“好き”を仕事にし、自分が求められる喜びを実感
株式会社セガ
梁可(Liang Ke)さん 2022年日本語教育研究科修了
アニメに惹かれて日本語を習得
中国の広西出身の私は、上海理工大学で英語を専攻した後、2018年9月に日本へ留学。日本語教育の研究生として上智大学に1年間在籍し、その後日本語への理解を深めようと、早稲田の日本語教育研究科に進学しました。在学中は、日本語の言語学とともに、日本語を教えるテクニック、日本語学習者のバックグラウンドや世界各国の日本語教育事情、異文化コミュニケーションのノウハウなどを学びました。
大学院ではアニメーション同好会に入るほど、子どもの頃から日本のアニメやゲームが大好きだったので、作品を字幕付きで見ているうちに自然と日本語を覚えていました。自分のように独学で日本語を学ぶ人を助けたいという思いから、研究科の実践科目として日本の小学校における児童への日本語指導にも参加。楽しみながら語学を習得できるように、授業にゲームを取り入れてわかりやすくするなど、工夫しました。
個性や能力を活かせる職場かを見極めるために
大学院修了後は日本のエンターテインメント業界で働きたいと考えており、日本の新卒採用というシステムは非常にありがたかったです。欧米の場合、自分の専攻と全く関係ない職に就くのは難しいのですが、日本は新卒採用のおかげで、特に文系には、専攻にとらわれずに働くチャンスがあるからです。
企業を選ぶときに大切にしていたのは、「外国人だからと業務内容を制約されず、才能を活かせる職に就くことができるか」です。人事担当者と接する際には、どのくらい外国人を採用し、どのような職に就いているのか、どのようなキャリアがあるのかなどを質問しました。現在働いているセガでは、採用面接の途中に、人事担当者が中国籍の先輩社員を紹介して面談する機会を設けてくれました。別の会社にも内定をもらいましたが、面接を通して社員の皆さんの雰囲気が良く、自分が求められているという自信を与えてくれたことが決め手になり、最終的にセガを選びました。
就活では、最初に中国出身の先輩に教えてもらった、アメリカの就職イベント「ボストンキャリアフォーラム」に参加。コロナ禍によりオンライン開催だったので、実際にボストンまでは行かずに完結しました。春の一般採用ではなく早期採用だったので、1月には内定をいただいた形です。
就活中に苦労したのはエントリーシートの作成です。各会社のバックグラウンドや特色、応募する職種に合わせてアピールポイントを書き分けました。例えば総合職なら、学生時代のエピソードとして、自分のリーダーシップを発揮できたことを強調し、クリエイターへの応募なら、クリエイティブに関する思いを中心に書きました。また、玉手箱やSPIといった試験に向けては、参考書をたくさん買って勉強。修士論文執筆のかたわら、勉強に時間を割くのは大変だったのを覚えています。
面接の練習は日本人の友人に付き合ってもらいました。オンライン面接だったので、注意したのはカメラ目線など細かい点です。面接ではゲームに対する興味や知識を問われましたが、オタクだったので語り始めると熱くなりました(笑)。
大学院時代、期末発表をする梁さん
自分のアイデアを届けられる達成感
就職して1年目はプロダクトマネジメントを担当。主に英語でヨーロッパ支社とのやり取りを行いました。具体的にはヨーロッパで制作されたゲームを日本やアジアでも販売する際、例えば中国の旧正月イベントなど、マーケットに合わせた施策を考えることもありました。自分のアイデアが実現して、プレイヤーの皆さまに届けられることは達成感につながります。現在は日本向けに、外部メーカーの開発したゲームを販売する、新しい仕事に挑戦しているところです。
学生時代は、アニメやゲーム業界に入ってシナリオライターなどのクリエイターになりたいという気持ちもありました。一方で、未経験のまま専門職になり、企画が通らなかったりした場合、心が折れてしまうかもしれないという不安もあり、就活のときから職種選択にはいろいろ悩みました。結果として総合職として入社しましたが、仕事はチャレンジやクリエイティビティに満ち溢れており、知識や経験も得られているため、やりがいを感じます。
多様な日本語能力を鍛えるために
留学生には、まずは「本当に日本で就職したいのか」、自分の気持ちを確かめるところから始めてほしいです。自分の中でやりたいことが定まっていないと、具体的にキャリアを描くことができず、迷いは志望企業にも伝わってしまうため、続けるのが辛くなると思います。その上で100%日本で働きたいと思ったら、絶対に諦めないでほしいですね。しっかりと準備をし、万全の状態で就職活動に臨めば、必ず上手くいくはずです。
また、当たり前かもしれませんが、就職活動ではどの段階でも、日本語能力が非常に大切だと感じました。「エントリーシートを書く能力」、「面接の時に質問に答える能力」、「質問する能力」などに加え、ビジネスでは「問題解決能力」、「正しく相手の意図を理解する語学力」も求められます。
もし日本語に自信がなかったら、ぜひサークルなどに入って、日本人の友人を作ってみてください。私も日本に来たばかりの頃は日本語がそんなにうまくなかったのですが、友人と毎日のようにオンラインゲームで遊んでいたら、言葉を覚えていくことができ、とても助けられました。日常の中で身につけた語学力は、その先の人生で必ず役立つと思います。