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総長挨拶 早稲田で学んだことと、この1年を乗り越えたことに誇りを【2020年度卒業記念号】

早稲田大学 総長 田中 愛治(たなか・あいじ)

皆さん、学部のご卒業・大学院のご修了、誠におめでとうございます。

本来であれば、卒業生・修了生の皆さんの門出を祝うべく、ご家族をはじめ多くの方が卒業式・大学院学位授与式に駆けつけるところですが、新型コロナウイルス感染症の影響に鑑みて、規模を縮小しての実施となりました。皆で共に思い出に浸りながら大学を去るという卒業式“らしさ”を体感してもらえないことは、本当に残念です。
2020年度の春学期は、パンデミックのため、一時キャンパスを閉鎖しました。春学期は全面的に、秋学期以降も主にオンライン授業にて教育を提供しました。そのため、キャンパスで友人と共に学び、交流する機会が大幅に減ってしまい、皆さんはつらい1年間を過ごされたことと思います。そのことは、大変申し訳なく思っています。

私は2020年2月に、早稲田大学は今回のコロナ禍に対して、危機管理の鉄則である「最大のダメージ(後悔)を最小にとどめる(Minimizing Maximum Regret)」を適用して対処すると決めました。それに基づき、卒業式・入学式や課外活動など、ぜひ行いたいことであっても、早稲田大学の3つの使命「(1)学生の健康と生命を守る、(2)教育を提供する、(3)研究を続ける」を果たすために、諦めるしかないと考えました。
早稲田大学には多くの留学生が来ており、4月の段階で約5,000名の学生は日本に入国できない状態でした。また、首都圏以外に住んでいる学生は、キャンパスに戻って来られない状況にありました。そこで、彼らのためにも、オンラインで教育を提供すべきと考えました。こうした対応の原則として、私たちは、国際連合が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の理念の一つ「誰一人取り残さない(“No one will be left behind”)」に沿って進むことを表明したのです。

一方で、首都圏在住でキャンパスに来ることを望んでいる学生の気持ちに応えることも必要です。秋学期から、少しずつ対面授業を増やし、課外活動も徐々に再開させ、学生の皆さんの気持ちに添えるようにと努力をしました。しかし、その割合は十分とは言えず、皆さんの期待にお応えできなかったとの思いもあります。
早稲田大学は、このように3つの使命の遂行を最も重要と考え、その中で学生の皆さんのニーズにできるだけ応えるため、さまざまな方策を練ってきました。今回のコロナ禍に苦悩しながらも、それぞれの時点で最善の道を探ることに努めてきたのです。

今回のパンデミックもそうですが、人類が現在直面している問題、例えば地球の温暖化、世界各国における国民の分断と対立の激化などには、正解と言い得る対処法はありません。これらの正解のない問題の解決策は、自分の頭で考えていくしかありません。皆さんは、早稲田で学ぶことにより、未知の問題に挑戦するとき、どのように頭脳を使っていくのかを身に付けたと思います。学問には、文字ができてから約5,000年間の人類の経験のエッセンスが詰まっています。それでも、人類が経験したことのない問題への解答は、記されていません。皆さんは自分の頭で考え、問題解決への仮説を立て、根拠を示して検証してください。それを実行する力を私は、「たくましい知性」と呼んでいます。早稲田で未知の問題に挑戦する「たくましい知性」を身に付けたことを誇りに思って、卒業してください。

また、早稲田大学は、多様な人々を受け入れてきた大学です。このため、誰にでも居場所がある大学だと思います。早稲田では、都会出身の人も地方出身の人も、海外出身の人も日本育ちの人も、奨学金が必要なご家庭の人も経済的に余裕のあるご家庭の人も、学問研究に打ち込む人も、演劇やダンス、音楽、絵画、小説など文化活動に打ち込む人も、スポーツに打ち込む人も、皆が対等で、自然に付き合ってきたと思います。こうした中で、言語、宗教、民族習慣、文化の異なる人のことも理解できる「しなやかな感性」を育み得る大学である、と信じています。皆さんは、この「しなやかな感性」を身に付けつつ、他者を思いやる気持ちを抱いて、今後は社会に、そして人類に貢献してください。

皆さんは、過酷であったこの1年間を乗り越え、ご自分が思っている以上に「たくましく」なり、また他者を思いやれる「しなやかさ」を育まれたと思います。早稲田で学んだこと、経験したことに誇りを持って、今後の人生を切り開いてください。
ご卒業、本当におめでとうございます。

撮影:小野奈那子

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