Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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Newsletter Vol.15(2017年)

研究者紹介

「ドローンによる3Dマッピング」の研究開発

鈴木 太郎 助教

いまドローンに期待されている技術

無人で自動的に飛行可能な「ドローン」は、現在誰でも簡単に手に入れることができ、非常に身近な存在になっています。一方産業分野では、衛星や航空機、有人ヘリ等を用いて上空から地上の情報を収集するリモートセンシングに加え、ドローンを用いた情報収集手法が様々な大学や研究機関で研究されています。その中でも特に活用が求められているのは、ドローンが飛行するだけで精密な環境の三次元地図を作成することができる「3Dマッピング」の技術です。3Dマッピングは、災害時の建物の倒壊や土砂崩れなどの詳細な被災情報の収集や、建物の点検、土木工事の完了後の計測など様々な場面で活用が期待されています。現在,災害環境において容易に3Dマッピングが実現可能なドローンの開発に取り組んでいます(図1)。

図1 ドローンによる3Dマッピング

3Dマッピングの構造

現在、3Dマッピングができるドローンの構造は、図2に示すようにドローンのプロペラの外側に6個のGlobal Navigation Satellite System(GNSS)(*注釈1)アンテナ・受信機を搭載しています。また、低コストのGNSSアンテナ・受信機を複数台ドローンに搭載することで、慣性で角度を検出する計測器(ジャイロセンサ等)を利用することなく飛行中のドローンの位置を1cm、姿勢を0.1°以下で推定する手法を新たに開発しました。そのため、従来は困難であった、地形のcm精度の計測が可能となりました。さらに、ドローンにレーザ距離センサ(LiDAR)を搭載し、このLiDARを用いた地上の精密三次元計測を行う手法を構築しています。従来、カメラを用いた3Dマッピング手法が利用されていますが、LiDARを用いることで、これまでに必要だった、カメラで撮影するための対空標識と呼ばれるマーカを地上に設置する必要がなくなりました。

(*注釈1)Global Navigation Satellite System(GNSS)は衛星を用いた測位システムの総称です。米国のGPS、ロシアのGLONASSや日本の準天頂衛星などが含まれます。

図2 6個のGNSSアンテナ・受信機を搭載したドローン

デジタルコンテンツEXPO (2017年10月27日~10月29日開催)での展示

現在研究開発しているこのドローンを用いた3Dマッピング技術が、「GNSS-LiDAR: ドローンによる3Dマッピング」として、2017年9月に経済産業省の「Innovative Technologies+ 2017」に採択されました。これは、産学からの公募により、経済産業省が定める技術マップ2015で示されている技術開発の方向性に基づき、優れたコンテンツ技術を選するものです。そして、採択された技術は、日本科学未来館で開催されたデジタルコンテンツEXPO(2017年10月27日~10月29日開催)において展示されました(図3)。 EXPOには多くの来場者があり、ドローンによる3Dマッピングの展示についても、来場の方に非常に興味を持っていただきました。「実用化はいつなのか」、「どのような現場でデータを取得するのか」、などの実際に利用することを想定した質問が多く、「建設施工の現場や森林の計測で利用してみたい」という意見もいただきました。現在この研究は内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)に採択され研究を進めています。このImPACTの研究期間はあと1年続きますが、最終年度は実用化に向けて具体的に研究を加速していきたいと考えています。

図3 デジタルコンテンツEXPOでのGNSS-LiDARドローンの展示

活動紹介

早慶共催ワークショップ「Workshop “Logic and Philosophy of Mathematics”」を開催しました(2017年7月14日、7月15日)

秋吉 亮太 准教授

7月14日(金)、15日(土)に早稲田大学高等研究所—慶應義塾大学論理と感性のグローバル研究センター共催ワークショップ「Workshop “Logic and Philosophy of Mathematics”」を慶應義塾大学三田キャンパス(14日)、早稲田大学早稲田キャンパス(15日)で開催しました。

プログラムの構成としては、一日目のテーマは論理学や数学の哲学、特に20世紀初頭に起こった無限を巡る数学基礎論論争(※1)の現代的展開やその再検討です。数学基礎論は、ゲーデルの不完全性定理(1931年)をきっかけとして数学的に発展しました。1970年代以降はコンピューター・サイエンスとの結びつきが強くなり、元々の無限を巡る哲学的な議論からは遠くなったように考えられることも多いですが、実はこれらの発展を本来の哲学的観点から再検討することはチャレンジングで大いに意味のある研究テーマです。高等研究所からは筆者と藤原誠助教が、ブラウワーの「バー帰納法」と呼ばれる論理的な原理に関して、哲学的、数学的な講演をそれぞれ行いました(図1) 。続いて、数学の哲学や数学基礎論の専門家であるAndrew Arana准教授(パリ大学哲学科)が、算術の証明概念について発表されました(図2)。 また、論理学の哲学に関する研究のみならず、ドイツの哲学者ヘーゲルやライプニッツ研究でも知られる岡本賢吾教授(首都大学東京)は、「可能性」や「必然的」といった様相概念について講演をされました。二日目には、論理学のコンピューター・サイエンスや数学基礎論における先端的研究に関する発表が行われました。

