
(左から)岡田さん、青木さん(早稲田大学)、安川さん、青井さん(慶應義塾大学)
早大生なら誰もが知る「早慶戦」。早稲田大学と慶應義塾大学は、長い間互いをライバルと位置付けてきました。今ではスポーツに限らず、さまざまな分野で早慶戦が存在しているほどです。今回は創立記念特別企画として、早稲田と慶應の学生座談会が実現! 普段のサークルの交流や互いへの思いについて聞きました。また、慶應出身で今は早稲田で教壇に立つ武田京三郎先生(理工学術院)に、早稲田と慶應それぞれの良さについて伺いました。今からでも楽しめる体育各部の早慶戦や、知って得する早慶連携についてもご紹介します。
▼ライバルか同志か!? 早慶で交流のあるサークルに聞きました
▼「早稲田三田会」の設立に関わった教員が感じる早慶とは
▼早慶戦・図書館やキャリアセンターでの早慶連携をチェック!
ライバルか同志か!? 早慶で交流のあるサークルに聞きました
男声合唱サークル
早稲田大学グリークラブ 教育学部 4年 青木 祐飛(あおき・ゆうひ)
ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 慶應義塾大学 理工学部 3年 安川 遼音(やすかわ・りょうと)
美術系サークル
絵画会 政治経済学部 3年 岡田 真也(おかだ・しんや)
綜合美術団体パレットクラブ 慶應義塾大学 経済学部 3年 青井 新太郎(あおい・しんたろう)
合唱と美術、それぞれで交流を持つ早慶サークル
――まずは、皆さんのサークルの活動内容について教えてください。
青木:私は早稲田大学グリークラブの部長(幹事長)を務めています。主な活動は二つで、一つが年に4回行われる定期演奏会です。東京六大学合唱連盟(以下:六連)や東西四大学合唱連盟(以下:四連)といった他大学との合同演奏会も含まれます。もう一つが学外から依頼されて赴く依頼演奏会です。部内の雰囲気はまさに男子校のような雰囲気で、意見を言い合うときもNGワードも忖度もなし 。“和気あいあい”がもっと濃くなった感じですね。
安川:私が所属する慶應義塾大学のワグネル・ソサィエティー男声合唱団は、創立1901年、2021年に120周年を迎えた歴史あるサークルです。オペラ歌手の先生に指導をいただき、声楽の声の出し方に沿った合唱を心掛けています。合唱はインナーマッスルを使うので、時に筋トレもする体育会系な一面もありますね。活動内容はグリークラブさんとほぼ同じで、依頼演奏ではテレビドラマのバックコーラスを務めたこともありました。

