テーマ |
「トランジション・デザインと脱成長」 |
講演者 |
中野 佳裕(立教大学21世紀社会デザイン研究科特任准教授)
Ph.D. (英国サセックス大学)。専門は社会哲学、グローバル・スタディーズ、社会デザイン学。 単著に『カタツムリの知恵と脱成長━━貧しさと豊かさについての変奏曲』(コモンズ、2017年)、共編著に『21世紀の豊かさ──経済を変え、真の民主主義を創るために』(コモンズ、2016年)など。訳書にセルジュ・ラトゥーシュ著『脱成長がもたらす働き方の改革』(白水社、2023年)、セルジュ・ラトゥーシュ著『脱成長』(白水社クセジュ、2020年)、ステファーノ・バルトリーニ著『幸せのマニフェスト━━消費社会から関係の豊かな社会へ』(コモンズ、2018年)など(詳細はhttps://researchmap.jp/read0148572) |
講演要旨 |
本報告は2つの構成に分かれる。 第1部では、社会デザイン学の先端研究分野のひとつであるトランジション・デザインについて紹介する。従来のデザイン研究は消費社会の成長に寄与する商品サービスのデザインに主眼を置いていた。しかし、2008年米国発金融危機を契機に資本主義の様々な社会課題(貧困、格差、環境破壊etc)の解決を目指すソーシャル・イノヴェーションのためのデザインが世界各地で議論されるようになってきている。トランジション・デザインは、ソーシャル・イノヴェーションのためのデザインの急進化を目指す研究分野である。その研究は主に認識論的・存在論的次元に焦点を当てており、既存の社会デザイン学が依拠してきた近代知(科学・技術・経済・政治etc)の転換を通じた文明移行シナリオの構想を研究している。 第2部では、トランジション・デザインの思潮の一つとして注目されている脱成長について紹介する。21世紀初頭にフランスで提案された脱成長は、技術官僚的な解決に傾く「持続可能な開発」に異議申し立てし、脱消費主義的な生活をボトムアップ式に構築するための社会運動スローガンとして提案された。運動の拡大にともない学術的研究も立ち上がり、議論は国際化していった。第2部では、脱成長の理論的射程を哲学(認識論)・社会運動・公共政策の各領域における主要な問題群を紹介しながら整理する。また、気候変動・パンデミック・戦争の影響に揺れる欧州の現状を踏まえながら、脱成長の課題についても触れる。最後に、脱成長トランジション・デザイン研究の可能性として、文化理論における深化と制度論における深化の二つの方向を提案し、両者の接合の重要性を指摘する。 |
開催日時 |
2024年1月19日(金) 15:05~17:00(JST) |
開催場所 |
早稲田キャンパス14号館804教室(予定) 対面開催 |
お問合せ先 |
先端社会科学研究所事務局 [email protected] |