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中国文化を発信 コミュニティーカフェ「甘露」店長は早大院の留学生

「多文化共生における社会的企業の実態と役割を明らかにしたい」

大学院社会科学研究科 修士課程 2年 張 鈺若(ちょう・ぎょくじゃく)

早稲田キャンパスから歩いて10分弱の西早稲田三丁目、早稲田通りから少し入った路地にある、コミュニティーカフェ「甘露(かんろ)」。豊富な中国茶と薬膳スイーツメニューだけでなく、店内で行われるイベントも話題となり、2018年10月のオープン以来、老若男女、国籍問わず多くの人が訪れる人気店です。そんなお店の店長を務めるのは中国・四川省出身で大学院社会科学研究科に通う留学生、張鈺若さん。張さんが店長になった経緯や大学院での研究、コロナ禍のこと、そして今後の目標などを聞きました。

※インタビューは主にメールで行いました。

――「甘露」の店長を務めるに至った経緯やコンセプトを教えてください。

以前、新宿区のシニア活動館で、中国文化講座をボランティアで開いたことがありました。中国の歴史や各地域の特徴を紹介するだけでなく、幼少期に習った二胡や中国絵画を披露し、参加者には体験もしてもらったのですが、皆さんに喜んでもらえたことがうれしくて、自分でも交流できる場所を持てたらと思うようになりました。そのことを友達に話したところ、ちょうど中国茶コミュニティーカフェを開こうとしていた甘露のオーナーを紹介してくれて、店長として働くことになりました。これまで飲食店でのアルバイト経験すらなかったのですが、未知のことに対する不安よりも期待の方が大きかったです。

甘露では中国茶と体に優しい薬膳スイーツ、そしてゆったりとできる空間を提供しています。お客さまが店内に飾られた地図を眺めたり、雑誌を読んだり、スタッフと話したりすることで中国への理解を深めてもらえる「知的な場所」にしたいと思っています。

客層について、中国茶は渋いイメージがあるからか、カフェ利用者は中高年層の女性がやや多いですが、学生や、(中国以外の)外国人の友達と来店する中国人や日本人の方もいます。イベントには、中国文化や中国語に興味を持つコアな方の参加が多いです。

店内には中国の伝統的な民間絵画「年画」がデザインされた雑貨や、中国に関するものが飾られている

――メニュー開発やイベントなど、さまざまなことに取り組んでいるようですが、その中で張さんはどんな役割を担っていますか?

甘露のモチーフ。年画をベースに張さんが描き、背景はオーナーが作成したそう

私の仕事は、仕込み、店番、スタッフのシフト管理、在庫管理、イベントの企画、新メニューの開発、パッケージのイラストデザインなど多岐にわたります。スタッフの中には早大生も何人かいますが、みんなイベントにも積極的に協力してくれます。オーナーもスタッフも心強い存在です。

メニュー開発は、自分たちが記憶している中国の味を再現するところから始まり、本場の味を提供するためにメニュー開発担当者が現地を訪れて味の研究をするなど工夫を重ねてきました。「甘露の味が好き」と言ってくれるお客さまが増えてきてうれしいです。

甘露で提供しているスイーツには、私が中国で食べたことがないものもあり、「お国自慢大会・中国全省巡り」というイベントで登壇者が話す内容も、初耳なことがたくさんあるので、とても勉強になります(苦笑)。お店を始めてから中国について知らないことが多いと痛感すると同時に、中国の食文化の奥深さや魅力をあらためて感じています。

スイーツは季節によって変更するメニューも。茶器もお茶によって使い分けているそう

――コミュニティーカフェとして心掛けていることや、お店に携わる中でのご自身の変化について教えてください。

私がやりたいことの一つに、この場所を介して外国人と日本人をつなげることがあります。東京に暮らす外国人はたくさんいますが、日本社会に溶け込み、心を許せる日本人の友達がいる人は少ないと感じているからです。そこで、留学生が日本人と交流し、日本語を練習する機会にもなるゲーム会を定期的に行いました。これは「にほんご・わせだの森」という、日本語教育研究科の大学院生による地域の日本語教室に参加してヒントを得ました。今でもクリスマスなど特別な日に留学生を招いた食事会を開いています。また、お客さま同士の輪が広がるようにと、気が合いそうな人がいたら紹介するようにもしています。

