文学学術院は、文化構想学部、文学部、文学研究科、総合人文科学研究センターの体制をとっています。
この2学部・1研究科・1センターが、一元化された運営組織の中で、幅広い人文学研究のスケールメリットを活かし、より充実度の高い柔軟な教育研究活動を展開しています。

文学学術院長 小塩 真司
大学とは、何をする場所なのでしょうか。
高校までの学びでは、多くの場合、すでに答えが用意されており、教科書に書かれた知識を理解し、それを正しく説明できるようになることが求められます。しかし、大学における学問とは、まだ誰も答えを知らない問いに向き合う営みです。歴史にはなお解明されていない出来事があり、人間の心や社会には理解されていない現象が数多くあります。研究者は資料を集め、証拠を吟味し、仮説を立て、検証を重ねながら、新たな知を世界へ発信していきます。高校までの勉強が「答えを学ぶこと」だとすれば、大学の学問は「問いを生み出すこと」から始まるのです。
早稲田大学は、1882年の創立以来、「学問の独立」という理念を掲げてきました。学問とは、権力や時勢に左右されることなく、自由な精神のもとで真理を探究する営みであるという考え方です。その精神は、文学学術院にも受け継がれています。坪内逍遙が近代文学と演劇の研究・実践の礎を築き、多くの文学者や思想家、歴史学者、哲学者、そして多才な人々を輩出してきたことは、これまでの歴史のなかで早稲田が一貫して「人間を理解すること」を目的のひとつとしてきたことを示しています。
文学学術院とは、文化構想学部・文学部・文学研究科・総合人文科学研究センターを包含する総称です。現在の文学学術院は、多彩な専門分野を擁する、日本最大級の人文学研究拠点へと発展しました。そこでは、異なる専門分野の研究者や学生が日常的に出会い、議論し、それぞれの視点を持ち寄りながら新しい問いを生み出しています。ひとつの専門を深めるためには、多様な専門に囲まれていることが重要です。その豊かな知的環境こそが、文学学術院の財産なのです。
「文学学術院」という名称から、小説や詩だけを研究する場所を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、私たちが探究している対象は、人間そのものです。文学や哲学をはじめ、世界各地の文化や宗教、歴史、芸術、社会、言語、心、そして現代社会が直面するさまざまな課題まで、人間の営みそのものが研究対象になります。現地でのフィールドワーク、古文書や遺跡の調査、インタビューや参与観察、大規模データの統計分析など、研究方法も多岐にわたります。近年では、AIや自然言語処理、デジタルアーカイブなどの新しい技術も積極的に活用されています。学問の現場では、「文系」と「理系」という区別は本質ではありません。大切なのは、問いに最もふさわしい方法を選び、着実に探究を続けることです。
早稲田大学は総合大学であり、多彩な学問分野が一つの大学に集まっています。だからこそ、分野を越えた対話が自然に生まれます。現代の課題は、ひとつの専門だけでは十分に理解できないことがあります。異なる学問が交わり、影響を与え合うことで、新しい知が生まれていくのです。このような様子は、これからの学問に欠かすことのできない姿です。
文学や哲学、歴史、文化を研究することは、すぐに役立つ成果を生まないように見えるかもしれません。しかし、人間とは何か、社会はどのような価値を大切にすべきか、文化をどのように未来へ受け継ぐべきかという問いは、社会が大きく変化する時代だからこそ、ますます重要になります。AIが急速に発展し、膨大な情報を瞬時に処理できるようになったとしても、その技術を何のために用い、どのような社会を築くのかを決めるのは、人間です。人文学は、その根本的な問いに向き合い続ける学問なのです。
大学院は、その探究をさらに深める場です。国内外から集まる大学院生や研究者が、それぞれの専門性を磨きながら研究を進め、新しい知を世界へ発信しています。文学学術院は、長い歴史と伝統を受け継いでいます。しかしそれだけでなく、未来の学問を切り拓く研究拠点であり続けたいと考えています。
そして、これから大学を目指す高校生の皆さんには、大学で身につく最も大切なものは、専門的な知識だけではないということをお伝えしたいと思います。それは、問いを立てること、証拠に基づいて考えること、自分とは異なる価値観を理解すること、そして、自らの考えを論理的に表現することなどです。こうした能力やスキルは、社会の中でどのような道へ進んでも、一生の財産となるものです。
それ以上に大学は、自分自身の世界を広げる場所でもあります。自分とは異なる時代や文化に触れ、異なる価値観を知り、これまで当然だと思っていたことを問い直す経験は、知識を増やすこと以上に、自らの視野を豊かにしてくれることでしょう。
