基幹理工学研究科 博士1年 西城耕平 Kohei SAIJO
- 派遣期間:
- 派遣先大学:カーネギーメロン大学2023年4月〜7月
- 派遣先国・地域名:アメリカ
海外派遣を希望した理由
自身の研究遂行能力の向上や博士課程終了後のキャリアを考える機会として、今回の海外派遣留学を希望した。本派遣では、米国ペンシルベニア州ピッツバーグにあるCarnegie Mellon University (CMU)の渡部晋治先生の研究室にて、訪問研究者として研究を行った。渡部晋治先生の研究室は、私の博士課程の研究テーマである音声・音響処理分野において世界で突出した発表数を誇り、分野を牽引するグループである。そうした数多くの優秀な学生を抱えるチームに参画することで、自己研鑽を行うことを目的とした。加えて,海外で優秀な研究者と共に研究を行う経験は、今後のキャリアについて再考するいい機会になると考えた。

滞在先研究室での成果報告会
現地での研究内容・成果
音声強調における主要なタスクを全て扱うことができる、汎用的な音声強調モデルを構築することを検討した。音声強調とは、残響や雑音、他者の声といったノイズが含まれるマイクロホンの観測信号中から人の音声のみを抽出する技術である。音声強調は主に残響除去・雑音除去・話者数推定・音源分離・目的話者抽出の5つのタスクに分類することができる。先行研究では、これらのうちの1つもしくは幾つかのタスクのみを扱うモデルが検討されてきたが、本研究ではこれら5つのタスク全てを扱える汎用モデルを構築することに成功した。当該研究成果は、音声認識・音声理解分野の国際ワークショップに投稿した。帰国後も訪問先研究室とコラボレーションを続けており、滞在時の研究テーマについてさらなる発展を検討している。
学校環境
研究室は、全員が同一の部屋で研究を行うのではなく、2-3人ごとに1つの部屋が与えられる形であった。私のオフィスは同時期に中国から同研究室に訪れていた学生と同じ部屋で、毎日のように議論をしながら研究を行える環境であった。キャンパス内には多数の自習用スペースがあり、研究を行うには非常に整った環境であった。キャンパスは自然が豊かで、キャンパス内でも野生のリスやウサギなどの動物を見かけることがしばしばあった。また、夏の夜は蛍が飛んでおり、キャンパス内でも綺麗な光を見ることができた。キャンパス周辺には中国料理店等の日本人も好んで食べることのできるレストランも多くあり、過ごしやすい環境であった。

オフィスの様子.後ろ側には大きなホワイトボードもあり議論をする際に有用であった.

キャンパスは自然が多く過ごしやすい.この中庭でキャッチボールなどをしている学生もいた.

帰国前に食事会を開いていただいた時の写真
住居・周辺環境
Airbnbを通じてシェアハウスを予約し滞在した。キャンパスまでは徒歩1時間程度の距離であったため、現地の中古自転車店で自転車を購入し自転車で通学した。宿泊先から自転車で5分程度の距離に大きなスーパーマーケットが複数あり、食品や日用品を定期的に購入するには困らない環境であった。滞在先では電子レンジを利用することができたため、電子レンジで調理できる冷凍食品等を主に購入していた。また、洗濯機が備え付けられていないもしくは有料である宿泊先も多いが、私は洗濯機を無料で使用できる宿泊先を選んだ。滞在先であるピッツバーグは米国の中でも治安の良い街であり、不安なく過ごすことができた。バスで1時間程度の距離にメジャーリーグの野球場(ピッツバーグパイレーツの本拠地)があり、休日に野球観戦を楽しむことができた。また、今回の滞在では訪れていないが、車で4時間程度の距離にナイアガラの滝があり、国際免許を持っていればレンタカーを借りて観光をすることもできる。

シェアハウスの一部屋をAirbnbで借り,滞在した.

中古自転車店で自転車を購入した

ピッツバーグにある野球場で野球観戦を楽しんだ
現地の文化など日本との違い
現地の文化・生活は、日本と異なる部分も多かった。印象的だったのは、街中の至る所に教会があったことだ。日本ではこうした教会はあまり見かけないため、文化の違いを感じた。また、気候の違いも印象に残っている。現地は気温や湿度が日本より比較的低いため、夏に入っても過ごしやすかった。ただし、天気の変わるスピードが速く、突然雷雨が始まったと思えば数十分経つと晴れているといったことも多くあったため、少し戸惑った。また日本より日が長く、夜の21時くらいまで明るいため、キャンパスを出るのが少し遅くなっても安心して帰宅することができた。食生活に関しては、中華料理店等も多くあったため、現地の料理に加えて日本人好みの料理も問題なく楽しむことができた。

街中の至る所に教会があった
海外派遣を経て今後の目標
派遣前は文化の異なる海外での生活や英語での研究議論などに少し不安を感じていたが、今回の派遣を通じ、バックグラウンドの異なる多くの研究者と議論をしながら研究を行うことの楽しさを実感し、将来的に海外で研究を行うことも視野に入れるようになった。こうした新たなキャリアパスの選択肢も含め、自身の目標を達成できるよう、英語力や研究能力を含め、今後も研鑽を積んでいきたいと思う。
おわりに
本派遣を通じて、海外で研究を行うという貴重な経験をさせていただくことができました。本来であれば多くの金銭的負担が必要な留学ですが、スーパーグローバル大学創生支援事業からの支援のおかげで、そうした不安もなく研究に集中することができました。本留学は研究に対する価値観が変わるほど大きな経験でした。ご支援をいただき誠にありがとうございました。