高等研究所セミナーシリーズ 【グローバル・ヒストリー研究の新たな視角】 公開講演会:
「インテリジェンスと信仰心のはざまで:東洋学の担い手としてのロシア帝国仏教徒」(6/5)
講演者
井上 岳彦 (人間文化研究機構 総合人間文化研究推進センター 研究員
/北海道大学 スラブ・ユーラシア研究センター 特任助教)
日 時
2021年6月5日(土)14:00~17:00
会 場
ZOOMにて配信予定
主 旨
「インテリジェンスと信仰心のはざまで:東洋学の担い手としてのロシア帝国仏教徒」
本講演は、ロシア帝国のチベット仏教徒(特にカルムィク人)がいかに東洋学の形成と変容に関与し、そのことが仏教徒社会・ロシア社会双方にいかなる影響を与えたのか、という点について論ずる。チベット仏教を信仰するモンゴル系のカルムィク人は、黒海とカスピ海の間に広がる草原地帯に住み、18世紀前半にロシア帝国の支配下に入った。チベットなどの信仰拠点から遠く離れ、経典すら散逸する中で、カルムィク人は、その信仰維持をロシア政府の支援に依存していくようになった。他方、政府の脆弱な統治能力のために、地方統治も、仏教僧侶の協力に依存していた。こうして、政府と教団の相互依存関係が形成されたのである。19世紀後半、東部ユーラシアの戦略的価値が高まったとき、東洋学がロシア帝国の軍事・外交・経済政策の決定に大きな影響を与え始めた。ロシア東洋学は、ピョートル大帝以来の伝統を持つが、質・量ともに発展途上にあった。しかし、チベット仏教徒は、言語としても信仰としても、東部ユーラシア地域に強い優位性を有した。かくして、仏教徒は、ロシア東洋学の形成に大きな影響力を発揮するようになった。彼らは、聖地巡礼の形をとって、アジア各地を調査した。仏教徒は単なる情報提供者に留まらず、東洋学者とのあいだに、ある程度対等な学術的協働関係を築いた。やがて、その関係は、仏教徒によるロシア語公共圏への参加に進展したのである。
プログラム
14:00~14:10 開会挨拶
14:10~15:10 講演(井上 岳彦)
15:10~15:20 休憩
15:20~15:50 コメント (海野 典子)
15:50~17:00 質疑・討論
コメンテーター
海野 典子(早稲田大学高等研究所 講師)
司 会
秋山 徹(早稲田大学高等研究所 准教授)
対 象
大学院生・教職員・一般
主 催
早稲田大学 高等研究所
申込み
事前登録が必要です。以下URLよりご登録をお願いします。
https://zoom.us/meeting/register/tJctdemgrTIuEtN_taPw249zgseiwD8GgpZ2
ポスター
こちらをご覧ください。