Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

新型コロナと人間の自由

新型コロナウイルス感染症の流行は、単にわれわれの日常を一変させただけでなく、この事態について論じるための前提をも揺るがせつつある。多くの人は、半ば無意識に、「人間は、固有の文化的・社会的特質をもつ点で単なる動物とは異なる」と信じており、このため人間をもっぱら生物学的な存在として扱うことに強い反発を覚える。いわゆる「新しい生活様式」に対し多くの人が嫌悪感を抱くのは、それが人間の生活を単にウイルスとの関係だけで規定しようとするものだからだ。

ところが現在の状況では、人間のそのような生物学的還元に異を唱えるための根拠はしばしば不確かになっている。2002年に健康増進法が制定されたときには、「国家が国民の身体的生活に干渉するべきでない」とか、「われわれには不健康である自由がある」といった反論がなされえた。つまりそこでは、「生物学的な条件に還元されえない人間」という観念が批判の根拠になりえたのである。これに対し、現状ではどうか。

緊急事態宣言の下での外出自粛は一部で過剰な反応を生み出し、一部の論者は、「自粛ムードに付和雷同すべきではない」といった警鐘を鳴らしてきた。しかし、無症状の人がウイルスを広める可能性が高い新型コロナウイルスの場合、「自粛しない自由」、言い換えると生物学的条件に逆らう自由というものがあるのかどうかは疑わしい。健康増進法に逆らったのと同じ根拠で自粛ムードに逆らうことはできないのだ。

人間やその自由についての議論の土台を変えようとしているこの挑戦を、われわれはどう受け止めることができるだろうか。

(R)

第1073回

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる