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「お茶の文化と産業つなぐ」 茶道歴14年の早大生が起業

TeaRoomのビジョンは、お茶で『対立のない優しい世界をつくる』ことです」

政治経済学部 6年 岩本 涼(いわもと・りょう)

日本人の生活に欠かせないお茶は、「茶道」という伝統文化の一面も持ち合わせています。14年以上の茶道歴を持つ政治経済学部6年の岩本涼さんは、2018年に株式会社TeaRoom を起業。さまざまな切り口で、日本茶の魅力を広める事業を展開しています。「対立のない優しい世界をつくる」ことをビジョンに掲げる岩本さんが、日本茶ビジネスを始めた理由。そこには世界各国を旅して見た「喫茶文化」と、「茶の湯の思想×日本茶産業」に対する独自の視点がありました。

※インタビューはオンラインで行いました。

――岩本さんは小学4年生で茶道を始めたそうですね。お茶と関わりのある家だったのですか?

米国留学中にお茶会を開催(2016年11月)

私の家は茶道の家元でも、お茶の仕事をしているわけでもありません。茶道を始めたのは、俳優の東山紀之さんが、和服姿でテレビに出ているのを見たことがきっかけです。東山さんの茶道の所作がとても美しく、一目ぼれに近い感じです(笑)。それで、自分で茶道教室を探して、お稽古事の一つとしてお茶を習い始めました。

それからずっと茶道にのめり込んでいったのですが、受験や留学など、どんな状況のときも、毎日お茶の時間を持つことで、心を落ち着かせることができました。私にとって、お茶は人生の余白のようなもの。人間として肯定してくれる時間や場所なのです。

――2018年5月に株式会社TeaRoomを起業されました。お茶でビジネスを始めた理由を教えてください。

留学後に大学を休学して、お茶会を開催しながら世界中を旅行したのですが、世界各国に「喫茶文化」があること、またお茶というプロダクトが持つ普遍性に気付いたことが会社設立の理由です。日本には茶の湯という文化がありますが、海外にもイギリスのアフタヌーンティーや北欧のフィーカ、トルコのトルココーヒーなど、飲み物を介して人が出会い、時間を共有する「喫茶文化」が存在します。そこに、茶の湯という日本独自の価値観をうまく流し込めば、事業展開できると思いました。

静岡にある茶園での新茶摘み(2020年5月)

もう一つは、茶の湯の思想と日本茶の産業が結び付いていないと思っていたからです。茶道で使うお茶は家元が決めるので、お弟子さんたちに抹茶の知識はさほどありません。一方で、日本茶産業の方で、茶の湯の思想に精通している人もほとんどいません。しかし、茶の湯を広めるのであれば、日本茶を消費する体験に、茶の湯の思想をひも付ける必要があると考えています。私は茶道を始めて日本茶に興味を持ち、これまで全国のお茶の生産地を訪れ、農家や企業の方に話を聞いてきました。家元制度の外にいて、お茶の世界を俯瞰(ふかん)して見ることができ、また、茶の湯と日本茶産業、両方の知見を持つ私ならそれができると思いました。

2019年6月、静岡の畑で。商品開発のためにショウガ栽培もスタートした(中央が岩本さん)

――具体的に、どのような事業を手掛けているのですか。

主な事業はお茶の卸事業や販売です。静岡市大河内地区で日本茶の茶園・工場を運営し、生産、加工、開発、販売までの全行程を社内で行っています。また、茶道家という立場で、茶室の設計や店舗のプロデュース、カフェでの抹茶を使ったメニュー開発など、お茶に関わるものは全て事業として携わらせていただいています。変わったところでは、企業の顧問として「茶頭(さどう)」も務めさせていただいています。茶頭とは、豊臣秀吉に仕えていた千利休の役職名です。戦国武将たちを茶人が癒やしたように、企業の代表とお茶を飲み、戦略的に休む時間と空間を提供しています。

企業の顧問を一緒に務めるたなかさん(※)と、アイスほうじ茶のいれ方を紹介した動画

※前職「ぼくのりりっくのぼうよみ(ぼくりり)」で知られ、俳優、モデル、YouTuberなどの活動をする

――起業後の2018年9月には、一般社団法人お茶協会が主催する「Tea Ambassadorコンテスト」で、「Tea Ambassador 日本代表/Mr.Tea」を受賞されました。また、2019年1月には、米国・カリフォルニア大学デービス校で開催された「Global Tea Initiative」に、日本人最年少で登壇されたそうですね。これらの経緯を聞かせてください。

茶の湯の文化を支えているのは京都で、Tea Ambassadorコンテストも京都で開催されました。お茶の事業をするには京都での実績が重要となるためコンテストに参加したのですが、そのおかげで京都市長や地元の有力者の方たちとつながることができました。

また、ここでTea Ambassadorという名前をいただいたことで、Global Tea Initiativeに招待され、講演をする機会もいただきました。アメリカでは抹茶はスーパーフードと呼ばれ、お茶は健康商材として扱われます。講演では、ストレス社会におけるお茶の効能に加え、茶道の精神や日本文化の話など、さまざまな論点からスピーチさせていただき、とてもいい経験になりました。

左:「Tea Ambassadorコンテスト」の受賞者と(右端が岩本さん) 右:「Global Tea Initiative」で講演する岩本さん

――岩本さんは早稲田大学高等学院(以下、学院)から早稲田大学に入学したのですね。早稲田での学びや経験について聞かせてください。

早稲田を志望したのは「進取の精神」に憧れたからです。私は「大学生で起業したい」「そのために高校でできる限りの準備をしたい」と考えていました。学院には早稲田大学の授業を受けることができるシステムがあるので、大学生と一緒にさまざまな授業を受けました。ビジネスプランの基礎を学べる授業では、単位も取得しました。高大一貫教育において、大学受験を気にせずに自分の学びを深めることができたのは、いい環境だったと思います。

大学では、政治経済学部の英語学位プログラムEDESSA(※)の学生と日本人学生との交流活動を行う、政治経済学部公認団体BIESに参加し、多くの留学生とつながることができました。早稲田大学には学生の活動を応援してくれる環境があり、自由で国際的な風土や文化がありますね。

今はオンライン授業ですが、場所の制限がなく、助かっています。授業中はビデオも音声も「オン」にして、声を出して返答したり、チャットを使って教授とコミュニケーションを取るようにしています。

※English-based Degree Studies September Admission Programの略称で、政治経済学部にて2010年9月にスタートした英語のみで学位を取得できるプログラム

米国留学中。現地の親友たちとのショット(2016年11月)

――茶の湯の思想を通して目指すものは何ですか? コロナ禍で社会全体が大きく転換しようとしていますが、岩本さんはどのようなビジョンを描こうとしているのでしょうか。

TeaRoom新茶のパッケージ

TeaRoomのビジョンは、お茶で「対立のない優しい世界をつくる」ことです。「恩送り」という言葉がありますが、私は物や気持ちを「贈る」行為があふれる社会を目指しています。お茶は商品自体もそうですが、お茶をいれてあげるという「贈る」行為が付属するプロダクトです。お茶によって、日常的に小さな「贈る」行為が生まれ、心の「恩送り」ができる社会にしていけたらと願っています。

今後についてはいくつかシナリオを用意していますが、やるべきことは何ら変わりません。茶の湯の価値を一人でも多くの方に、また少しでも先の未来につなげることです。リリース前なので詳細はお話しできませんが、新規事業も立ち上げ、コロナ後のスタンダードを想像しながら事業展開をしていくつもりです。

2019年4月、会社設立1周年を記念して、社員と新宿御苑にて

写真提供:株式会社TeaRoom

第760回

【プロフィール】
千葉県出身。早稲田大学高等学院卒業。裏千家での茶道歴は14年を超える。2018年5月にスタートアップ企業、株式会社TeaRoomを設立。代表取締役を務め、国際的な茶の普及活動にも従事する。同年7月よりWED株式会社の茶頭に就任。茶室「EMPTINESS」をプロデュース。3DP茶室のBoolean株式会社顧問、News Picksプロピッカー、校友の塩谷歩波さんが番頭を務める銭湯・小杉湯のお茶顧問でもある。大学では「ワイヴァーンズ クリケットクラブ」(公認サークル)に所属していた。

Webサイト:https://tearoom.co.jp/
Twitter:@ryoiwamoto1997

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