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早大院生が、数学史上最も美しい「オイラーの等式」を解説した入門書を出版!

「本を通じて、少しでも学問としての数学の敷居を下げ、数学を楽しんでほしい」

大学院教育学研究科 高度教職実践専攻 2年 鳥巣 晶寛(とりす・あきひろ)

皆さんは、数学史上最も美しいと言われる「オイラーの等式」を知っていますか? 大学院教育学研究科に在籍する鳥巣晶寛さんは、この等式を中学校レベルの計算のみを前提知識として解説した、数学入門書『#数学はじめました~とりっぴーと学ぶオイラーの等式~』(デザインエッグ社)を一から執筆し、今年7月に出版しました。その著書は、一時Amazonの数学一般関連書籍の売れ筋ランキングで1位を獲得。そんな鳥巣さんに数学入門書を出版した経緯や数学への思い、今後の展望などを聞きました。

——『#数学はじめました~とりっぴーと学ぶオイラーの等式~』を出版した経緯を聞かせてください。

2021年7月7日に発行した鳥巣さんの著書(デザインエッグ社)

本を出版した理由は、二つあります。一つ目は、自分自身の数学の学びをさらに深めたいと思ったからです。私は静岡大学理学部数学科出身ですが、学部では卒業論文がありませんでした。せっかく4年間数学を学んだのに、それを目に見える形で残さないのは、もったいない! それならばと、これまでの学習の成果物として本の出版を決意しました。

二つ目の理由は、学問としての数学の敷居を下げ、その面白さを伝えたいと思ったからです。よく「数学を勉強して何になるの?」と言う人がいます。その回答として「大学受験で必要だから」「論理的思考力を養うため」などと考える人が多いでしょう。ですが、私は数学を何かの目的を果たすためだけに用いる道具として扱うことに違和感を持っており、より多くの人に数学の本質的な面白さを伝えたいと思っています。

とは言え、数学はとても難しく、なかなか簡単な気持ちで始められるものではありません。恥ずかしい話、私自身も分からないことだらけで、決して数学が得意という訳ではありません(笑)。それでも、分からない数学の問題に対して時間を忘れるほど考え、試行錯誤する時間は、苦しくもどこか心地よく感じています。

「多くの人に、そんな数学の楽しさを知ってほしい」。この熱い思いが、私が執筆活動を続けることができたモチベーションの源泉でした。

——出版した数学の入門書の特長は何ですか。

この本の最大の目標は、数学史上最も美しい数式と言われるオイラーの等式を証明することです。構成として、第一章から第三章までは、数学の中で三大定数と言われる、オイラーの等式に登場するe(ネイピア数)とπ(円周率)とi(虚数単位)について、それぞれ定義や性質、有用性について解説しています。そして第四章では、オイラーの等式についてなぜ数学史上最も美しいのか、より厳密な視点で解説しています。

本のコンセプトは「厳密なのに親しみやすい、誰もが挑戦できる数学の入門書」。前提とする知識は、中学校までに学ぶ簡単な計算のみで、数学に興味があれば苦手な人から得意な人まで、誰もが楽しめる本になっています。数学の堅苦しい解説だけでなく、クスッと笑えるボケから、私が25年間生きてきた中での人生観も合間合間に書いており、数学入門書としてだけでなく、同世代の学生のエッセーとしても楽しんでほしいと思っています。

——本の執筆過程で苦労したことはありますか。

原稿は2020年の緊急事態宣言中、4月~5月に集中して執筆し、足立先生には何度も添削いただいたそう(クリックして拡大)

今回はプリント・オン・デマンド出版という、購入者の方が本を注文した後に印刷される形式で出版しました。なので、出版社に頼るのではなく企画から執筆、校正まで基本的に一人で行いました。最も苦労したのは、LaTeXというプログラミングソフトの習得。このソフトを使わないと、文中で用いるきれいな数式や図をかくことができないため、執筆を開始した当初は習得にかなり苦戦しました。

