Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

社会科学部教授 花光 里香

日本ではLGBTという言葉がまだ使われていなかった頃、アメリカで大学生活を送っていたときのことである。キャンパス内で犯罪に巻き込まれないため、図書館から深夜に1人で帰る時は、警備員に電話をして寮まで送ってもらわなければならなかった。毎晩図書館の入り口で警備員を待っていると、ある男子学生から声をかけられた。「帰る時は教えて。寮まで送るよ。」そう言われて戸惑う私に、彼は言った。「大丈夫。僕、ゲイだから。」

それ以来、彼は毎日のように私を寮まで送ってくれた。図書館の帰り道以外にも会う時間が増え、カフェテリアで一緒に食事をするようになり、部屋に遊びに行くこともあった。話すうちにわかったことは、私が男性を好きになるように、彼は男性を好きになる。その気持ちは、同じなのだということだった。いつも何かと助けてくれる彼に、なぜそんなにやさしくなれるのか聞いたことがある。彼は答えた。「僕たち、似てるから。」留学先の大学で、私はたった1人の日本人だった。

マイノリティが生きやすい社会は、全ての人が生きやすい社会に違いない。そのような社会をつくるために何かしたいと思ったきっかけは、彼との出会いだった。EmailもFacebookもなかった時代、帰国して連絡は途切れてしまったが、Mathewは私の忘れられない人である。

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