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学生街の喫茶店を救え! デジタル・ネイティブ世代が挑むコロナ禍の課題

「『つながり』が大事なんだ、という気付きが一番大きかった」

政治経済学部 3年 吉留 寛人(よしどめ・ひろと)

私たちの生活を変えてしまった新型コロナウイルス感染症は、学生でにぎわっていた大学周辺の飲食店にも多大な影響を与えています。そんな中、多くの早大生に愛されてきた、南門通りにある喫茶店「ぷらんたん」が2021年1月からクラウドファンディングを開始。マスメディアやSNSなどで話題を集め、目標金額を大きく上回る成功を収めました。その舞台裏には、早大生によるプロジェクトチームの活躍がありました。チームのリーダーを務めた政治経済学部3年の吉留寛人さんに、プロジェクトの経緯や背景にあった思いなどを聞きました。

――まず、クラウドファンディング・プロジェクトについて教えてください。

クラウドファンディングに関わった学生たちと、ぷらんたんのマスター・前田さん(後列中央)

今年の1月30日から3月15日にかけて、早稲田キャンパス南門のそばにある喫茶店「ぷらんたん」を応援するためのクラウドファンディングを実施しました。コロナ禍でキャンパスに来る学生の数が減ってしまい、このプロジェクトが成功しないと「ぷらんたん」の経営が続けられないかもしれないという状況だったのですが、幸運にもマスメディアで取り上げられたり、多くの人からSNSなどを通じて応援をいただいたりして、最終的には1,081名の方から、目標金額を上回る約750万円を寄せていただき、クラウドファンディングを成立させることができました。

このプロジェクトは、早大生6名を中心としたチームで取り組んできました。始まりは、グローバル・エデュケーションセンター(GEC)設置科目の「たくましい知性を鍛える」(通称、大隈塾)という授業でした。この授業では「講義」だけでなく学びの「アウトプット」を学生主体で行うことが求められます。チームを組んで、自分たちのためのことでも社会のためのことでも、学んだことをアウトプットするのであれば、その方法や形は問いません。私はそこで「デジタル・デバイド」(デジタル技術を利用できる者とできない者との間に生じる情報格差)を解消するために何かできないかと思ったんです。

――最初に抱いていた目標は「デジタル・デバイドの解消」だったのですね。そこからどのように「ぷらんたん」につながったのですか?

デジタル・デバイドの問題を意識したきっかけは、コロナ禍になってデジタル技術を利用する機会が増えたことでした。私自身はカメラやコンピューターなどのガジェットが好きなのですが、両親がパソコンを使えないことに気が付きました。そもそも私の家のパソコンは、あまりに使ってなかったので、電源を入れたら壊れていたんです(笑)。しかしコロナ禍では、オンラインでのやり取りができるかどうかが、他の人たちとの「つながり」を持てるかどうかに大きな影響を与えます。特に親世代のデジタル・デバイドを解消するために「デジタル・ネイティブ世代」である私たち若者に何かできることはないかと思い、一緒にプロジェクトに取り組んでくれる仲間を大隈塾で募りました。

ただ、「デジタル・デバイドを解消する」と言っても、プロジェクトの目標としては広すぎます。そこで自分たちは何を解決することができるのか? と考えたところ出てきたのが、キャンパスから学生が減って困っている早稲田大学周辺の飲食店が、オンラインでお客さんを集めることができるようになるためのお手伝いをする、というアイデアでした。具体的には、Webサイトを作成したり、SNSの運用をお手伝いしたり、ということです。プロジェクト自体は2020年の7月ごろに始動したのですが、11月ごろから早稲田キャンパス近くの飲食店に声掛けを始めました。そして、「ぷらんたん」のマスターと一緒にプロジェクトを行うことになりました。

――プロジェクトを進めていく中で、いろいろな困難や思いがけないことがあったのではないかと思いますが。

オーナーの前田さんからSNSの使い方について相談を受ける吉留さん

一緒にプロジェクトを行う飲食店を探すことが大変でした。アナログにこだわりを持っていたり、SNS自体は既に使っていて手助けは不要だったりと、お店によってさまざまな事情があり、お店にとって必要なことと私たちにできることが合致するところを見つけるのが難しかったです。そんな中、「ぷらんたん」のマスターは、「困ってるんだよね」と悩みを率直に打ち明けてくれたり、「こうしたい」という思いを具体的に伝えてくれたりして、「ぷらんたん」なら私たちでもお手伝いできると感じました。

