専門ゼミ、卒研ゼミで学生にプレゼンテーションなどを課すと、できるだけうまくやろうと努力をして先行研究などを調べて発表に挑む学生がほとんどでありとても感心する。同研究室のゼミ生からの質問にも十分な情報量を持って回答しているところなどを見ると、調べ方や情報リテラシーなどの点で優れたバランス感覚も備わっていると思える学生がほとんどである。このような学生は、私にとって、あるいは世間一般的に見ても優秀な学生像として位置付けられるであろう。
一方で、うまく立ち回れる者は、逆説的に言うと失敗の経験が圧倒的に少ない。失敗を恐れて、失敗を回避することが多いとも思う。しかし、失敗をすることのメリットは、とてつもなく大きく、先の人生にも役に立つ。失敗することの主要なメリットの1つは、自尊心や自己効力感と呼ばれる、物事を成功に導くための心の装置を強化することができることである。失敗して悔しいという気持ちなどが生じると、それを乗り越えようとする気持ちも芽生える。(個人的な話で恐縮だが)私が大学院生時代、書いた論文の約7割を指導教員に赤ペンで修正された記憶がある。正直、とても悔しかったが、そのおかげで少しはましな文章を書けるようになった。指導教員に向けていた悔しいという感情も数年のときを経て知らず知らずのうちに感謝に変わった。学生だからこそ失敗を恐れず、失敗から得られる経験を大事にしてほしい。
(J)
第1111回