10年ほど前、海中に眠る戦争遺物の調査がしたくてダイビングを始めた。一人でも多くの人に海の世界を伝えたい、そして、人を教え育てるプログラムを別の業種でも学んでみたいという思いで、インストラクターの資格も得た。日本はもちろん、世界中のダイバーと出会ったが、そこで日本と外国のダイバーの違いに気付いた。ダイビングはライセンスを取得しないとできない。逆に言うと、ライセンスさえあれば世界中の海に潜ることができる。しかし、日本人はライセンスがあっても、インストラクターに頼る傾向にある。対して、外国人のダイバーは、ライセンスを持っているのだから手出しは無用というスタンスだ。下手に助けたりしようものなら、怒られるくらい。この違いは、国民性もあるかもしれないが、自立をどう考えるか、にあるような気がする。日本は子どもが自立する機会がどんどん減ってきていると感じる。少子化が進み、大人が子どもの面倒を手厚く見ることができるようになっている。子どもも手取り足取り大人がやってくれるから受け身の姿勢になる。しかし、大人はいつまでも子どもの面倒を見ることはできない。社会に出ていきなり自立を求められて戸惑う学生も多いだろう。自立には受け身ではなく、能動的な姿勢が大事である。今はコロナウイルスの影響で、大変なことがたくさんあるだろう。しかし、現状を嘆くよりも、今自分に何ができるか、前向きに考えてみると、違った世界が見えるかもしれない。教員として願いはただ一つ。生徒学生が自立して幸せな人生を送ってくれること。
(I)
第1088回