初めは、マスターにパソコンやSNSの使い方を覚えてもらうことを目標にしていました。マスターは「教えて」とノリノリでした。ただ、プロジェクトを進める中で、デジタル・デバイド以外の課題も見つかりました。お客さんはほとんど入らないのに支出ばかりが続く状況で、「お店を閉じようかと思っている」とマスターが口にしたのです。SNSのやり方を覚える以前に、お店が閉まってしまう。営業を続けるための資金をできる限り早く集めることが必要でした。そこで12月になって、クラウドファンディングを実施することに決めたのです。

――クラウドファンディングを実施するというアイデアは、後から出てきたものなのですね。

卒業生も加わったクラウドファンディングの打ち合わせ。プロジェクトのメンバーが初めて顔を合わせたのは、12月に「ぷらんたん」で集まったときだった

クラウドファンディングは「過程」にすぎないのだ、という意識を最初から持っていました。あくまで店の経営を続けられるようにすることが目的で、その先をどうしていくかを考えなければならないと思っていました。SNSの発信も私たち学生だけでやるのではなく、マスターご自身でもできるようになってほしいと、一緒に運用しています。

クラウドファンディングのおかげで、気付いたことも多くありました。実施にあたって何人もの卒業生(校友)の方から応援やアドバイスをいただいたのですが、そこで私たちとは違う視点や考えに触れることができました。例えば、クラウドファンディングの内容を考える中で、私たちは当初は、店内を大きく改修してでも居心地の良い環境づくりを優先しようとしていたのですが、ちょっとレトロな雰囲気を気に入っているお客さんも多いということを知りました。また、「ぷらんたん」を応援している人の中には、いつも通っている学生だけでなく、今は遠方に住んでいる卒業生も多いと教わりました。店に来たくても来られない人たちのためにどのようなリターンを用意することができるか、考えるようになりました。

昔の雰囲気を生かしながら改装した「ぷらんたん」の店内。店に集まる人たちの「つながり」を意識した写真中央の本棚には、早稲田関連本や卒業生の著作が並ぶ

その中で一番大きな気付きは、「つながり」が大事だということ。ただ飲食店の経営状況をよくしたり、デジタル技術を使いこなしたりするだけでなく、「デジタル技術によって人と人との『つながり』を作っているんだ」という意識が卒業生とのやり取りの中で強まっていきました。振り返れば、「デジタル・デバイド」の問題を意識するようになったのも、その解消がコロナ禍で「つながり」を維持するために不可欠だったから、なのです。

――コロナ禍をきっかけにして、新しいことに挑戦してみようと考える学生も多いと思います。今回の経験から、早大生へ伝えたいメッセージはありますか?

思い立ったらすぐにやる、ということが大事です。できるかな? と悩んでいる時間がもったいないです。今回のプロジェクトでも、不安に思うことは多くありました。でも、「やります」と声を上げて、真剣に取り組んでいれば、不十分な状態でも誰かが助けてくれるものです。そのための「つながり」は大学や学生街の中にきっと見つかると思いますし、今ではSNSなどで発信すればたくさんの反応を得られるようにもなっています。

「ぷらんたん」のプロジェクトについては、今はクラウドファンディングのリターンが始まっており、これからもSNSのお手伝いなどは継続していきます。実は「ぷらんたん」の他にも飲食店のお手伝いをしていて、こちらはちょうど今、ECサイトとSNSの立ち上げを進めているところなんです。チームメンバーは2年生と3年生ですから、今後もさまざまなプロジェクトに挑戦していきます。

「ぷらんたん」にて

第790回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 4年 植田 将暉

【プロフィール】

兵庫県出身。県立神戸高等学校卒業。「大隈塾」には1年生から参加し、現在はSA(Student Assistant)として授業の運営に携わる。いつもカメラを持ち歩いており、「その瞬間にしかないものを切り取れる」ところに魅力を感じている。撮影した写真は「ぷらんたん」のクラウドファンディングでも使われている。早稲田大学に入って驚いたのは、学生数だけでなく留学生の多さ。コロナ禍のせいで、1年次のカナダ留学以来、海外に出てさまざまな価値観に触れる機会がないことが最近の悩みなのだという。

ぷらんたんTwitter:@purantan_waseda

南門通りを眺めながら、自家焙煎コーヒーとパスタでゆったりランチ

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