グリークラブは1907年発足、団体として初めて早稲田大学校歌を歌ったという。ワグネル・ソサィエティ―の「ワグネル」は、ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーにちなんでいるそう
岡田:私は早稲田大学の絵画会で幹事長を務めています。部員おのおのが油絵、水彩、アクリル、デジタル作品を自由に制作しています。一番大きな特徴は、単独展から他大との合同展といった展覧会を、企画から全てを自分たちで運営しているところです。部員はマイペースで穏やかな人が多くて、留学生も所属しています。
青井:私は慶應義塾大学のパレットクラブで代表を務めています。パレットクラブは、1899年に創立された大学で2番目に古いサークルです。神奈川県の日吉に一軒家のアトリエを持っていて、部員みんなが好きなときに訪れてそれぞれ作りたい作品を制作しています。私たちも絵画会さんのように展覧会を開き、他大との交流も盛んに行っています。
普段から交流があり、すでに仲が良い岡田さん(左)と青井(右)さん。毎月のように展覧会を行ったり、合同での活動も多いという
――普段それぞれどのような交流をしていますか? またお互いに抱くイメージを教えてください。
青井:パレットクラブと絵画会は、合同の早慶展や、四つの大学(早稲田大学、慶應義塾大学、東京大学、東京女子大学)で開催する四美展でも一緒に活動をしています。 合作企画では一緒に作品を作ることもありますよね。2023年の3月に行った早慶展では、お互いの線画を交換して着色し合う「塗り絵交換企画」を行いました。知っている人の絵が他の誰かの手によって新しい作品になっていたのが、新鮮で面白かったですね。
岡田:展覧会をきっかけに仲良くなれることも多くて。たまにお互いのアトリエや部室などに行って一緒にご飯を食べたり、講習会を行ったりしています。パレットクラブさんは大胆な作風が印象的で、華やかで明るいイメージがあります。
青井:絵画会さんはすごく熱心に展示会を開いている印象で、クリエーティビティーあふれる企画力には毎回驚かされています。例えば、部員同士のワークショップや卒業生による講習会など、実際に絵画会さんから影響を受けてパレットクラブで始めたことがいくつかあります。お互いを高め合っていける仲間のような存在ですね。合唱団のお二人はどうですか?
写真左:早慶展2023の様子
写真右:絵画会のメンバーが塗り絵企画で着色しているところ
青木:僕たちも六連、四連、依頼演奏会など、顔を合わせる機会は多いです。隔年で早慶交歓演奏会という合同演奏会もやっています。必ず最後に合同合唱があって、同じ舞台で一緒に歌うんです。その合同練習でも交流はありますよね。
安川:そうですね、自然とコミュニケーションが生まれます。お互いの定期演奏会に足を運ぶこともありますが、グリークラブさんは合唱をすごく楽しんでいるなと感じます。ミュージカル風に歌う場面もあって、合唱に大学生らしさを織り交ぜているのが自分たちには無いところだなと思います。
写真左:岐阜の演奏旅行にて。白いジャケットがグリークラブ、グレーのジャケットがワグネル・ソサィエティー
写真右:「歌の早慶戦in諏訪 男声合唱合同演奏会」では、『Ride the Chariot』(黒人霊歌)、『見上げてごらん夜の星を』(永六輔作詞/いずみたく作曲)などを合同で演奏した
青木:私が思うワグネルさんのイメージは 、音楽に真摯に向き合うエリート集団、ですね。難しい発音が多い外国語の曲を選曲しながら音色も毎年きれいに仕上げてきて、先生の指導をしっかり受けてるんだなって思います。グリークラブは指導者がいなくて学生だけで活動しているので、そこは違うのかなと感じます。でもやっぱりワグネルさんはライバルとして意識しちゃいますね。
安川:私たちもです。六連に出るときも、まず気になるのはグリークラブさんの演奏です。今年はどんな風に仕上げてきたのか気になってしまいますね。
岡田:私たちとはまた違う関係ですね。
仲間でもあり、ライバルでもあり。時には互いを支え合う心強い存在
――交流する中で印象に残っていることや、良かったなと思うのはどんなところですか?
岡田:コロナ禍に、「新歓や合宿どうしてる? 」とサークルの運営について情報交換し合えたのはとても心強かったです。また、パレットクラブさんはいつも僕たちの展覧会に来てくれるので、つながりを大事にしてくれてるなと思いますね。
青井:実は早慶展はかなり昔から行われているんです。絵画会さんの展示会でのタイトルなどからも大いに刺激を受けています。新しい取り組みを始めようと思えるのも交流のおかげです。
岡田:このつながりがあるから、自分たちを客観的に見られるというのもあります。パレットクラブさんの良さを見つけると自分たちの強みも見えてきて、部員一人一人の帰属意識が高まる気がします。絵画系のサークルでは、作品を作るのはあくまでも個人です。そのため部全体がまとまるきっかけをくれるのもうれしく思います。
写真左:大きな画材なども置くことができるというパレットクラブのアトリエ。青木さんや安川さんからは「うらやましい!」と思わず声が上がった。絵画会のメンバーも訪れ、一緒に活動することもあるという
写真右:絵画会は早稲田祭で展示会の他、ライブペイントも行っている(「早稲田祭2022」の様子)
青木:グリークラブは毎年新歓の時期になると、ワグネルさんが新入部員を何人集めたか気になります。でも表立って聞くことはなくて、部員の誰かが情報を仕入れてきてそれに負けないように新歓活動を頑張る、というのはあります(笑)。
安川:確かにありますね(笑)。水面下での探り合いのような。でも新歓のとき、グリークラブさんと交流があるというのは宣伝の売り文句にもなっています。早稲田の合唱団とライバル関係でもあるし、一緒に演奏もできるんだぞって。こう言えるのはありがたいことです。
青木:正直、練習はつらいことも多いです。でもワグネルさんというライバルがいることで、それでも踏ん張ることができる。そういう存在がいるのは、すごく貴重だと思います。

