Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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Newsletter Vol.19(2019年)

研究者紹介

高等研究所では、2019年7月に1名の所員を新しく迎えました。

LEE, Yeon Ju

Yeon Ju Lee’s research interests lie at the intersections of comparative politics, political economy, and East Asian politics. Specifically, she is interested in elucidating the conditions under which economic inequality becomes politically salient and the mechanisms of how inequality and development affect political attitudes and behavior and democratic transition, consolidation, and dysfunction. She utilizes mixed methods, including lab and field experiments, primary surveys, interviews, ethnography, and comparative historical analysis based on in-depth qualitative fieldwork. Lee holds a Ph.D. in Political Science from the University of Chicago, an M.P.P. from Harvard Kennedy School, and a B.A. in Political Science and International Relations from Korea University. Before joining WIAS, she was a postdoctoral fellow at the Weatherhead Center for International Affairs at Harvard University.

LEE, Yeon Ju

丸山剛講師の研究紹介

2019年9月、丸山剛講師が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業・PRIMEに新規採択されました。当事業の研究開発課題である「時空間的異常センシングによるがん変異細胞除去修復」の最新の研究についてご紹介します。

「がん変異をもつ細胞の表情とそれを認識する上皮細胞」

丸山 剛 講師

胃や腸は一見すると体の内側にありますが、摂取した食物だけでなく、外部から取り込んだ様々な菌やウイルスなどにも晒させているため、外部と接触していると言っても過言ではありません。つまり、私たちの体の内側である食道、胃、腸などは外部からの様々な外的ストレスに晒されているため、常に小さな障害・異常・遺伝子変異が生じることがわかっています。さらに、腸などの表面は、上皮細胞層という薄い細胞の層で覆われていますが、外部と接する最前線にあるこの細胞層は最も外的ストレスに晒される部位の一つであると考えられます。この上皮細胞層に障害や異常が蓄積した結果引き起こされる病気の一つにがんがあります。がんは、一般に広く知られている疾患ですが、未だ完璧と言える治療法が確立されていないこともよく知られており、それだけ治療が困難であることも事実です。そこで、私達は異常が蓄積してがんとなる前の段階で異常細胞を除去できれば、がんになることなく、がんを防ぐことができるのではないかと考えて研究を進めています。

最近の研究から上皮細胞層にがんの種ともいえる変異異常(がん変異)が生じると、周辺の上皮細胞ががん変異細胞を認識し、このがん変異細胞を積極的に排除すること(細胞競合現象)が分かってきています。ショウジョウバエの研究から端を発した細胞競合現象ですが、最近の研究から哺乳類であるイヌの細胞もしくはマウス個体でも、上皮細胞層においてがん変異細胞が排除されることが分かってきました(Hogan et al., Nature Cell Biology, 2009)。しかし、がん変異細胞はがんとは違い、正常細胞と見分けが付きません。そのため、どのようにして周辺の正常な上皮細胞ががん変異細胞を認識するかは全く分かっていません。丸山剛研究室では、異常細胞が自身の異常を細胞表面に提示するシグナルである抗原提示に注目して研究をおこなっています。

【図1】

細胞内の異常は通常外から見ることはできませんが、異常をきたした細胞は細胞内の異常を抗原提示というシグナルで細胞の外に発信しています。つまり、この抗原提示は細胞の表情ともいえます。しかし、この異常細胞の表情の微細な変化を認識できるのは、表情認識に特化した免疫細胞のみであると考えられていました。今回我々はこの抗原提示の変化を認識する機構が非免疫細胞である上皮細胞にも備わっていることを見出しています。これはこれまで免疫細胞のみが異常細胞を認識し、その異常細胞を攻撃するという概念に一石を投じる大きな発見だと考えられます。採択研究課題では、抗原提示変化を認識する機構を詳細に解明することをねらいとしています。(図1)

【今後の研究のさらなる発展・展望】

丸山研究室の研究者たち(右:筆者)

人の表情と同じく、細胞の表情にも様々な変化があることが分かっています。例えば、がんのみならず他の異常も含めた変化の種類、さらには異常の強さといった様々な変化を抗原提示は変化として細胞表面に提示します。そのため、非常に複雑な機能ですが、我々はこの表情変化の認識といえる抗原提示変化に対する認識機構の全容を解明することを目指しています。変異細胞に対する排除攻撃は、正常細胞が変異細胞を認識することで引き起こされます。そのため、この認識機構が詳細に解明されれば、どのように異常細胞を攻撃するかという機能も分かってきます。これにより、異常細胞に対する攻撃を最大限に引き出すことにも繋がり、疾患を事前に予防する医療へと展開できると期待されます。加えて、この異常が引き起こす細胞の表情変化は、がんのみならず他の疾患、例えば、細菌感染などにおいても起きる変化です。そのため、より広範囲の疾患へ応用される可能性があり、今後様々な疾患に対する新たな治療法の確立に繋がる可能性を秘めています。

活動紹介

高等研究所主催 国際ワークショップ「UBIAS Topic of the Year 2019 Event “Migrations: Movement of People, Ideas, and Goods”」を開催しました(2019年10月16日、17日)

