基幹理工学研究科 修士1年 内田 拓希 Hiroki UCHIDA
- 派遣期間:2023年9月~11月
- 派遣先大学:エディンバラ大学
- 派遣先国・地域名:英国・スコットランド・エディンバラ
海外派遣を希望した理由
自分が海外派遣を希望した理由は2つあります。1つは学部時代にハードウェアをメインに研究してきたので、ソフトウェア面に関しての知見を得たかったという事です。もう1つは、全く新しい環境で研究者をはじめとしたたくさんの人と関わり、その中でどのような発見があるか知りたかったからです。
派遣プログラムの内容について
自分は、イギリスのエディンバラ大学ポスドクの斎藤菜美子さん(早稲田大学菅野研究室出身)の指導の下、Sethu Vijayakumar教授の研究室で3ヶ月間研究をさせて頂きました。研究内容は斎藤さんの研究の一部を担当させて頂く形で、自分の担当部分は、中身のわからない箱に入っている物体をロボットで操作しながら、その中身を推定していくという内容でした。
- エディンバラ大学の新入生歓迎会
- 研究室
学習成果について
帰国時点での研究成果としては、学習に必要な画像認識システムとセンサーの連携を行い、VAE(Variational Auto-Encoder/変分オートエンコーダー)によって画像情報を頼りに物体認識を行うことには成功しましたが、その次の段階となる、画像情報を遮断した状態での学習の性能がいまひとつの状態となっていました。今後斎藤さんと連携をとり、性能向上、論文の執筆をしていきます。
また、毎週金曜に行われているミーティングに参加し、我々の研究に意見を貰ったり、他の研究者の研究発表の議論を聞いたりする機会が非常に刺激的でした。日本では、研究班別の小さなミーティングでは議論に時間をかける事も多いですが、研究室全体などの大人数での発表では、発表者が話す時間の方が長い事が多い印象です。しかし、この研究室の全体ミーティングでは、ロボット関連とは言え分野が違う研究をしている研究者達が互いの研究に指摘し合って研究手法をブラッシュアップしている事に驚きました。違う知識を有しているからこそ、互いにない発想が得られるのだと思います。

研究室のメンバーと
学校環境
Sethu研究室はロボット分野の研究者の間で有名になる程たくさんのロボットを所有している研究室で、そのロボットを求めてたくさんの研究者や見学者が訪れていました。そのため、自分の研究を説明する機会が非常に多かったです。校舎や設備もとても奇麗で、研究するのには最高の環境でした。

エディンバラ大学校舎
国際交流
週末にアメフト部の活動に参加し、その仲間達と楽しく過ごす事が出来ました。試合で良いプレーをしてサイドラインに戻って来た時、みんなに「良くやった!」と褒められながら肩を叩かれたり、自分にとって最後の試合の後にあったThanksgiving Partyでみんなの寄せ書きが書かれた国旗を貰ったりと、いい思い出をたくさん作る事ができました。

アメフト部の仲間と
住居環境
イギリスはただでさえ物価が高いのですが、ここ数年でエディンバラの家賃は特に急騰しており、そこに円安が重なって家賃がとんでもない値段になっていました。予算に収まる物件を2ヵ月ほどかけて探し、見つけた物件は大学からバスで30分ほどのフラット(日本でいうシェアハウス)でした。フラットには4人で住んでいましたが、みなさんとてもやさしく、ストレスなく過ごすことができました。特に仲良くなった同時期に入居した中国人の留学生は、郷土料理を振舞ってくれたり、旅行先のお土産をくれたり、お別れの日にディナーをご馳走してくれました。
- シェアハウスの共用キッチン
- エディンバラ市内
周辺環境
エディンバラは日本でいう仙台のようなイメージで、栄えていますが、自然にも恵まれています。自分はこの歴史的建造物と自然の織り成す雰囲気がとても好きになりました。
気候は緯度が高い分、日本より寒く、自分が滞在していたエディンバラの秋頃の気温は、大体日本の冬頃の気温でした。また、夏の日没は21時より遅く、冬の日没は16時より早いというくらいに日の長さが変化します。
イギリスでは雨が多いというのは本当で、特に秋冬は天気が悪くなりがちなので、旅行するなら夏のうちだというのをよく聞きました。「一日のうちに四季がある」という格言があるほど天気が変わりやすく、傘をさすよりもウインドブレーカーのような撥水性のある服を常に着ている人が多く、自分も気づけば傘を使わなくなっていました。
- カールトンヒルからの景色
- エディンバラ市内
現地の文化
到着前はエディンバラではイギリス英語が飛び交っていると思っていましたが、移民の割合がかなり多く、身の回りのイギリス人は体感2割ほどで、色々なアクセントの英語に触れる事ができました。中国人、アメリカ人、イギリス人、インド人が多く、互いのアクセントの違いをジョークにして笑いあっていました。
食文化に関してもいろいろな国のレストランがあり、飽きる事はありませんでした。ただ、庶民の味方のような価格のレストランは存在せず、外食はランチでも2,3千円するため、基本的に自炊していました。
現地の移動手段はバスが主流で、市内の移動はもちろん、エディンバラからロンドンに向かう際も8時間ほどかけてコーチという長距離バスを利用しました。このバスは数十分遅れて来たり、降車ボタンを押しても勢い余って一駅先で止まったりとかなり不正確なのですが、その遅れをGPSで認識し、考慮した時刻表がバス停やGoogle Mapに表示されるのでIoTのありがたみを感じていました。
- スコットランド料理ハギスとフォース鉄橋
- エディンバラ駅
今後の進路への影響について
留学中、たくさんの国や趣味、価値観を持った人と出会ったことで、これからも国籍を超えてたくさんの人と関われる世界で生きて行きたいと考えるようになりました。また、研究室の内外で優秀な人とたくさん関わったことで、自分もあのような優秀な人間になれるように努力しようと思いました。
このような貴重な経験を与えてくれたプログラムのサポートをしてくださった全ての方々、そして現地でお世話になった全ての方々に感謝しております。

エジンバラ駅近くにあるバルモラルホテル