※1 数学基礎論論争は、代表的な人々としてフレーゲ、ブラウワー、ヒルベルトがいます。

図1  藤原誠助教の講演

筆者が行った、ブラウワーの「バー帰納法」を巡る議論についての研究発表は以下のようなものです。ブラウワーは、アリストテレス以来の無限に関する哲学に基づいて独自の数学を構築しましたが、バー帰納法のブラウワーによる議論はまともな証明とはみなされてきませんでした。それは証明の形に関する一種の哲学的仮定に依存する議論で、この仮定をめぐって様々な解釈が提案されてきましたが、いずれも数学的厳密さを伴ったものではありません。筆者は、ブラウワーと本来対立すると思われてきた、ヒルベルト学派の手法(証明論)を用いることで、この議論を数学的に厳密に形式化し、結果として問題となっている仮定を自然に解釈する学説を提案しました。この研究発表について、哲学、数学、コンピューター・サイエンスなどの背景をもった研究者の方々からコメントを頂くことができ、研究のさらなる進展につながりました。

一日目には高等研究所所属の研究者が三田キャンパスで講演を行い、二日目には慶應義塾大学の研究者の方々が早稲田大学のキャンパスに聴衆としてお見えになり、両日ともに様々な分野の研究者が参加してこの共催ワークショップは盛況のうちに終了しました。

図2   Andrew Arana准教授の講演

図3 秋吉亮太准教授

今回の会議は早稲田大学側からは筆者と藤原誠助教、慶應義塾大学側からは岡田光弘教授(論理と感性のグローバル研究センター長)が中心となって開催されました。現在筆者は早稲田大学に所属していますが、実は慶應義塾で20年近い学生生活を送ったこともあり、この会議は個人的にも感慨深いものでした(図3)。いわゆる早慶戦をはじめライバル関係とみなされることの多い早稲田大学、慶應義塾大学ですが、今回のような早慶が連携した会議の成功は、様々な垣根を乗り越え学際的な分野を開拓することをその使命とする高等研究所にとっては喜ばしいことではないでしょうか。

特別展「最古の石器とハンドアックス—デザインの始まり」ガイドツアー(2017年10月20日)

佐野 勝宏 准教授

2017年10月20日、高等研究所ランチタイムセミナーとして、東京大学総合研究博物館で開かれている特別展「最古の石器とハンドアックス—デザインの始まり」(図1)のガイドツアーをおこないました。本特別展は、日本とエチオピアの研究者の1980年代以来の共同研究の成果です。私は、2012年より本国際共同研究に参加しており、この特別展にも実行委員として参加しています。そこで今回、特別展のオープン初日にガイドツアーをおこない、世界水準の先端研究の成果を展示として公開・普及する試みを紹介することとしました。

図1 特別展「最古の石器とハンドアックス—デザインの始まり」の入り口

本特別展では、最古の打製石器、最古のデザインされた石器、出アフリカを果たしたホモ・サピエンス集団の祖先達の石器が展示されています。全てが日本初の展示、多くはエチオピア国外に出ることすら初めての世界水準の研究資料です。また、人類の各進化段階を代表する頭骨化石レプリカが、彼らの推定身長の高さで展示されています。これにより、石器テクノロジーの発達と人類進化の過程を視覚的に理解できるようになっています(図2)。また、空中に浮かぶディスプレイをタッチすると、石器製作の動画が始まるエアリアルイメージングを会場に設置し、太古の人類の石器テクノロジーを最先端テクノロジーで解説する工夫がなされています。

図2 推定身長の高さで吊された人骨化石と展示ケースに並べられた石器。人類は徐々に脳容量が拡大し、石器は洗練されたデザインへと発達していく。

石器は、人類が初めて製作した道具であり、初めて明確なデザインを脳にイメージさせて製作された人工物です(図3)。本展示の目玉であるエチオピアのコンソ遺跡群では、約175万年前の世界最古のハンドアックス(アーモンド型に整形された石器)が出土していますが、この石器は時代の経過と共に入念に加工されるようになり、徐々に均整の取れた形に変化していきます。90〜80万年前には、平面の左右対称性に加え、側面や断面も対称性を持つようになり、三次元での対称性が認められます(Beyene et al., 2013. PNAS 110, www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1221285110)。このような三次元的対象性を持つ造形物を製作するには、立体的にイメージする認知能力とイメージ通りに製作する技術を必要とします。また、約140〜125万年前の間には、原石を打ち欠きによって整え、その原石(石核)から石器の素材となる定形化した大型剥片を剥離する技術が出現します(Beyene et al., 2015. The University Museum, The University of Tokyo Bulletin 48, http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Bulletin/no48/index.html)。これは、彼らがある程度先を見越した計画性を持っていた証です。このように、石器テクノロジーの発達は、人類の進化過程を解明する重要な手がかりを私たちに与えてくれるのです。

図3 最古のデザインされた石器を前に解説する様子(筆者:右)

本特別展は、内容を一部変更し2018年5月に早稲田大学でも開催されます。世界水準の一級資料を通じて、人類進化の最先端研究を肌で感じるまたとない機会です。多くの早稲田大学学生、教職員、並びに一般の方々にも見ていただけることを願っています。

インフォメーション

WIASでは国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳しくはこちら

訪問研究者

  • 2017年11月6日~2017年12月6日 PERREAULT, Jacques; Professor, University of Montreal, Department of History(カナダ)
  • 2018年3月9日~2018年4月8日 DE GROOT, Jerome; Senior Lecturer, University of Manchester,  School of Arts, Histories and Cultures(イギリス)

訪問学者

  • 2017年10月1日~2017年11月1日 NEOH, Joshua; Senior Lecturer, The Australian National University, Law School(オーストラリア)
  • 2017年10月30日~2017年11月30日 DUANGKRAYOM, Jaroon; Lecturer, Nakhon Ratchasima Rajabhat University, Geoinformatic Program(タイ)
  • 2018年3月24日~2018年4月22日 SAKO, Mari; Professor, University of Oxford, Said Business School(イギリス)

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早稲田大学高等研究所

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