企業のカルチャーが自分にあっているかどうかを見極めるためには
就職活動を始める際、無数にある将来の選択肢の中から自分に合った企業を見つけ出すことに苦労する学生も多いと思われます。今回は、キャリアセンターの学生キャリアボランティア（SCV※）の村上愛佳さん（文学部1年）が、日本最大級のインターネット商店街『くらしのマーケット』を運営するスタートアップ企業「みんなのマーケット株式会社」を訪問。代表取締役の浜野さんとマーケティング本部の鈴木さんにスタートアップ企業の魅力や自分に合った会社選びのポイントなどについてお話を伺いました。鈴木さんは早稲田大学法学部を卒業後、新卒で入社した大手企業で８年間勤め、「みんなのマーケット株式会社」へと転職しました。大企業とスタートアップ企業、両方を経験したからこそ見えてきたものもあるようです。
※SCV: Student Career Volunteerの略。早稲田大学キャリアセンターに所属し、キャリアイベントの企画や情報発信などを担う学生ボランティア。
インタビューは2022年3月に実施しました。
みんなのマーケット株式会社
代表取締役 浜野 勇介さん
マーケティング本部 鈴木 寛乃さん（2011年法学部卒）
インタビュアー
SCV 村上 愛佳（むらかみ あいか、文学部1年）※学年はインタビュー当時
（左から）SCV村上さん、卒業生鈴木さん、CEO浜野さん（本社オフィスにて、東京都渋谷区）
——御社の概要についてお聞かせください。
事前にSCVメンバーで質問項目を練って、インタビューに臨みました。（村上さん）
浜野さん 2011年に創業された「みんなのマーケット株式会社」は、現在120名以上の社員を抱えるスタートアップ企業で、主な事業は『くらしのマーケット』というサービスの運営です。これは日本最大級のインターネット商店街なのですが、モノではなくサービスが売買されている点が特徴です。具体的に言うと、家の引っ越しやリフォーム、ハウスクリーニングなど、生活全般に関わるようなサービスが取引される場になっています。売り手となる事業者は全国から６万社ほど出店しており、200種類以上の幅広いサービスを提供しています。
——御社の仕事の特徴や社内の雰囲気についてお聞かせください。
仕切りのないオフィスの様子。スナックコーナーもあります。
浜野さん 『くらしのマーケット』はその名の通り「くらし」にまつわるサービスを取引する場なので、利用者を絞ることなく、すべての人に使ってもらえる可能性があるという点はひとつの特徴だと考えます。また、世の中の多くの企業は営業の部署を置いて、その部署の人たちが何かを販売して売上をつくっていることがほとんどだと思いますが、弊社は営業がひとりもおらず、何かを直接売るということがありません。サービスをすべてオンラインで提供していることもあって、オフィスも働き方も質実剛健で自由な雰囲気だと思います。
鈴木さん サービス利用者と出店者の両方を集めるビジネスモデルが大きな特徴だと思います。私は主にサービス利用者を増やすための仕事をしており、ブランドマーケティングチームというところでCMの制作やSNSの運営などを行っています。社内の雰囲気については、基本的に成果主義なので、成果を出すこと自体を楽しんでいる社員が多い印象があります。仕事以外の部分でいうと、お菓子を食べながらみんなで話をすることもあり、和気藹々とした雰囲気ですね。
——スタートアップ企業の魅力についてお聞かせください。
CEO 浜野勇介さん
浜野さん スタートアップ企業とよく対比されるのは大企業ですが、社員が何万人もいる大企業と比べると、スタートアップ企業は小さな組織であることが多く、自分と異なる部署の人が隣の席で仕事をしていることもあります。そのため、入社してすぐの人でも少し頑張れば会社全体の動きを把握することができます。この点は、スタートアップ企業ならではの魅力だと考えています。また、毎月、毎週、毎日成長していくことが求められているので、会社が日々成長し、変化していく様子が見られるところも面白いと思いますね。
鈴木さん トライできるチャンスが多いというところが一番の魅力だと思います。大企業は基本的に分業制なので、自分の担当できる範囲がすごく狭いんです。もちろん、それだけ専門性が身につくという考え方もあると思いますが、スタートアップ企業では、自分が考えた企画を自分が実行して、自分で評価するというサイクルをひとりで回すことができるので、成長するスピードが圧倒的に早いと感じています。
——鈴木さんが今の会社に転職された理由などをお聞かせください。
マーケティング本部 鈴木寛乃さん（本学卒業生）
