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オンライン予備校を設立した早大生 目指すのは一生学び続けるための場所

「社会に対して前向きな大学生をもっと増やしていきたい」

政治経済学部 2年 孫 辰洋(そん・たつひろ)


「大学生は勉強しない」という声を耳にすることもある中、そんな大学生への評価を覆そうと活動しているのが、政治経済学部2年の孫辰洋さん。自分の夢や目標のために、前向きに学んでいく大学生をもっと増やしていきたいと情熱を燃やします。大学生になってすぐに立ち上げたオンライン予備校では、受験生と一緒に「なぜ自分は大学で勉強したいのか」というところから考えていると言います。孫さんの挑戦やビジョン、そして自身が大学で勉強していることなどについて聞きました。

※インタビューはオンラインで行いました。

—— 今、どのような活動をされているのか教えてください。

ミーティングではオンライン予備校の運営について仲間たちと話し合っている

「クラウド先生」というオンライン予備校を立ち上げて、それを運営するリザプロ株式会社の代表取締役を務めています。今のところ主として力を入れているのは大学受験対策ですが、コンセプトは、ただ大学に合格できる力を身に付けてもらうことではなく、自分で考えることのできる大学生になってもらうことにあります。授業はオンラインで行っていて、教育(Education)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた「エドテック(EdTech)」を用いながら、生徒が前向きに勉強することができる場所を作っています。

もともとは、世界の若い人たちが集まって、互いに考えていることをしゃべり合うプラットフォームを作りたかったのですが、いろいろ失敗もしながら、たどり着いたのがオンライン予備校でした。どうにかして「学べる場所」を作りたかったんです。

—— 孫さんの「学べる場所を作りたい」という情熱は、いつ生まれたのですか?

2015年に、モンゴルで植樹に取り組んでいる孫さん

教育が大事だということは小さい頃から感じていました。僕は中国系日本人で、幼少期から中国と日本を行ったり来たりしていたのですが、両親の教育方針もあり、小学校の高学年くらいから自分一人だけでさまざまな国へ行くようになっていました。その頃にモンゴルで植樹活動に参加した経験が大きいです。

当時、僕はボランティア活動をしていて、それは良いことなんだと信じていました。しかし現地の人たちの目には、突然知らない人たちがやって来て、勝手に木を植えていった、というように映っていたようで、トラブルが生じてしまったんです。子どもだった僕は恐怖心もなく、現地の人たちに直接議論しに行きました(笑)。緑化して作物ができれば利益にもつながると。結果として、議論したことで互いの考えていることがよく分かり、無事解決できました。その時、同じ事柄でも人によって、また立場によって見方が変わるし、正しい知識を持って話し合うことで対立はうまく解決することができるのだと学んだのです。

また、中学生の頃には、中国でいわゆる「反日デモ」がありました。僕は現地の学校に通っていて、周りの人たちといろいろと話をしたのですが、日中の歴史や文化について知っていることがお互いに異なっていました。その時にも「知らないってヤバい」と強く感じました。お互いの歴史認識や文化について知識を共有していることが重要です。

中学生の時に中国にて友人たちと撮った一枚(左端が孫さん)

—— 大学進学時に、アジア大学ランキング(※)トップである中国の清華大学に合格しながら、早稲田大学を選んだと聞きました。

 ※主要な世界大学ランキングの一つを発表しているイギリスの高等教育専門誌『Times Higher Education(THE)の2021年「THE世界大学ランキング」より

大学を決める時はとても悩みました。まず、中国と日本とでは受験時の待遇が全く違ったんです。清華大学では「外国学生入試」ということもあって、居心地の良い待合室にお茶やお菓子まで用意されていて(笑)。自大学の魅力を紹介するビデオも流れていて、教育への自信や優秀な学生を集めたいという意思を感じました。それでも早稲田大学を選んだのは、自分の直感を信じたからです。「アジアのリーディングユニバーシティ」を目指すという早稲田大学の掲げる目標にも心引かれて、自分もそれを実現するための力になりたいと思いました。ただ、実際に入学してみて残念だったのは、日本の大学生が「勉強をしなさすぎる」ことでした。受験勉強で終わってしまう。そんな大学生の現状を変えていきたいと思ったことも、今の「クラウド先生」につながっています。

—— 孫さんは政治経済学部の国際政治経済学科に在籍していますが、大学ではどのような勉強をしているのですか?

日中関係について勉強するために読んでいる文献

「政治」「経済」「民間」の三つの側面から日中関係について学んでいます。「民間」というのは「草の根」での交流活動のことです。例えば中国では、東野圭吾や松本清張などのミステリー小説が中国語に翻訳されると、その年の世論調査では日本への好感度が上がっているんです。このように、政治や経済だけではない、日本と中国のつながりの重要さに注目していきたいと考えています。

こうして勉強していると、このまま事業経営をメインに続けていくか、それとも研究の道に進むか、少し迷うこともあります。しかし、どの道を選んでも新しい知識を得ることは必要なので、一生勉強は続けるつもりです。

—— これから挑戦していきたいことはありますか? その先にあるビジョンを聞かせてください。

今考えているのは、リザプロ株式会社を「人の一生を支えられる会社」にしたいということです。受験勉強は大学に合格すると終わりですが、大事なのは大学に入ってからも勉強し続けること。大学生になると次はキャリアやスキルなどの悩みも生まれてくるので、例えば、動画編集やプログラミングの教室などを提供できないかと考えています。

あとはアカデミックな議論をすることができる空間も作っていきたいですね。早稲田卒という肩書だけで通用する時代は終わっています。勉強し続け、社会に対して前向きな大学生をもっと増やしていきたい。そのための「学びの場」を作っていこうと思います。

第774回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 3年 植田 将暉

【プロフィール】茨城県出身。江戸川学園取手高等学校卒業。学部1年次の2019年に起業したリザプロ株式会社で代表取締役を務める。運営しているオンライン予備校「クラウド先生」は1年間で登録者数が約150人に。大学で日中関係などについて勉強する際には、大学図書館の提供する電子ジャーナルやデータベースがとても役に立っていると言う。
クラウド先生の公式Twitter:@cloudsensei2020

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