主に新歓の時に着用するジャンパー。ワグネルのパーカーは普段着としても着ているそう
――最後に、交流を続ける中でこれからやってみたいことがあれば教えてください。
岡田:作品の共同制作や講習会をする機会を増やしたいですね。また、過去の早慶展では来場者にどちらの展示が気に入ったか投票してもらうこともあったそうです。久しぶりにそういうバトルのような企画をするのも面白いのかなと思います。
青井:今までお互いの作品以外で一緒に美術を鑑賞する機会は少なかったかなと思います。これからは美術館へ行ったり、早慶合同でワークショップを開いてみたり、作品の合同鑑賞会ができたらと思っています。
岡田:分かりました。ぜひやりましょう!
青井:楽しみですね。これからもよろしくお願いします。

終始仲良く、交流の深さがうかがえた。早慶展と四美展のポスターを持った岡田さんと青井さん
安川:実は少し興味があるのですが、グリークラブさんの練習風景を見てみたいです。私たちと違って学生主体で練習を仕切っているということで、どのように音色を仕上げているのか気になります。
青木:お互いの練習風景を見せ合うという考えは思い付きませんでした! 確かに面白そうですね。 個人的に思うのは、新歓活動でもっと大々的に協力してもいいのでは、ということ。近年、男声合唱という業界が縮小傾向にあり、それに対してもどかしさを感じています。早稲田と慶應の二大巨頭で男声合唱界を引っ張っているという意識もあるので、一緒に盛り上げていけたらなと思います。

ライバルと言いつつも、握手をし、取材後は一緒に学生会館に向かった青木さんと安川さん。互いの定期演奏会のパンフレットを持って
【今回登場したサークルの公開情報】
早稲田大学グリークラブ
X(旧Twitter):@waseda_glee
Webサイト:http://www.wasedaglee.com/
ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
X(旧Twitter):@keio_wagner_mc
Webサイト:https://www.wagner-society.org/
絵画会
X(旧Twitter):@kaigakai
綜合美術団体パレットクラブ
Webサイト:https://paletteclub.framer.website/
取材・文:上田 朱莉
撮影:番正 しおり
協力:慶應義塾大学 学生部
「早稲田三田会」の設立に関わった教員が感じる早慶とは

早稲田大学理工学術院先進理工学部教授、工学博士(慶應義塾大学)
慶應義塾大学を卒業し、現在は早稲田大学で教壇に立つ、武田先生(理工学術院教授)。同じように慶應卒の教員は早稲田大学に多数いるといいます。そこで、慶應卒業生の集まり「三田会」の早稲田での設立に関わったという武田先生に、早稲田と慶應の学生について、また「早稲田三田会」を設立した経緯について聞きました。
理工学術院教授 武田 京三郎(たけだ・きょうざぶろう)
相反するようで似ている早慶の魅力
私は、慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学を卒業した後、慶應義塾大学大学院に進学し、1995年に早稲田大学理工学部に着任しました。
私が学生の頃の早稲田というと、周りの大学と一線を画す存在だったと思います。というのも、慶應にいた身からすると、早稲田には他大学を圧倒する強さが感じられたからです。学生時代は工学部端艇部に所属していましたが、卒業前の早慶レガッタでは早大理工クルーに完膚なきまでの敗戦。1995年に早稲田に着任するまでのラグビー早慶戦は、早稲田が連続して勝利。それほどまでに早稲田は学力・体力ともに高く、人気もありました。悔しい思いもしましたが、私は早稲田をライバルとして強く意識したことはなく、まさか早稲田に勤めることになるとは思ってもいませんでした。

