この数カ月、特別研究期間をいただいてオーストラリアに滞在し、こちらの研究者と共同研究を行っている。
最初のうちは、トラブル続きだった。借りた家にいろいろ不具合があって、それを修理してもらうように大家に頼むのだが、なかなか対処してくれない。修理屋も約束の時間に来ない。家具や電気製品を買えば、これまた不良品が多く、何度も交換しに行く羽目になった。
そんな時、こちらの人は謝らない。逆にno worries(心配ないよ)と言う。初めは、いや問題を起こしているあなたがno worriesはおかしいでしょう、日本のようにきっちりやってよとイライラした。
でも数カ月たつと、そのペースにも慣れてきた。考えてみると、消費者に対するサービスの質を過度に高くしないことで、働く側には余裕が生まれる。だから、こちらでは定時退社が当たり前だ。
しかも、実は効率的なところも多い。例えば、IT技術の導入は日本よりもはるかに進んでいる。キャッシュレスで生活するのが当たり前だし、高速道路も料金所なしに料金を徴収する(日本でいうETCのゲートすらない)。その結果、所得レベルは日本よりもはるかに高い。
人力を動員したサービスの質は高いが、ブラックな労働慣行が横行し、IT化が進まない日本と、その逆のオーストラリア。世界にはいろんなスタイルがある。そんな多様性を学び、多様な人々、多様なやり方を受け入れるようになるには、やはり留学するのが一番だ。学生諸君には、ぜひ留学してもらいたい。いろいろ大変なこともあるけれど、no worriesの気持ちで行けば大丈夫。(ただし、留学センターを活用して、情報収集は怠らぬよう。)
(T)
第1052回