかかりました。皆さんにはぜひ早めに動き始めることをおすすめしたいです。留学生は、日本人の学生に比べ、情報を得られるルートが限られています。その分、SNSやインターネットを使って、模擬面接やSPI対策を教えてくれる団体などを見つけ、積極的に情報を取りに行く姿勢も大事になってくるでしょう。当時の私は、Facebookを使って就活仲間を見つけたり、面接の練習をしてくれる人を探したりしていました。
情報収集を続ける中で、私は「こんな仕事もやってみたい」「あんな仕事も楽しそう」と思ってしまい、業界や業種で絞るのが苦手だと気づきました。しかし、入社後の働き方や、企業の姿勢については自分の理想が見えてきました。一つ目は、海外事業を行っているかどうか。英語や韓国語を活かして働きたいと考えたからです。二つ目は、自分もお世話になっていた奨学金活動をしている企業かどうか。奨学金がないと、私は大学に通い続けることができませんでした。そういったCSR活動をしている企業で働き、次の世代への支援や、恩返しができたらと思ったからです。三つ目は、ジョブローテーションを積極的に行っているかどうか。自分の研究内容が仕事に直結する職種のみを見ていた訳ではないため、入社後のキャリアアップのイメージがつきにくいと感じていました。さまざまな仕事を体験できる方が、自分にあったものや、やりたい仕事に出会えるかも、と考え、こちらも外せない要素でした。
ニトリを受けるきっかけは、会社が行っていた奨学金です。奨学金を受けるために情報を集める中で、海外事業も行っている素敵な会社だなと思っていました。たまたま自分が就活の際に軸にしていた3つに当てはまっている企業だと気づき、日本人の学生たちと同じ枠でエントリー。ESとテスト、複数回の面接を経て、無事内定をいただき、11年働いています。就活の決め手となったのは、やはり自分の3つの軸なのですが、特に「配転教育」というニトリの人材育成制度が、自分に合っていると感じたのが大きかったです。研修制度が充実していたり、半期に一度異動希望を提出できたり、面談などで今後のキャリアについて気軽に相談できる環境にも魅力を感じ、入社を決めました。
「留学生」として扱われない場では、自分の決意が大事になってくる
ジョブローテーションができる会社、という基準で入社したものの、やはり最初に店舗で働くというのは、内向的な自分には大変でした。特に、留学生でいた頃とは違い、店舗にやってくるお客さんにとって、私が韓国人であることは全く関係のないことです。日本語が母語でなくても、他の日本人スタッフと同じフィールドに立って働くというのは辛いこともありましたが、逆に「外国人だから」と与えられる仕事を制限されることも全くありませんでした。特別扱いされない、というのは自分にとって心地よく、だからこそ「やってみたい!」と何でも手を挙げることができたのだと思います。店舗で店長を務めた後、プロダクトに対する興味が湧いてきたので、バイヤー業務に希望を出したところ、タイミングも良かったのか、すぐにお手伝いをさせてもらえる機会がありました。毎日が充実していてすごく楽しかったので、現在は商品部で在庫管理の業務を行っていますが、いつかバイヤーとして働き、韓国に出向して、今流行している韓国インテリアのテイストを反映したような商品や売場を作れたらいいなと考えています。
入社当時は外国籍の社員が少なかったですが、徐々に増えてきました。後輩の話を聞くと、今ではかなり多く、情報交換も活発に行っているようで、とても羨ましいです。ニトリは海外の文化に対するリスペクトがあるのも、とてもいいなと思います。一度韓国出店に際するタスクフォースにアサインされた際には、外国籍の社員が一挙に集まって、文化交流をするなどとても刺激になりました。
後輩へのメッセージ
今日本で就職したいなと考えている学生さんには、「なぜ日本で働きたいのか?」をよく考えてほしいと思います。社会に出ると、周りの日本人と同じレベルを求められ、ハードルもどんどん上がっていきます。慣れるまでは頑張るしかないですが、その際に、日本で働きたい理由がしっかり持てていれば、辛くても努力できると思います。また、日本で働きたい理由が固まったら、すぐに動き出すことがとても重要です。私は正しく丁寧な日本語を使わなければならない採用面接がとても苦手で、友人とは流暢に喋れても、面接の場では思ったことが言葉にできない場面をたくさん経験しました。自分の声を録音したり、鏡の前で表情の練習をしたり、模擬面接を多く受けることで、徐々に慣れていき、最後は自分の想いを自分の言葉で伝えられるようになりました。とにかく早く動き出して、情報を集め、苦手をつぶしていくことが大事だと思います。今はやりたいことが見つからなくても、会社でさまざまなことを経験するうちに見えてくることもあるので、楽しんで働いてもらえたらと思います。