「サムライ・イメージの光と影―国際日本学の観点から―」(10/3)
講演者 / Speaker
谷口 眞子 (早稲田大学 文学学術院 教授)
デュスッド, オディール (早稲田大学 文学学術院 教授)
松永 美穂 (早稲田大学 文学学術院 教授)
ラショウ, フランソワ (フランス極東学院 教授)
李衣雲 (台湾国立政治大学 台湾史研究所 准教授)
メシチェリャコフ, アレクサンドル ニコラエヴィチ (ロシア国立人文大学および国立研究大学高等経済学校 教授)
馬場 浩平 (立教大学 文学部 助教)
日 時 / Date & Time
2018年10月3日(水) 10:00~18:05
会 場 / Venue
主 旨 / Outline
21世紀に入り、人文学の各分野で専門分化が激しくなるとともに、膨大な量の情報がインターネット上に流れ、これまでの人文学のあり方は岐路に立たされています。しかしディシプリンが破綻し始める一方、学際的あるいは学融合的動きがみられることも確かです。
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業・第2グループ「ポストコロニアル時代の人文学、その再構築―21世紀の展開に向けて」では、以上のような共通認識のもと、「歴史」となった20世紀を国際日本学の観点から見直したいと考えました。サムライ・イメージをキーワードとし、表象・メディア論の手法も用いながら、外国の日本人観やその形成過程の一端を、政治的文化的歴史の流れの中で探ることを目的としています。
19世紀中葉の開国以降、日本にはお雇い外国人や駐留軍人が滞在し、日本からは使節派遣団や留学生などが国外に飛び立ちました。人の移動とともに、ヨーロッパの軍事・法制・教育などをめぐる学問も流入し、幕藩体制下で培われた学知と融合しながら、日本では近代国民国家が形成されていきます。不思議なことに、武士の存在が否定された明治時代以降、武士道が喧伝されるようになり、武士(サムライ)のイメージは、日本とさまざまな関わりを持つ諸外国に、それぞれの文化背景を反映した形で伝達され、受容され、改変されていきました。
午前中のワークショップでは、1900年代から1940年代に時間軸を設定し、同時代のフランス・ドイツ・日本で、どのようなサムライ・イメージが形成され、サムライ精神や武士道が喧伝されていたのか、比較します。ヨーロッパにおけるフランスとドイツの歴史、両国と日本との政治的関係が、サムライ・イメージの違いに反映されていることがわかります。
午後の国際シンポジウムでは、ドイツ・フランス・台湾・ロシアの4ヶ国の比較を行います。ケンペルは17世紀末に日本に滞在し、その著『日本誌』は、ヨーロッパ人が日本に興味を持つきっかけの一つとなりました。明治維新前年に開催されたパリ万国博覧会には、日本からも出品しており、浮世絵はジャポニズムを呼び起こすことになります。台湾は日本による植民地時代を、またロシアは日露戦争における敗北を経験し、20世紀における日本との軍事的関係は、ドイツ・フランスとは異なります。それぞれの地域での政治的文化的状況が、サムライ・イメージの形成にどのように反映されているのか、比較史的視座を通じてみえてくるでしょう。
近年のグローバリズムの流行にともない、国際日本学関係のシンポジウムは英語で開催されることが多いですが、次代を担う若い学生や他の専門領域の研究者にも興味をもってもらうために、共通言語を日本語にしました。自由で活発な議論が行えると期待しています。
プログラム / Schedule
ワークショップ「1900年代~1940年代のサムライ・イメージ」
10:00~10:10 開会の挨拶、趣旨説明(谷口 眞子)
10:10~10:40 「1905年~1940年代の新聞に表象されたサムライ・イメージ」(デュスッド, オディール)
10:40~11:10 「1930年代の武士道とサムライ・イメージ-「葉隠」を中心に-」(谷口 眞子)
11:10~11:20 休憩
11:20~11:50 「ナチ時代の”サムライ精神”」(松永 美穂)
11:50~12:30 ディスカッション(日本語)
(谷口 眞子 / デュスッド, オディール / 松永 美穂 / ラショウ, フランソワ / 李衣雲 / メシチェリャコフ, アレクサンドル ニコラエヴィチ)
12:30~12:35 閉会の挨拶
国際シンポジウム「20世紀のサムライ・イメージ」
14:00~14:15 開会の挨拶、趣旨説明(谷口 眞子)
14:15~14:45 「ドイツ語圏の日本旅行記にみる「日本人」言説の変遷と受容」(馬場 浩平)
14:45~15:15 「ダーク・サムライの系譜―浮世絵からハリウッドまで―」(ラショウ, フランソワ)
15:15~15:45 「反日、親日、あるいは哈日――台湾における「日本」イメージの変化」(李衣雲)
15:45~16:00 休憩
16:00~16:30 「ロシア・ソ連における日本のイメージ:女性の国からサムライの国へ(19世紀末から1930年代まで)」(メシチェリャコフ, アレクサンドル ニコラエヴィチ)
16:30~18:00 パネルディスカッション(司会:谷口 眞子)
(馬場 浩平 / ラショウ, フランソワ / 李衣雲 / メシチェリャコフ, アレクサンドル ニコラエヴィチ / デュスッド, オディール / 松永 美穂)
18:00~18:05 閉会の挨拶
言 語 / Language
日本語
対 象 / Prospected Audience
教職員・大学院生・一般
主 催 / Organizer
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業・第2グループ
「ポストコロニアル時代の人文学、その再構築―21世紀の展開に向けて」
共 催/ Co-organizer
早稲田大学 高等研究所
申込み / Registration
事前申込み不要です。直接会場にお越しください。