パスカル・ロッタ 講師

早稲田大学高等研究所(WIAS)と名古屋大学高等研究院(IAR)は2019年10月16日~17日、早稲田大学において「UBIAS Topic of the Year Event」を開催しました。私は2日目にラウンドテーブルのディスカッサントとしてワークショップに参加しましたので、当日の様子を以下に報告します。

UBIASネットワークは複数の高等研究所による国際的コラボレーションであり、日本では早稲田大学と名古屋大学が参加メンバーとなっています。近年、両研究所の緊密な協力関係により、世界中の研究者が集まる国際ワークショップが毎年開催されています。

基調講演の様子(グラシア・ファーラー教授)

今年の「移民(Migration)」に関するワークショップは、高等研究所のティナ・シュレスタ講師とアレックス・マレット講師が企画し、早稲田大学の大隈記念タワーで2日間にわたり行われ、国内外からのべ104名が参加し盛況となりました。イベントの冒頭では、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科のグラシア・ファーラー教授が「Immigrant Japan and a New Era of International Migration」と題した基調講演を行いました。

この2日間のワークショップを通して、人文・社会科学の非常に広範な研究分野が網羅されました。ワークショップの目標は、目下の諸問題に対する明確な答えを導くことではなく、トピックを深く掘り下げていくことでした。発表者には移民問題に詳しい関連分野の講師として、エジプト学者、中世史学者、人類学者、社会学者、および国際関係の専門家を迎え、何世紀にもわたる移民の様々な面について議論を深めました。(詳細はこちら)

パネルの様子(左:シュレスタ講師、右:マレット講師)

発表者は、白熱した議論になりそうなトピック、例えば、欧米における奴隷の影響や強制労働のために売られた人々の結果的な「強制的移動」などもあえて避けませんでした。もう一つのトピックは、2015年の欧州「移民危機」における人道支援団体の欠点でした。当時、人道支援団体はそれらの団体に資金供与した国々の難民に必要な支援を提供しなければなりませんでした。これらの議論には、移民自身が政治的駆け引きの対象になる、移民の政治問題化という第三の「政治的」争点も絡みました。

この会議では「移民」について二つの矛盾する不変性が明らかになりました。一つは移民の変化です。これは移民のニーズだけでなく、世界経済の構造や送り出し国/受け入れ国双方のニーズと機会によっても変わります。奴隷売買による移民を2015年のアラブ諸国からヨーロッパへの移民流入と比較することはできませんが、これらはいずれも、人々の「強制的」再定住が地域共同体に多大な影響を与えた具体例です。

ラウンドテーブルの様子

このことは、移民は変わらないという第二の見解につながります。世代や地理が常に「不変」だったことなどありません。人類は経済的、文化的、政治的理由で常に「移動」してきたのです。

この意味では、21世紀は過去の世紀となんら変わりません。移民の流入で社会が変化し、受け入れ国と送り出し国の関係が悪化するのは新しいことではありません。受け入れ国は政治状況に応じて自国の共同体への新参者の流入を受け入れるか拒否するか判断するものの、送り出し国は何かしら損失を被る場合(例えば、頭脳の流出が起こったときなど)と、遠く異国に住みながら祖国の経済に貢献する海外労働者の人々から恩恵を享受する場合があります。移民の通過国でさえ、通常、貿易(人身売買を含む)や様々な種類の移民がもたらす人道的、生態学的影響により何かしら大きな影響を受けます。

どの世紀においても、人々の移動と彼らの文化、思想の影響が、接触した共同体を形作ってきたと結論付けて良いでしょう。

ロッタ講師

これらの考察から湧き上がる疑問は多岐にわたりました。社会はどんなときに移民を支援、奨励するのか? どんなときに移民を非難するのか? そうしたトピックはどのような状況下で国民的な議論になるのか? 移民に対しどのような科学的アプローチが考えられ、またこのトピックには価値や道徳的義務についての議論なしで公平に取り組むことはできるか?

探求すべきことはまだたくさんあります。これからのUBIASワークショップをご期待ください。

インフォメーション

WIASでは国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳しくはこちら

訪問研究員

  • 2019年9月7日~2019年10月7日 GROSSMANN, Martin, Professor, School of Communication and Arts, University of Sao Paulo (ブラジル)
  • 2019年11月1日~2019年12月1日 LAN, Pei-Chia, Distinguished Professor, Department of Sociology, National Taiwan University (台湾)
  • 2020年1月7日~2020年2月7日 SACKUR, Jerome, École des Hautes Études en Sciences Sociales (フランス)
  • 2020年3月1日~2020年3月31日 CARDOSO, Vitor, Professor, Instituto Superior Tecnico, University of Lisbon (ポルトガル)

訪問学者

  • 2020年1月7日~2020年3月6日 PARK, Yuha, 世宗大学国際学部 教授 (韓国)
  • 2020年1月3日~2020年2月3日 KIM, Sei-wan, Professor, Ewha Womans University (韓国)

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