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異文化理解のために

14年前に日本に住み始めた。言語・気候・風習などには慣れてきたが、恐らく西欧と日本のコミュニケーションスタイルの相違を理解するまでに最も時間が掛かったであろう。欧州においては傾向として意見・感情を直接述べる場面が多いのに対し、日本人同士の場合なら、本音を明かさず、遠まわしな返事をよくする。本音をはっきりと述べるよりも、聞き手が空気を読んで話し手の内心を理解しようとする。専門的な言葉を借りれば、日本のコミュニケーションスタイルは「ハイコンテクスト型(高文脈文化)」であるのに対して欧州の場合は「ローコンテクスト型(低文脈文化)」である。つまり、日本では体の動き、声のトーン、顔の表情、会話の流れなどのヒントに注意を払うのに対して、欧州においては日本より直接的かつ明示的な表現が好まれる。

したがって、それぞれのコミュニケーションスタイルを持つ人同士が会話をすると当然ながら誤解、「すれ違い」が生じる可能性が十分ある。例えば、間接的なコミュニケーションをする日本人は相手の押しが強ければ状況を和らげるために服従的な応えをする。一方で、「本音」と「建前」をそこまでくっきりと区別せず、直接的なコミュニケーションスタイルを持っている欧州人にとっては、「この人は何を考えているのかよく分からない」と考える場合が多いであろう。

最初は日本のコミュニケーションスタイルの特徴を研究書物で学ぶことなく、ただ経験を通じて、試行錯誤を重ねて、何となく理解していた。しかし、16・17世紀に来日した欧州のキリスト教宣教師が残した史料を読み始めて、「あれ、この特徴は既に彼らによって詳細に分析されていたな」と気付いた。例えば、アレッサンドロ・ヴァリニャーノは『日本諸事要録』(1583)において、日本人のことは、「感情をあらわすことに非常に慎みぶかい」と述べられ、またルイス・フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』(1585)では「ヨーロッパでは言葉の明瞭であることを求め、曖昧な言葉を避ける。日本では曖昧な言葉が一番優れた言葉で、もっとも重んぜられている」と説明されている。この種の記述は他にも数多く見られる。興味があれば調べてみると良いであろう。

既に気付いたと思うが、異文化と接するときには努力・我慢をしながら相手の文化特徴を理解しようとする必要性はもちろん生じる。しかし、異文化と接することは、自分の文化について学ぶことにもつながる。加えて、昔の史料を読んだり、研究したりすれば、過去のことだけでなく、現在についても多くのことを学ぶことができる。そういったことから、皆さんには、異文化に積極的に触れ、古い史料を講読することをお勧めする。

(BMO)

第1092回

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