執筆は2019年、学部4年の10月から始め、本の販売開始は2021年の7月7日。販売に至るまで2年近くかかりました。出版にあたり、学問としての正確さが求められるため、学部時代ゼミでお世話になった恩師である静岡大学の足立真訓先生に原稿の添削をしていただきました。また、高校時代の後輩の一人にもお手伝いしてもらいました。いろいろな方々の協力があってこそ、本を出版することができました。

また、原稿を執筆するにあたって意識したのは、自分の言葉で書くことです。数学の専門書というと、大半の方はとっつきにくいイメージがあるかと思います。私自身、高校、大学ともに数学の成績は、お世辞にもよいとは言えない結果でした。現役時のセンター試験の数学ⅡBは衝撃の38点で、浪人を経験。大学でも数学の成績はC評価ばかり…。数学に抜群のセンスがあるわけではない立場として、数学のつまずきポイントは手に取るように分かるので、読者に寄り添った表現を意識しました。

2020年2月上旬に行ったゼミの打ち上げにて(左奥が足立先生、右側手前が鳥巣さん)

——本の中では、大学受験時のつまずきエピソードも包み隠さず書かれていますね。

高校は長崎県の進学校に通っていましたが、当時所属していた陸上部の練習に打ち込んでいたこともあり、成績は学年320人中311位。現役時は勉強不足で納得のいく結果を残せず、浪人を決意しました。

浪人時代は早稲田大学も受験しましたが、結果は不合格。合格こそ得られなかったものの、自分ができる最大限の努力をしたので悔いはありませんでした。学部時代を過ごした静岡大学は自慢の母校ですし、結果的に大学院から早稲田大学で学ぶことができ、いずれも私にとって一生に残る財産になっています。著書では、これまでの失敗談もさらけだし、「苦難や困難は人生のスパイス」というのが、もう一つのメッセージになっています。

——現在、教育学研究科ではどのようなことを学んでいますか。

教育学研究科の高度教職実践専攻(通称:教職大学院)に所属していますが、そもそも大学院に進学した理由は学部時代にさかのぼります。私は理学部数学科の出身で、理学部では教えるというよりは、インプット中心の4年間でした。教員を志すにあたり、人に伝える、教える力をより一層身に付けたいと考え、教員養成に特化した早稲田の教職大学院に進学しました。

教職大学院では1年次、2年次にそれぞれ5週間、高校で学校臨床実習を行いながら研究を進めていきます。大学院の講義では理論を学び、その後実践の場で試すという試行錯誤の繰り返しでした。ちょうど先日実習を終え、現在はその実践をまとめ、論文を執筆中です。

2021年9月~10月に都立高校で、体系的理解を促す授業実践をテーマに実習を行った

――最後に今後の目標を教えてください。

もともとは教員を志して大学院に入学しましたが、紆余(うよ)曲折あり、修士課程修了後は、教育関連の民間企業に就職予定です。早稲田でさまざまなバックグラウンドを持つ人と関わる中で、数学のみならず教育全体を通じて、子どもたちの育成支援や学校の教育理念の実現に携わりたいと考えるようになり、民間企業への就職を決意しました。また、先日YouTubeチャンネル「とりっぴーの巣」を開設しました。このチャンネルを通して、数学や教育、教職の魅力を多くの人に発信していきたいです。

先日、開設したYouTubeチャンネル「とりっぴーの巣」。初投稿の動画では、今回出版した著書を紹介している

第801回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
教育学部 3年 長谷川 拓海

【プロフィール】
長崎県出身。県立長崎西高等学校卒業。静岡大学理学部数学科卒業。趣味はラーメン店巡りで、お気に入りのお店は西早稲田駅近くにある「ピコピコポン」。高校、学部時代は陸上競技部に所属しており、フルマラソンのベストタイムは2時間56分45秒。

Twitter: @torisu_akihiro
YouTube: とりっぴーの巣

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