早稲田大学文学学術院は、「なぜなのか」と問い続ける場でありたいと考えています。ここには、その問いに向き合おうとする人に応えるだけの環境が用意されています。

(左から順に)
文学学術院は、創立150周年(2032年)を見据えた、将来構想を策定しました。
これらは文学学術院の構想段階のものであり、大学として決定したものではなく、今後議論を深め、必要性と適切性が認められるものについては、正規の手続きを経て順次開始していきます。
早稲田大学文学部は、東京専門学校文学科創設(1890年)以来、人文科学、文化科学の蓄積を時代に翻弄されず未来に継承すること、人類が直面する課題に向き合いその解答を模索することを使命にして、多彩な人材を育成してきました。
今後も「学問の自由」「清新な気風」「個性豊かな在野の学風」という建学の精神のもと、教育・研究のさらなる充実を推進して参ります。
| 1882 明治15年 |
大隈重信により東京専門学校創立 |
|---|---|
| 1890 明治23年 |
坪内逍遙博士らにより文学科創設 |
| 1891 明治24年 |
『早稲田文学』創刊 |
| 1902 明治35年 |
早稲田大学と改称、大学部文学科となる |
| 1904 明治37年 |
専門学校令による大学となる |
| 1920 大正9年 |
新大学令による大学となり、文学部となる |
| 1928 昭和3年 |
演劇博物館開館 |
| 1945 昭和20年 |
敗戦の翌月から授業再開 |
| 1949 昭和24年 |
学制改革による新生早稲田大学となり、夜間学部として第二文学部創設、第一文学部・第二文学部の呼称スタート |
| 1951 昭和26年 |
大学院文学研究科 修士課程創設 |
| 1953 昭和28年 |
大学院文学研究科 博士課程(現在の博士後期課程)創設 |
| 1957 昭和32年 |
記念会堂完成 |
| 1962 昭和37年 |
戸山キャンパス完成 |
| 1968 昭和43年 |
小汀利得氏からメタセコイアが寄贈される |
| 1973 昭和48年 |
第一文学部指定校推薦入学を開始 |
| 1982 昭和57年 |
創立100周年記念式典開催 |
| 1991 平成3年 |
『早稲田文学』100周年記念展開催 |
| 1992 平成4年 |
戸山図書館開館 |
| 1996 平成8年 |
第二文学部社会人入試開始 |
| 2004 平成16年 |
文学学術院設置 |
| 2007 平成19年 |
第一文学部・第二文学部を再編し、文化構想学部・文学部を設置/大学院文学研究科を人文科学専攻の一専攻に改編/文学研究科 博士後期課程にアジア地域文化学コース新設 |
| 2008 平成20年 |
文学研究科とコロンビア大学人文科学大学院東アジア言語文化研究科との間で、修了時に両大学の学位を取得できるダブルディグリー・プログラムを開始 |
| 2010 平成22年 |
文化構想学部・文学部が完成年度/文学学術院120周年記念行事/文学研究科 修士課程および博士後期課程に表象・メディア論コース新設/33号館建て替え工事着工 |
| 2011 平成23年 |
文化構想学部・文学部で初の卒業生を輩出/文学研究科 修士課程に現代文芸コース新設 |
| 2012 平成24年 |
総合人文科学研究センター設置 |
| 2013 平成25年 |
総合人文科学研究センター研究誌「WASEDA RILAS JOURNAL」発刊 |
| 2014 平成26年 |
文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」(トップ型)に、「Waseda Ocean構想」が採択、文学学術院に国際日本学拠点を設置 |
| 2015 平成27年 |
新33号館高層棟・低層棟竣工/角田柳作記念国際日本学研究所を開設 |
| 2017 平成29年 |
文学研究科 修士課程および博士後期課程に中東・イスラーム研究コース新設/文学部に中東・イスラーム研究コース新設/文化構想学部 多元文化論系に中東・イスラーム文化プログラムおよびGlobal Studies in Japanese Cultures Program(JCulP:国際日本文化論プログラム)新設 |
| 2018 平成30年 |
文学研究科 博士後期課程に国際日本学コース(Global-J)新設 |
| 2019 平成31年 |
戸山キャンパスに早稲田アリーナが竣工 |
| 2021 令和3年 |
国際文学館(村上春樹ライブラリー)開館 文学研究科 修士課程に国際日本学コース(Global-J)新設 |
| 2025 令和7年 |
文学研究科 修士課程に社会構築論コース新設 |