多くのイベントを主催してきたことで、自分の日本語に自信を持つことができ、どんな場面でも堂々と話せるようになりました。また、私自身もお店を通じて毎日たくさんの人と出会い、知り合うことができました。

(左)2019年6月に開催したイベント、留学生による「お国自慢大会 広東省編」の一コマ(中央奥が張さん、右隣りがオーナー)。緊急事態宣言中はYouTubeのライブ配信で「山東省編」を開催した
(右)中学生の職場体験を受け入れたことも(中央が張さん)

――新型コロナウイルス感染拡大により受けた影響も大きいのでは?

3月下旬から6月上旬まで、やむを得ずお店は休業しましたが、その間にオンラインストアや中国語教室(※)など、新たに着手したこともあります。オンラインストアを始めたおかげで、甘露のお客さまは関東だけでなく、日本全国にいることが分かりました。今後の事業開拓のヒントにもなりそうです。私自身はもっとかわいいパッケージデザインができるように、自粛期間を利用してイラストの勉強を集中的に行いました。

(※)オンラインで開始し、店舗営業再開後は対面でのレッスンも行っている。

(左)現在は座席数を制限し営業中。席の一部にパンダのぬいぐるみを配置することで間隔を空けている
(右)張さんが描いたお茶の入れ方。以前は口頭で説明していたが、コロナ禍の影響もありイラストでの説明に変更予定

――なぜ早稲田の大学院に進学しましたか? 研究内容についても教えてください。

2019年に行った中国・北京大学との合同ゼミ(左端が張さん)

中国の大学で日本語を専攻し、1年間の交換留学を経験したのですが、留学中、散歩の時に交わすあいさつなど日常の何気ない光景を通じて日本が好きだと感じたんです。そして卒業後に再び来日し、東京大学大学院で研究生として1年間、その後、早稲田の大学院社会科学研究科で科目等履修生として1年間学びました。その中で社会デザインを通じてソーシャル・イノベーションを起こすことに興味を持ち、社会科学研究科の修士課程に進みました。

大学院では早田宰教授(社会科学総合学術院)の指導の下、「日本に住む外国人の現状から見る、多文化共生社会作りにおける社会的企業の役割」を研究中です。日本では在留外国人が増える一方、言語や文化の違いからトラブルや人権問題が発生し、外国人の地域社会への参加も少ないのが現状です。外国人をサポートする社会的企業が外国人の社会参加を促すことは、外国人の生活満足度を高めると期待されています。日本ではまだ少ない実証的研究を行うことで、多文化共生における社会的企業の実態と役割を明らかにし、今後、多文化共生に取り組む有志者や地方自治体に新しい視点を提供できればと考えています。

――店長として、大学院生として、これからの目標を教えてください。

今取り組んでいることを地道に続けていきたいです。甘露での仕事も大学院での研究も、外国人と密接に関係しています。研究はそろそろ実証の段階に入るのですが、外国人をサポートする社会的企業の話は甘露の仕事にも役立つと思うので、研究を進めるのがすごく楽しみです。

あとは絵の腕をもっと磨きたいです。絵を通して中国文化の魅力を伝えられるようなパッケージデザインを作れるようになることが目標です。甘露としては、コロナが落ち着いたら新規事業として中国への体験型旅行事業を展開したいですね。

第763回

【プロフィール】
中国・四川省出身。南京航空航天大学卒業。大学時代に交換留学を経験し、2015年に再来日。東京大学大学院情報学環・学際情報学府の研究生、早稲田大学大学院社会科学研究科科目等履修生を経て同研究科修士課程に入学。大学で日本語を専攻したのは、異文化を学ぶツールとしてという理由の他に、幼いころからドラえもんなどの日本大衆文化に触れていたことが大きいと語る。趣味は手芸、読書など。音楽を聴きながら絵を描くことがリフレッシュ方法の一つ。
甘露Twitter:@KanroNishiwased
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