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数字の奥に潜む現場の意図 管理会計の奥深さを感じて【会計研究科】

京都大学での原価計算研究学会で、学生報告セッションに参加した際に受賞した賞状と

大学院ってどんなところ? 現在、早稲田大学には21の大学院があります。今回の「研究まっしぐら!」は、会計研究科で研究に励む河野さんのキャンパスライフを紹介。大学院へ進学した理由をはじめ、学問の魅力だけでなく、一日の過ごし方も伝えます。

同級生や先生方との議論を通じて得られた生きる知識

大学院会計研究科 会計修士(専門職)課程 2年 河野 遥大(こうの・ようだい)

私は会計研究科で管理会計を専攻しています。管理会計は、企業の経営者や管理者が意思決定や組織のコントロールを行うために必要な情報を提供する企業内(社内)向けの会計です。本研究科は一般的な大学院と異なり、会計教育を中心とする専門職大学院であるため、理論だけでなく実務教育も重要な柱として位置付けられています。そのため同級生の多くは、監査法人や金融機関、コンサルティング・ファームなどで専門家としてのキャリアを志しており、研究者の道を志す学生は必ずしも多くはありません。それでも学びを重ねるうちに、管理会計という学問が持つ奥行きと可能性に強く惹かれるようになり、次第に博士課程で本格的に研究に取り組みたいと考えるようになりました。

いつもの研究風景。指導教員の研究室の一角で、文献の収集・整理・執筆を行っています

私が管理会計に興味を持ったきっかけは、指導教員である目時壮浩先生(商学学術院教授)の著書『異論・正論 管理会計』伊藤嘉博・目時壮浩著(中央経済社)の一節に心を動かされたことです。そこでは、「理論的には意思決定を支援する計算技法が高度化する一方で、現場では驚くほど単純なツールが使われていることが少なくない」と指摘されていました。私はこの言葉に、学問と実務の間にある溝と、そのはざまに潜む管理会計の本質的な面白さを感じました。理論を追究しつつも現場の感覚に寄り添う学問の姿勢に触れ、管理会計とは「数字の背後にある人や組織の意思を理解する学問」なのだと気付いたのです。企業の内部情報という閉ざされた世界で生じる課題を明らかにし、社会に還元できる点が、この学問の実践的な価値と深い魅力だと思っています。

普段の研究の風景。文献が多数に及ぶため、複数のモニターを用いながら管理しています

中でも私の主な関心領域は、取引先との関係における“コントロールの問題”です。管理会計はこれまで、主として自社内部をいかに効果的に管理するかに焦点を当て、意思決定を支援する情報やツールを提供してきました。しかし現在では、自社の一部機能を外部委託したり、複数の企業が連携して事業を進めたりすることが一般化しており、組織の垣根を越えて目標達成を支援する情報提供が重要となっています。私はこうした環境において、いかなるコントロールが企業間の信頼を損なうことなく協働を促すのかについて関心を持っています。

2025年8月には、京都大学で開催された原価計算研究学会にて、「脱炭素目標の達成に向けたサプライチェーン構造に適したコントロール手段の利用」がテーマの研究を報告する機会を得ました。壇上での発表は、初めは緊張しましたが、多くの先生方からご助言をいただき、研究をさらに深める貴重な経験となりました。

本研究科は「会計+1」というコンセプトを掲げており、会計知識に加えて自分だけの強みを身に付けることを奨励しています。私の「+1」は、同級生や先生方との議論を通じて活きた知識を身に付けられたことです。本研究科には学部出身者だけでなく、実務経験豊富な社会人学生や、実務家出身の教員が数多く在籍されています。そうした方々から、テキストからは得られない、一見理論とは矛盾した現場の生の声を聞けるところが大きな魅力です。

将来的には、研究者養成課程である商学研究科博士後期課程に進学し、管理会計の研究者として歩んでいくことを目指しています。企業間関係の研究を通じて、より持続可能で協調的な経営のあり方を探究し、実務に対して一つの解を示すことを目標に、今後も研究に励んでいきます。

ゼミのメンバーでのお花見の様子。一緒に食事やイベントに行き、チームで仲良く研究を進めています(右端が筆者)

ある日のスケジュール

早稲田キャンパス北門を出てすぐにある「ターリー屋」によくお世話になっています。夜遅くまで営業してくれて、ありがとう

  • 08:00 起床
  • 08:50 1年生との共同ゼミ
  • 10:30 休憩
  • 12:20 ランチ(ゼミ生とよくワセメシを食べに行きます)
  • 13:10 商学部ティーチングアシスタント(TA)として勤務
  • 18:40 研究室で修士論文執筆のための文献調査
  • 19:30 大学付近で夜ご飯
  • 20:30 研究室に戻り、再度文献調査
  • 22:30 帰宅(家が大学に近いので、大学の閉門ギリギリまで勉強しています)
  • 24:30 就寝(就寝前は小説を読んでリラックスしています)

2025年9月、地球感謝祭の前日、閉門直前の早稲田キャンパス。日中の活気ある姿とはまた違って、夜は趣があります

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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