Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早大生リポート

舞台衣装が持つ見えない役割 演劇スタッフワークにおける創造性を学ぶ

6月7日から11日にかけて早稲田小劇場どらま館で行われた、舞台を支える裏方の仕事を学ぶ「はじめてのスタッフワーク ワークショップ」。早稲田小劇場どらま館は、早稲田演劇振興の拠点の一つとして優れた演劇文化を発信し、次代を担う演劇人を育成することを目指しており、ワークショップの企画もその一環として開催されています。今回は「スタッフワークの基礎になる知識や技術を伝えること」と、「講師の方の、現在の仕事に就いた経緯や仕事に対する考え方を通して『スタッフワークの仕事を生き方から考える』こと」を目標に、「企画制作WS(ワークショップ)」「音響WS」「衣装WS」「舞台美術WS」「舞台監督WS」「照明WS」の計6回が行われ、大盛況のうちに終わりました。前回の「企画制作WS」リポートに続き、今回は「衣装WS」に参加した学生のリポートをお届けします。

各ワークショップにはその世界の専門家が講師として登場した

衣装の違いで表現感覚も変わる

人間科学部 5年 澤田 靖子(さわだ・やすこ)

突然ですが、皆さん早稲田大学小劇場どらま館をご存じですか? 早稲田キャンパスを出て南門通りを馬場下町方面へ進むと、左手にあるコッペパンのお店「コッペ」が入っている建物です。「あ、あそこね!」となった方は次からどらま館にも一瞬目を向けてみてください。もし演劇に興味があれば、公演情報などをチェックして、公演を見に行ってみてもいいかもしれません。

そのどらま館で行われた今回のワークショップ。私は6月9日の「衣装WS」に参加しました。講師は中村ゆいさん。6月7日に行われた「企画制作WS」の講師、土屋光さんが運営するイベントスペースSCOOLにて、5月に公演した『象を撫(な)でる』で衣装を担当された方です。ワークショップはその『象を撫でる』に単独出演した武本拓也さんをゲストに迎え、何の説明もなしに『象を撫でる』での1シーンを演じていただくところからスタート。私たち参加者は唐突なことに驚きながらも、見る者を引き寄せる不可思議で力強い武本さんのパフォーマンスを鑑賞しました。見終えた後、その感想を交えながら参加者が自己紹介をし、「服って、衣装って、どんな役割を果たすもの?」という軽いディスカッションを行いました。

ゲストの武本拓也さんのパフォーマンスから始まったワークショップ

その後に中村さんや武本さんの自己紹介を経て、本題である「“感じを作る何ものか”としての衣服、衣装」のことや公演での衣装決めの経緯について話していただきました。ワークショップの終盤では、武本さんが毎日行っている「空間を感じること」を私たちも体験してみました。これは空間と接する自分の身体、また身体と接する衣服の連動性を感じてみることで、このワークショップで見聞きしたことが自分の感覚としても少し分かったような気がしました。

私は演劇の公演に衣装担当として携わったことがありますが、所属する演劇サークルでは、「衣装」が役割として定着しておらず、その都度、一から手探りで行っていました。その中で、曲がりなりにも意識していたのは「衣装が観客への視覚的情報の一つとなること」と「脚本・演出担当または主宰が考えるイメージを補助すること」でした。ですが、「そんなことを誰も気にしてないのでは…」「これは衣装を担当する自分のエゴかもしれない…」と悶々(もんもん)とすることがありました。そこで、今回のワークショップでは、現場で実際にどういった衣装が考えられ、決められているのかを知りたい、自分の衣装への取り組み方と比較したいと思っていました。

(写真左)右から講師の中村さんとゲストの武本さん
(写真右)参加者の自己紹介

実際に参加してみると、想像以上に得るものがありました。特に印象に残っているのは、衣装の違いで武本さん自身の表現感覚がかなり変わってしまう、という話です。私はこれまで、衣装担当として観客と脚本や演出担当といった作り手には配慮していましたが、演じ手である役者に対する配慮があまりなかったことに気付きました。服は素材、形、色などによってさまざまあり、着る服が変われば人の動き方も変わっていきます。例えば、私はズボンを好みますが、スカートをはくとなんだか脚が落ち着かなくなりますし、スーツなどかっちりした服を着ると動きも少しかっちりします。役者が衣装を着たときにもそういったことが起きるという、当たり前のことを見逃していたのです。

参加者全員で武本さんが行っている「空間を感じること」を体験

今回のワークショップに参加してみて、作品づくりへのアプローチの多様さを感じました。スタッフワークは脚本・演出担当と役者のサポートなど副次的な面ばかりでなく、スタッフワークだからこそできる作品の表現方法があると思いました。今回の学びを、今後参加させていただく作品に少しでも生かしていければ、また、ワークショップに参加した方それぞれがこれからの演劇を発展させていくことができれば、と考えています。

【早稲田大学の文化事業全体を支える寄付制度「早稲田文化募金」ご支援のお願い 】

早稲田大学は「早稲田小劇場どらま館」を早稲田演劇振興の拠点の一つと位置付け、早稲田演劇の伝統を継承・発展させ、優れた演劇文化を発信し、教育を通して時代を担う演劇人を多数育成することを目指しています。「早稲田小劇場どらま館」を含む、「文化の潮」が渦巻く早稲田からの強い発信と、燦然(さんぜん)と輝く早稲田の文化を未来の世代へ受け継ぐべく、皆さまのお力添え、温かいご支援を心よりお願い申し上げます。
なお、皆さまからのご寄付は、学生のため、演劇教育に資する目的のために使用いたします。
「早稲田文化募金」Webサイト

企画制作ってどんなこと? 演劇スタッフワークにおける創造性を学ぶ

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