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フランス・ベルギーの演劇教育から考える「演技をするための身体」

自分の身体に耳を傾け、意識を向けてみることで、より繊細に扱えるようになる

文化構想学部 2年 佐藤 彩香(さとう・あやか)

2019年8月27日、早稲田小劇場どらま館にて開催された、「『演技をするための身体』ワークショップ ~ベルギー国立演劇学校のエクササイズより~」に参加しました。私の参加動機は、演劇の稽古で常日頃から感じていたフラストレーションでした。演じる時、もっと思うように柔軟に身体が使えたらいいのに、もっと無駄な力を抜けたらいいのに…。そう感じてはいたものの、具体的にどうすればいいのかが分からずにいたのです。そのようなタイミングで、このワークショップの存在を知って、参加することにしました。

講師は女優の近藤瑞季さん。早稲田大学文学部演劇コースを卒業後にフランスへ渡り、ナント市コンセルヴァトワール芸術学校演劇科を首席で卒業、現在はベルギー国立演劇学校INSASに在籍されています。当日、どらま館には、近藤さんと7人の参加者が集まり、ワークショップは和やかな雰囲気で始まりました。おのおのの自己紹介を終えて最初に行ったのは、2人組のペアを作って、お互いの身体をほぐすエクササイズ。肩をさすったり、顔のマッサージをしたり、丁寧にお互いの身体の緊張をほぐします。日々の生活の中で、言葉を介して相手とコミュニケーションを取ることは多いですが、実際に相手の身体に触れてみる、ということは案外少なかったりします。この相手の身体をほぐすという作業だけでも、直後の相手の表情がストレッチ前より柔らかくなっていたり、それまで自分が気付かなかった身体の凝りに気付いたり、さまざまな変化がありました。

次は自分の身体とじっくり向き合うエクササイズです。舞台上に横になり、目を瞑(つぶ)って、身体のあらゆる部分に意識を向けてみる。自らが呼吸する音にじっくり耳を傾けてみる。静まり返った空間の中で、より敏感に感覚が研ぎ澄まされていきます。振り返ってみると、ここでしっかりと自分の身体と向き合ったことで、次の相手とのエクササイズでも、自分の感覚をもとに、相手の身体の感覚を探っていくことができました。

講師の近藤さん(左端)の話を聞く参加者たち

そして再びペアを組んでのエクササイズ。相手の身体に触れ、触れられた側はそれに応じて身体を動かす。シンプルなエクササイズではあるのですが、実際にやってみると、柔軟に動けなかったり、相手に触れられていない所を動かしてしまったり、相手と呼吸を合わせて身体を動かすことの難しさを痛感します。その後も相手と10分間見つめ合ったり、共同作業をしたり、相手の存在、身体を強く意識するような、多くのエクササイズを行いました。

ペアを組んでのエクササイズ。相手の呼吸をうかがいながら、繊細に身体を動かします

今回のワークショップでは、一つ一つのエクササイズの後に、必ず参加者全員で円になって、感想や気付きを共有する時間がありました。それによって身体で感じたこと、感覚で分かったことを言語化できたり、自分が感じ取れなかったことに気付けたりと、この時間でさらに学びを深めることができたと思います。ワークショップを通じて自分と役、自己と相手など、自分と他者について考える中で、「実際に触れ合うことが他者理解への一歩になる」という講師の方のアドバイスは特に印象に残りました。また、エクササイズのことだけでなく、役作りのことや、それぞれが考える「良い芝居」の定義についてなど、いろいろなテーマをお互いに話し合いました。答えを見つけることではなく、答えをみんなで探る、その過程にこそ意味があり、演劇をするということは、さまざまな問いを常に自分自身に問いかけ続けることでもあるのだと、感じました。

このワークショップを受けるまで、私は「演技をするための身体」はトレーニングやハードな稽古を通して得られるものだと思っていました。しかし、自分の身体に耳を傾けてみる、自分の身体の隅々にまで意識を向けてみるといったことを通して身体と向き合うことで、より繊細に自分の身体を扱えるようになるのだなと身をもって感じました。自分の身体を熟知し、思うままに動かせるようになるにはまだ時間がかかりますが、今回のワークショップは、私にとって大きな一歩となりました。

講師の近藤さん(中央)、参加した松浦みるさん(商学部4年)と一緒に(左が筆者)

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