Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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Newsletter Vol. 9(2015冬号)

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2014年10月より、所長・副所長の体制が新しくなりました。所長は宮島英昭教授が継続、新副所長に小林哲則先生と谷口眞子先生が就任しました。以下、就任にあたっての挨拶を掲載します。

所長・宮島 英昭 教授

宮島所長(中央)、小林副所長(左)、谷口副所長(右)。

この度、所長として、早稲田大学高等研究所(以下WIAS)の活動をさらに2年率いていくこととなりました。本研究所の活動は、2006年の設立以来、9年目に入ります。すでに、100名以上の研究員を輩出して、本学、あるいは、内外の大学・研究機関で活躍しています。 これまで8年間、WIASは3つの側面で成果を生み出してきました。一つは、早稲田大学の研究水準向上への貢献です。国内外の優秀な若手研究者に、研究に専念できるポジションを提供することで、数々の研究成果を発信してきました。二つ目は、アカデミックな国際交流です。WIASでは、世界の第一線で活躍する研究者に1か月ほど滞在頂く、訪問研究者プログラムを進めております。毎年10名程度の方が来訪され、セミナーやワークショップなどを通じて、大学全体に新風を吹き込み、密度の濃い交流を促進しています。三つ目は、国際的なプレゼンスの向上です。世界中の主な大学設置の高等研究所が組織する国際組織(UBIAS)に参加し、国際連携を進める一方、UBC、EHESSなど研究機関と協定を結んでいる研究交流を続けております。さらに、来年度には、政治経済システム、企業システムの日・欧・アジア比較に関するプロジェクトが本格的に立ち上がり、EHESS、オックスフォード大学、ベルリン自由大学などの研究機関との共同研究を広げていく予定です。今後も、所長として、こうした活動をリードし、さらに一段と高い水準に引き上げて行きたいと決意しております。

副所長・小林 哲則 教授

トップクラスの若手研究者育成を目的として設立された当研究所は、発足以来8年余が経過しました。この間、多くの優秀な人材を輩出するなど実績を残してきましたが、広い専門領域を扱う少数精鋭の組織であるが故に、個々の研究所員は孤立しがちといった問題もあるようです。所員の力をより大きく伸ばすためにも、所員の影響力を学内外に広く及ぼすためにも、所員と他箇所との密な交流の場が必要です。彼らを核とした相互作用の場作りができればと考えています。

副所長・谷口 眞子 准教授

コンピュータの発達や情報の多様化により、従来の学問のディシプリンが変容しつつある。私が専門とする日本近世史では、日本史と法制史など、複数の研究分野にまたがる卒論を書く学生が増えている。高等研究所でもまた、人文・社会・自然の区分を超えた研究が生まれている。ヨーロッパの近代国家概念とそれをもとにした学問体系から脱皮し、世界の新たな見方が模索されている時期であるといえよう。研究所員のパワーに期待したい。

UBIAS 国際会議に出席しました。

2014年11月27日〜30日に国立台湾大学にて、大学が設置する高等研究所(University-Based Institutes for Advanced Study、通称UBIAS)の第3回国際会議が開催されました。アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアから各機関の代表者が集まり、高等研究所としての役割や使命、国際的な枠組みでの研究交流について活発な討議が行われました。当研究所もUBIASネットワークの一員として参加し、宮島所長が当研究所の概要や研究プロジェクトについて紹介しました。 新しい世界史像の可能性(人文科学分野)

プロジェクト紹介

新しい世界史像の可能性(人文科学分野)

このプロジェクトでは、宗教史、思想史、美術史、軍事史などのジャンルを包摂した異なる地域の歴史比較研究を行い、新しい世界史像を国際的に発信します。ここでは、本プロジェクトで行われた2つのセミナーを紹介します。

プロジェクトの詳細はこちら

2014年4月19日(土)
中近世キリスト教世界の多元性とグローバル・ヒストリーへの視角⑤「中世ヨーロッパの聖史劇をめぐって」

講演者:杉山 博昭(高等研究所・助教)、黒岩 卓(東北大学大学院文学研究科・准教授)