左から2人目が武田先生(写真右の工学部端艇部第46回早慶レガッタパンフレットから)
早稲田大学の教員になり、今年で29年目になります。両大学で過ごしてきた身からすると、正直なところ、早慶に大きな違いを感じたことはありません。それぞれが持つ建学の精神の違いこそありますが、私学としての精神とそこに学ぶ学生の姿に違いはなく、共通点を挙げるなら、真面目で意欲的な学生が集まっていること。それは、学生たちが大学で夢中になれることを見つけ、全力で打ち込める環境が整っているからだと思います。私は先進理工学部で研究室を持っていますが、同じ分野に興味を持つ者たちが集まり学業に励むことは非常に刺激的です。何度も議論を交わし、学生と教員が一体となって日々研究に取り組んでいます。これは私の研究室だけでなく、早慶にある全ての組織で言えるはずです。そして、早慶の学生の多くは卒業後、日本の骨格を支える人となるなど、社会の第一線で活躍していると思います。

早慶それぞれのロールスクリーンバナー
卒業生同士のつながりが、縦横関係なく強いことも早慶ならではだと思います。慶應義塾大学の同窓会組織である「三田会」は特につながりが強く、日本国内外、そして宇宙に関係するお仕事をされている卒業生たちの「宇宙三田会」があるほどです。にもかかわらず、唯一三田会がなかったのが早稲田大学。そこで2001年に「早稲田三田会」が発足しました。対照的な二つの大学の名前が並んでいるので、ネーミング的にも非常に面白いですよね。現在は20人ほどが参加しており、年に1度会合を開いています。メンバー全員が慶應義塾大学卒ですが、早稲田教職員の集まりなので、話す内容のほとんどが早稲田についてです(笑)。
慶應に比べると、早稲田は個々人で活動する方が多いからか、稲門会の活動は三田会とは少し違うように見えます。しかし、これまでの卒業生たちの活躍を見ていると、母校を思う気持ちは早稲田も慶應も同じように強いと私は感じています。
取材・文:武藤 美稀
早慶戦・図書館やキャリアセンターでの早慶連携をチェック!
体育各部によるさまざまな早慶戦が年間通して行われています。ぜひチェックして、応援しましょう! また、早稲田大学と慶應義塾大学は、教育・研究、文化、スポーツなどさまざまな分野で連携をしています。今回は図書館とキャリアセンターの取り組みをご紹介します。
早慶戦
体育各部が行う早慶戦は秋以降も多数開催されています。
野球部 2023年10月28日(土)、29日(日)
ホッケー部 2023年11月23日(祝・木)
柔道部 2023年11月25日(土)
この他、詳しくは下記Webサイトからチェックしてください。
図書館
早稲田大学図書館と慶應義塾大学メディアセンター(図書館)は、1986年に図書館相互協力協定を結んで利用の便宜を図っています(協定校・協定機関の図書館利用―慶應義塾大学図書館)。2019年には図書館システムの共同運用を開始しています。両大学に所属する研究者・学生は、早慶の資料合わせて約1,118万冊を同時に検索できます。また、2021年に発足した「早慶和書電子化推進コンソーシアム」のプロジェクトにより、1,200点以上の電子書籍を早慶限定・期間限定で提供中です(2024年3月31日まで)。
※期間限定コンテンツはこちらから。
キャリアセンター
キャリアセンターでは、「早慶合同 博士キャリアデザインカンファレンス2023」を早稲田大学キャリアセンター主催、慶應義塾大学理工学部学生課キャリア支援オフィス共催、早稲田オープン・イノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)、未来社会のグランドデザインを描く博士人材の育成(Keio-SPRING)後援の下開催します。
※イベントは事前申し込み制です。申し込みはこちらから。
【次回フォーカス予告】10月23日(月)公開「カルト特集」