Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

文学学術院教授 豊田真穂

世の中にはたくさんの規範がある。規範というのは「そうあるべきだ、そうしなければならない」などのように、「べき」を含む行動パターンのことで、それに従わないと制裁(サンクション)を受ける。例えば、「女性は子育てに専念すべきだ」という規範に反すると、「子どもがかわいそう」「子どもの発達に影響がある」などと言われる。

わたしは、大学院生の頃、「研究者を目指すなら…すべきだ」とか、「フェミニストなら…しなければならない」といった規範に苦しめられた。それらは、わたしを「お嬢さん院生」と呼んだ先輩から投げかけられた言葉だ。今なら、そんな忠告は的外れで馬鹿げていると笑いとばすことができるけれど、当時は先輩が言うのだからと深刻に考えていた。スカートやハイヒールをはくのをやめたり、ショートカットにしたり、できるだけ「女」の要素を削る努力をした。

でも、あるときからそれを辞めた。「あなた、研究者なのに…だよね」とか、「フェミニストなのに…だよね」とか言われたって、たいしたことないって思えるようになった。それは、「ほかのひとと違う」ことを目指すようになったから。「変態」「オカマ」という意味の蔑称である「クイア」を引き受けて、社会の規範に徹底的に抗うクイア理論に出会ったことも大きかった。そして、「変わり者」と言われることを、褒め言葉と受け止めるようになった。

クイア理論がそうであるように、変わり者は、変える者。規範から外れることが、社会を変えていくことにつながると思うから。

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