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【中間報告】高等研究所「人新世と人文学」セミナーシリーズ(第16回)特別展示 写真展 The Homeland 〜故郷へと帰還するシリア難民〜(12/17-1/13)

高等研究所「人新世と人文学」セミナーシリーズ(第16回)特別展示
写真展 The Homeland 〜故郷へと帰還するシリア難民〜(12/17-1/13)

フォトジャーナリストである小松由佳氏(早稲田大学総合人文科学研究センター・拡大するムスリム社会との共生部門の招聘研究員)が実施したシリア取材、シリア難民取材に基づき写真展を開催中である。2024年12月のアサド政権崩壊から1年の節目、また2025年7月には小松氏が『シリアの家族』(集英社より2025年11月近刊)にて第23回開高健ノンフィクション賞を受賞し、11月には受賞作が発刊となったこともあり、本展もまだ会期前半ながら大きな反響を得ている。以下は、その中間報告である。

2008年、小松は砂漠のオアシス都市パルミラの取材に赴き、そこでラクダの放牧を生業とする60人の大家族アブドュルラティーフ一家と出会う。やがてその一員のラドワン・アブドュルラティーフ氏と結婚、小松も家族の一人となる。折しも、2011年以降のシリアは内戦状態となり、ラドワン氏も国外への避難を余儀なくされた。小松は、トルコ、イギリス、そして日本へと離散した一家を写真におさめ続け、2022年には親族訪問ビザを得て、内戦下のパルミラ取材も行っている。2024年12月にアサド政権が崩壊した直後もシリアに入り、混乱の渦中で社会の再建を模索する人々の表情を撮影している。現在、多くのシリア人が故郷を目指して帰還の途にあるが、政治的安定という国家的課題だけでなく、個人生活の正常化に不可欠な、建物の再建、インフラの整備、コミュニティの再編、文化の継承、経済の復興にはまだまだ多くの課題がある。これらの課題に直面する人々を、小松は、家族として、ジャーナリストとして、独自の距離感から写しとる。

会期中盤の2025年12月20日(土)には、ジャーナリストの安田純平氏を招き、ギャラリー内で小松とのトークセッションを実施した。安田氏は、2015年6月からシリア国内で武装勢力による40か月にわたる拘束を受けた経験を有している。安田氏の報告は(詳細は、安田純平『シリア拘束 安田純平の40か月』、扶桑社、2018年、危険地報道を考えるジャーナリストの会編『自己検証・危険地報道』、集英社新書、2019年など参照)、日本で一般市民が報道を通じて得ていた情報との乖離への驚きを与えると同時に、民主主義が正常に機能するためにはジャーナリズムの成熟が不可欠であるという視点を示すものであった。

本展覧会は、2026年1月13日まで(12月26日~1月6日、1月11日は閉室)。

〈12月20日:当日プログラム〉
14:00 開会の挨拶 小松由佳
14:05~15:35 トークセッション(小松由佳×安田純平)
15:35~16:30 質疑応答(トークイベント終了後も、安田氏が多くの来場者の質問に答えてくださいました)

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