聖史劇とは中世のカトリック教会が民衆教化のために制作・上演した演劇です。しかしルネサンスにおいて、制作の主導権は托鉢修道会から平信徒たちの手に移り、舞台演出は徐々に大がかりなものになりました。たとえば演者は聖堂内の中空を舞うように降下し、恩寵の光は様々な色の火花を散らして爆発したことがわかっています。娯楽性が加速度をつけて高まる一方、同時代に制作された絵画の画面内にもいわゆる写実的な描写とは異なる要素がかいま見られます。天使たちがロンドを踊る青空に穿たれた円形の穴や、使徒のもとに舞い降りる聖霊のハトが発する閃光に、当時の鑑賞者はどのような記憶を重ねたのでしょうか。かつて聖史劇が、一度に数万人の見物客を集めていたのだとすれば、聖史劇の見物客と絵画の鑑賞者が重なることは容易に想像できます。そのふたつの眼差しの交差を想定することで、当時の絵画の受容経験をいっそう豊かに分析することが可能になるのです。

2014年10月18日(土)
近代移行期における軍事と名誉・忠誠・愛国心の比較研究「18〜19世紀の中央・東アジアにおける民族的アイデンティティと国家への忠誠」

講演者:野田 仁(高等研究所・准教授)、柳澤 明(早稲田大学文学学術院・教授)

18世紀半ばから19世紀末にいたるまでの中国清朝の歴史の中で、帝国全体の統治を考えたとき、帝国治下のさまざまな集団がどのように清という国家を捉え、どのように忠誠心を抱いていたのかという問題が浮上します。本シンポジウムでは帝国周縁からのアプローチを共通項にして、まず野田准教授が帝国の西北端に位置していたカザフ遊牧民の事例を報告し、清朝領内での遊牧が決定的になる過程で、忠誠を示すことを余儀なくされたプロセスを示しました。カザフの背後にあるロシアの影響力などについて質問がありました。一方の柳澤教授の報告は、ソロンやチャハルなどの非満洲人の八旗・旗人に注目し、彼らの上奏文・証言から、皇帝との関係やそれぞれの出身地との関係など重層的なアイデンティティを持ちながら勤務についていたことを示しました。共催の研究プロジェクトのテーマである軍人たちの心性にも迫った報告内容には、会場から多くの質問が寄せられました。

各種業績の紹介

WIASモノグラフシリーズ第1弾がRoutledge社から刊行されました。所友のZhenjie Zhou先生(北京師範大学)による、“Corporate Crime in China” です。Routledge社は、人文科学・社会科学分野の学術書出版やオンラインリソースの提供を行う大手海外出版社です。1836年設立以来、現在では電子書籍を含む多彩なテーマの出版物を取り扱う会社として有名です。

詳しくはこちら

所友探報

本研究所の研究員を経て、大学や企業で活躍されているOB・OGの方を紹介します。今回は2007年10月から2010年3月まで高等研究所に在籍された、小林由佳先生です。

小林 由佳 先生((独)物質・材料研究機構 主幹研究員)

NEXTグループメンバーと実験室にて。
写真左下が小林先生

私の専門は有機合成を基盤とした分子性物質の物性化学です。昨今、有機LEDなどの低エネルギー材料が世間の注目を集めていますが、有機電子材料の学術的な歴史は無機材料に比べて比較的浅く、これからまだまだ新機能の発見が多いに期待される分野です。 私は2007年の秋から約2年半の間、WIASに在籍し、応用化学科と応用物理学科の双方に足を運びながら現職のテーマの基礎となる新規有機電子材料の研究に没頭する機会を頂きました。兼ねてより、分子性物質にはこれまでの科学ではまだ説明のつかない現象が眠っており、それを掘り起こすためには、物理学の知識やセンスが極めて有効であると考えておりました。しかし、化学出身の身ではその習得の機会はなかなか得難いものでした。
ところが、WIASという極めて自由度と独立性の高い研究所でその機会を得たために、幸運にもそれを実現することができたのです。現在は、WIAS時代に培った研究の芽を現在の職場であるNIMSで大事に育て、ようやく大きく開花できる段階まで来ています。2011から4年間、内閣府の大型研究資金、最先端・次世代研究開発(NEXT)プログラムに採択され、研究環境や優れた人材の確保に恵まれたことも大きく影響しています。
研究者としてのステージが上がるにつれ、自身の研究の質を高めるために異分野の知識や経験が役に立つことがあります。WIASはそのような、大人の研究者のための組織で、現在在籍されている研究員の方には、短い期間ではありますが、是非ともそれを謳歌していただきたいと思います。 最後に、私がWIAS時代を有効に過ごせたのも、応用化学科の竜田邦明先生(当時の所長)と応用物理学科の寺崎一郎先生(現在、名大教授)の温かいご支援とご協力があってのことと、感謝の念に堪えません。この場を借りて、深く御礼申し上げます。

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