10年ほど前、蔦森樹さんにレクチャーをお願いした時、「ジェンダーは人類最大の暴力です」と静かに語り出した。人類を男と女という二項対立のカテゴリーのどちらかに強制し、異性愛のセクシュアリティしか許されないというこの社会の法的・倫理的システムが、どんなに人間性を傷つけているか、そのとき初めて実感したのだった。以来、ジェンダーの授業ではその差別構造を根幹に据えて講義をするように心がけてきた。
1994年に早稲田大学に初めて「女性学」の授業を開講した時、登録学生は30名だった。1997年にジェンダースタディーズと講義名称を変えて全学オープン科目として開講した時、400名以上の受講生がいた。現在はジェンダーを副専攻にする学生も増え、私の学部のGender Studiesだけでも200名以上の登録希望があるということで、急きょ定員を130名枠に増やさざるを得なかった。着実に、Genderは社会的・文化的に構築された概念にすぎないという考え方が主流化し、Heteronormativityが規範となっていることを批判する視点も増えてきた。いずれQueer Studiesも開講してほしいと願っている。
とどのつまり、「マイノリティ」の権利を主張することは思想的にも、倫理的にも正しいことだと考えている。だから、これは余談だが、「沖縄にこれ以上の基地はいらない」という声にも、少しは耳を傾けてほしいと、沖縄出身の私は思うのだが。
国際教養学部教授 勝方=稲福 恵子