鈴木 私は以前、化粧品を扱う大手企業でマーケティング担当として働いていたのですが、化粧品は他社との差別化や競争が非常に激しい商品なので、商品自体の価値よりもイメージ先行で売れる側面があり、その点に違和感を持つようになりました。イメージ戦略に注力するのではなく、本質的な価値のある新しいサービスを提供している会社で働きたいと思ったことが転職のきっかけです。転職先を探す中で、弊社は「正直者がバカを見ない世界をつくる」という明確なビジョンを持っておりまして、その理念に強く共感したので就職することに決めました。
鈴木さんが担当しているCM画像
転職して以降、仕事面では過去最高に充実しています。以前勤めていた会社は分業制で、商品部が開発した商品を売るために、マーケティング担当の私たちが施策を考えていました。そのため、商品が自分の広告で売れたとしても、商品がよかったから売れたのではないかと考えてしまって、一から自分で企画している感覚がなかったんです。
ですが、今の会社では、自分から「SNSをやりたいです」というように企画を提案することもできますし、サイトの問題点を自分が気づいたタイミングで改善することもできます。自分が主体的に動けていることを実感するたびに充実していると感じています。
——自分のやりたいことや性格が、社風や仕事内容と合っているかを見極めるためにはどうすればいいでしょうか？
浜野さん 実際に働いてみるのが一番早いと思います。特にスタートアップ企業はインターンやアルバイトを募集しているところが多いので、中に入って働いてみれば、その会社の雰囲気や社員の様子、仕事内容を肌で感じることができます。もうひとつ大切なことは、その会社が言っていることではなく、実際にやっていることを知るということです。例えば、新卒サイトに「フラットな人間関係」と書いてある会社があったとします。しかし、それが競争の激しい人材派遣の会社だったとすれば、強い営業組織が不可欠なはずです。強い営業組織をつくるためにはきっちりとした上下関係が必要なので、フラットな組織には決してなりません。実際の事業モデルを知り、そのモデルを実現するためにはどういう組織になるのかといったところまで深く考えて、会社のことを読み解いていくことが大事だと思います。
鈴木さん 自分のやりたいことと自分に向いていることは違うこともあるので、あまり自分のやりたいことを決めつけずに入社した方がいいと思います。会社選びの視点としては、社内のカルチャーが自分に合っているかどうかが大切だと考えており、自分が一緒に働く人たちがどういう価値観で働いているのか、そこに自分がフィットするのかを知るために、複数の社員と直接話してみることをおすすめします。私も弊社に入る前に、５人くらいの社員と話す機会を用意してもらいました。全員に同じ質問をして、回答から社内の価値観が共有できていることを確認し、ここで働きたいと強く感じました。
——最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。
浜野さん 就職活動で企業側は、その人が会社にとってどのような利益をもたらすのかという点を重視します。そのため企業選びでは、企業の立場に立って、採用における企業側の意図をしっかり考えたうえで戦略を立てることが重要だと考えます。社会では、与えられた課題だけに取り組むのではなく、自分で必要なことを考え、目標自体を自分で設定することが求められます。目標を見据えた課題設定ができるよう学生のうちから強く意識しておいてほしいと思います。
鈴木さん 大企業とスタートアップ企業の両方を経験した私が感じたのは、自分の性格に合うカルチャーの企業で働くことが、仕事の喜び、充実につながるということ。まず入社した企業でたくさんのことを吸収し、次のキャリアへつなげるという方法もあります。学生のみなさんには、はじめから選択肢を狭めず、視野を広く持って企業研究を進め、企業と自分とのマッチ度合いを見極めてほしいと考えています。
インタビュアーより
企業選びの際にはその企業が大手企業かどうかではなく、企業の価値観が自分の価値観にフィットしているかどうかという視点を持つことが重要であると学びました。また、鈴木様の「あまり自分のやりたいことを決めつけずに入社した方がいい」という言葉が印象に残っています。私は、就活の際は自分のやりたいことを明確にしなければならないと固く構えていたので、少し意外でした。視野を広くもち実際に企業の仕事を体験してみることが、企業や自分を知る重要な一歩であると実感しました。
早稲田大学文学部2年/学生キャリアボランティア（SCV）村上愛佳
